【iko】四畳半とワイシャツと僕この作品は児童に対する性的虐待および性交渉を促進する目的で書かれたものではありません。
また特定の組織との関わりをおすすめするものではありません。
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日当たりの良い四畳半。
だが当たり前だが、季節によっては早朝は冷える。
ましてや今のように、お互いに生まれたままの姿のときは、とくにそうだ。
早朝の冷えた空気とカーテンの隙間から入り込んだ朝日で、岡聡実は目を覚ました。
目の前には顔の濃い強いオトコ、成田狂児が穏やかな寝息をたてている。眠っていても、男前だった。
自分をしっかりと抱きしめる男前の腕には、肘まで入った刺青と《聡実》の二文字。いつの間にか、その全身に彫られた刺青を見慣れてしまったことが、この関係を表しているようで、どこかこそばゆく感じる。
一ヶ月ぶりの逢瀬だったこともあり、昨夜はお互いに盛り上がった。
次の日聡実は、大学が休みなこともあり、自分からも積極的に狂児を求めた。
聡実が求めれば、当然狂児もその分張り切った。
激しかったせいで、後半は記憶が曖昧かと思えば、しっかりと覚えている。
壁の薄い四畳半が連なるアパートでは、自分のあられもない声は、きっとご近所中に響いたことだろう。
「……やってもうた」
だいぶ慣れてきた関係とはいえ、羞恥心に顔が火照る。
だがそれと寒さは別だ。
オトコに抱きしめられているとはいえ、寒いことには変わりない。
聡実は狂児の腕を外し、起き上がろうとした。
「っ、いた」
腰に激痛が走る。力も入らない。
顔が、さらに羞恥で火照った。
昨夜は何度もねだったうえに、自分から上に乗った。そして動いた。しかもわりと激しく。
全身を覆う、気だるさ。そして筋肉痛。
普段使わない筋肉を、おおいに使った記憶しかなかった。
「……寒い」
体は少し冷えている。
聡実は布団から手を伸ばして、とりあえず手短にあるシャツを掴んだ。
狂児のワイシャツだった。
いつもきちんとクリーニングに出されていて、パリッとしたシャツは、昨夜の艶ごとのせいで、今は無惨にもしわくちゃだ。
それ以外のお互いの衣服は、部屋のあちらこちらに四散していた。
着ないよりマシだと、これでいいかと、聡実は布団の中でモゾモゾとワイシャツを着た。
そしてまた狂児の腕を取り、自分の体に回して、まあいいやともう一度目を閉じた。
自分より体格の良いオトコの体は、いつも温かい。
体温だけでなく、全てが暖かく感じる。
──例えそれが、全身に刺青が入った体だったとしても
「聡実くーん!!」
狂児の大声が、四畳半に響いた。
「……ぉはよ、ぅるさ」
「なんで!?」
「……なにが」
聡実は大きく欠伸をすると、うるさいと言いつつも、目の前のオトコを見つめ、すり寄った。
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ひと月ぶりの逢瀬。盛り上がった夜。
狂児は目を覚まして、最初にそれを思い出した。
腕の中には、愛しい可愛い恋人。
普段は自分からあまり積極的に求めてこない聡実が、恥ずかしがりながらも、だいぶ大胆に求めてきたため、自分も張り切った記憶しかない。
昨夜はとくに可愛かったと反芻しながら、スヤスヤと寝ている聡実の細い体を抱きしめ直した。
「……ん?」
抱きしめ直して、寝る前と感触が違うことがわかる。
昨日は盛り上がったまま、お互い裸で寝たはずだ。
パジャマを着ることが面倒だったわけではない。お互いに肌を、熱を感じていたかったからだ。
一人用の薄い布団だが、抱きしめ合えば温かいだろうと。
だがさすがに明け方は、少し冷えてきていた。
その冷えた空気とカーテンの隙間から入り込んだ朝日で、成田狂児は目を覚ました。
そして愛しい可愛い恋人の寝顔を見つめ、その体をしっかりと抱きしめ、気がついた。
聡実が服を着ていることに。
別にそれはかまわない。
きっと一度先に目が覚め、寒くて適当に手を伸ばした先にあった服を着たのだろう。
──そう、服を
──ワイシャツを
