【iko】四畳半と体操服と機関銃この作品は児童に対する性的虐待および性交渉を促進する目的で書かれたものではありません。
また特定の組織との関わりをおすすめするものではありません。
※
「その格好なにっ!?」
「……うるさ」
聡実は心底イヤそうな顔をして、自分の耳を塞いだ。
「やって、……それ」
狂児は聡実をジッと見つめた。
しばらく雨が続いていた。
だが今日は、日当たりの良い四畳半。
数日ぶりの晴れの日。
聡実の住まう四畳半は、所狭しと洗濯物がぶら下がっている。
その隙間では、唖然とした顔で聡実を見つめる狂児が立ち尽くしていた。
「ほんで、格好なにっ!?」
狂児の目の前には、以前狂児が持ってきた体操服姿の聡実が洗濯物を干していた。
聡実は大きくため息をつくと、洗濯物を干す手を止めた。
「梅雨やん」
「梅雨やね」
狂児は頷いた。
「洗濯できひんかったんですよ」
「ほんで?」
「今日、洗濯日和やん」
「洗濯日和やね」
「全部洗濯したんです」
「全部?」
「全部」
聡実は狂児を見つめ、頷いた。
「全部っ!?」
「声デカ」
「全部って全部!?」
「まあ、ほぼ全部ですね」
頷く聡実を、狂児はまじまじと見つめた。
「やって狂児さん、ご飯なんか買うてきてくれる言うてたし」
「うん、買うてきたけど。焼肉弁当にしたよ。ナムルセットもつけたし、コンビニスイーツもあるよ」
狂児は手に持つ、紙袋とビニール袋を聡実に見せた。紙袋は某有名高級焼肉店の袋だ。
「ありがとうございます」
聡実がペコリと小さく頭を下げた。
「やから、外出ないかなって」
「……そうやね」
「夜までには乾くかなって」
「まあ、今日は乾きそうやね」
「今夜はダメでも、明日までには乾くやろうし」
「そうやね」
狂児は、また聡実を見つめた。
全部洗濯したのだという。
いかにも聡実らしい。
だが《全部》とは。
聡実はさして衣装持ちではない。
だが室内には何枚ものシャツやらズボン、下着、肌着が干してある。
「……え?」
「どうしました?」
「全部っ!?」
「……またか。……やから、ほぼ全部ですね」
「全部っ!?」
「ひつこいな」
「やって全部って」
狂児は聡実の腰回りを見つめた。
「……目つきがエロいです」
「やって!!」
狂児の大声に、聡実は大きくため息をついた。
「ご想像どおりですよ」
「なんてっ!?」
「ノーパンですよ」
「ノーパンなん!?」
「……うるさ」
狂児はガックリとその場に膝をついた。
※
いまだ乾かぬ洗濯物の下、狂児は畳に胡座で座る聡実の周りをグルグルと歩いた。
「もういい加減に落ち着いてください」
「いや、落ち着けんよ」
「うっといです」
「やって!!」
「うるさ」
「ノーパンやん!」
「ノーパンですね」
聡実は大きくため息をついた。このやり取りは、果たして何度目なのかと。
「体操服やん」
「体操服ですね」
「ノーパンで体操服やん」
「ひつこいな」
「ノーパンで体操服やん」
「もうなんべんも聞いたわ」
聡実はまたため息をついて、狂児を見つめた。
「お腹空きました」
「ノーパンなのに?」
「ノーパンやって、腹は空くやろ」
「聡実くんは、なんでそんなに落ち着いてるの?」
狂児は膝をつくと、聡実に詰め寄った。
「やって、仕方がないやん」
「ていうか、なんでノーパンになってもうたの?」
「やから、全部洗濯してもうたから」
「待って!!」
「ずっと待ってますよ」
「体操服着るまでは?」
狂児はさらに聡実に詰め寄った。
「それ聞きます?」
「聞きたい」
「ご想像どおりやって言ったら?」
「……全裸?」
聡実は小さく頷いた。
「……全裸!? なんで?」
「つい、……天気がええから、いったれって」
「いっちゃダメやん」
狂児は頭を抱えて、聡実を見つめた。
「つい」
「……聡実くん」
「はい?」
「ダメやん」
「つい」
聡実の言葉に、狂児がガックリとうなだれた。
「宅配とか来たら、どうするつもりやったん?」
「今日来るのは狂児さんだけやったから」
「狂児さんでもアカンやろ」
「狂児さんならええかなって」
「アカンて」
「アカンかったんか」
「男はみんなオオカミやで」
「僕も男ですよ」
「シルバニアやん」
「もうシルバニアやないの知ってるでしょ」
聡実は少し微笑むと、狂児の頬を軽くつついた。
「……男はみんなオオカミ、……なんやろ?」
「聡実くん」
「なんですか?」
「触ってもええ?」
狂児はジッと聡実を見つめた。
だが聡実は真っ直ぐ、狂児を見つめたままだ。
「お腹空きました」
「……ちょっとだけ」
狂児はそっと、聡実の体操服ごしの太ももに触れた。
「……そんなんでええのん?」
聡実は蠱惑的に笑うと、胡座を崩し、足を伸ばした。
ゆったりとした体操服の半ズボンから、細く、だがむっちりとした、白く艶めかしい太ももが覗いた。
狂児はその太ももを見つめ、ゴクリと喉を鳴らした。
「触ってもええ?」
狂児が聡実の素肌に、直接触ろうと手を伸ばすと、その手はピシャリと本人の手によって叩かれた。
「僕、お腹が空きました」
聡実は、狂児の手を握ると、ニッコリと微笑んだ。
「焼肉弁当、買うてきてくれたんやろ?」
「おん」
「食べましょ?」
「ノーパンで?」
「ノーパンで」
聡実の言葉に、狂児はガックリとうなだれた。その姿に、聡実は見えない犬の耳と尻尾がうなだれるのが見える。
聡実はため息をつくと、その耳がありそうな箇所を軽く撫でた。
「食べたら触ってええですよ」
「ほんま!!」
「うるさ」
「ほんま!?」
「そんなくだらん嘘ついても仕方がないやん」
聡実は微笑んだ。
「どこまで?」
「どことは?」
「どこまで触ってええの?」
狂児がグイッと身を乗り出した。
「……好きなだけ言うたらどうします?」
聡実の言葉に、狂児は喉をゴクリと鳴らした。
「好きなだけ」
「好きなだけええよ」
「聡実くん!!」
「うるさ、……なんですか?」
「ご飯食べよう!」
「さっきから、そう言うとるやん」
ちょうど、聡実の腹がグウッと鳴った。
「今日は聡実くんの好きな焼肉弁当特上やで」
「さっき聞きました」
「特上にしたで」
「ご飯は大盛りですか?」
「モチのロンや!」
「ほな、食べましょ」
聡実がまた微笑んだ。
「お楽しみには、ご飯のあとやで」
その言葉に、狂児は飼い犬よろしく「ワン」と鳴いた。