「……なんで?」
聡実が着ているのは、狂児のワイシャツだった。
自分よりも一回り以上小柄な聡実が、自分のワイシャツを着ている。
「……これは」
彼シャツというやつではないか。
ブカブカの己のシャツを着て、自分に抱きつき、スヤスヤと眠る姿の破壊力に、狂児は固まった。
そっと布団をめくると、しなやかな細い太ももが伸びている。
「アカン」
彼シャツの聡実の寝姿に、狂児は己の体が熱を帯びていくのを感じていた。
「これはアカンてぇ」
狂児はまじまじと聡実の寝姿を見つめてから、起こすことにした。
「聡実くん?」
軽く揺らしてみる。
だが起きる気配はない。
「……んん」
聡実が少し身じろぎ、ワイシャツがめくれ、太ももがさらにあらわになった。
「……聡実くん」
呼びかける狂児の喉がゴクリと鳴った。
そっと手を伸ばせば、しっとりもっちりとした感触が手のひらに伝わった。
「こんなのアカンやろ」
狂児は慌てて、手を引っ込めると、聡実の両肩を掴んだ。
「聡実くーん!!」
狂児が大声で、聡実に呼びかけた。大声が四畳半に響く。
「……ぉはよ、ぅるさ」
「なんで!?」
「……なにが」
聡実は大きく欠伸をすると、うるさいと言いつつも、目の前のオトコを見つめ、すり寄った。
「アカンて、離れて」
狂児は慌てて、聡実の体を引き剥がした。だが離れたせいで、余計に聡実の全身が見える。
狂児は、まるでティーンエイジャーのころのようだと、内心呟きながら、また慌てて顔を逸らした。
「……もう、なんなん」
聡実は不満げな態度を隠さず、狂児を見つめた。
「今、恋人たちの甘い朝とちゃうん?」
「ちゃうくないです」
「なら、その態度なんなん」
「……それはその」
「はっきりせえへんな」
聡実はゆっくり起き上がり、伸びをした。
「なっ!!」
聡実が伸びをしたところで、ワイシャツがずり上がる。
「見えそうで見えな、い……見えとる!!」
「……うるさ」
「やって!!」
狂児も起き上がり、聡実を見つめた。
「そんなんいつも見とるやろ、……昨日やって」
昨夜を思い出したのか、聡実は少し恥ずかしそうにうつむいた。
「見とるけど、今はちゃうねん」
「……ほんま、なんなん」
「やって、聡実くんの着てるの、俺のワイシャツやん」
「そうですね」
「なんで?」
「寒かったんです」
聡実が小さくため息をついた。
「一番近くにあったから」
「あったから?」
「着ました。……着たら、狂児さんの匂いするなぁて」
恥ずかしそうに微笑む聡実に対し、狂児は体の奥から熱が込み上げた。
「……匂い?」
「うん、タバコと香水」
「くさない?」
「ええ匂いやで、好きな人の匂いやもん」
聡実は朝とは思えない艶やかな微笑みを浮かべた。
別に誘ってきているわけではない。喜怒哀楽が大きく出なく、一見わかりにくい聡実だが、たまに天然でそういった表情を見せる。
狂児には、それがたまらなく魅力的に映った。
「……聡実くん」
「なんです?」
聡実は枕元に置いていたメガネを手に取り、掛けた。
「狂児さんの狂児さんがとても元気です」
「……はい?」
「狂児さんの狂児さんがとても元気です」
「二回も言わんでええわ」
「大事なことやから」
狂児の言葉に、聡実は目線を狂児の下半身に移した。
そこには朝から元気よく雄々しいソレが鎮座している。
「狂児さんの狂児さんがとても元気ですね」
「せやな」
狂児はジッと聡実を見つめた。
「なら、狂児さんと朝から悪いことする?」
「急ですね」
「狂児さんの狂児さんがな」
「もう言わんでええです」
「大事なことやん」
「見ればわかりますから」
聡実は小さくため息をついた。
「それに悪いことやのうて、ええことやろ?」
「聡実くんには、ええことなんや」
「……そりゃ、まあ、気持ちええし」
聡実は少し照れたような顔をした。
「おん、……ならええことする?」
「……ええですよ」
「ええんや」
「……そりゃ、まあ」
「ほんならシヨか」
「……はい」
聡実が小さくうなづくと、狂児は聡実の今掛けたばかりのメガネを外しながら、ゆっくりと押し倒した。
まずはたっぷりと彼シャツ姿の可愛い恋人を堪能しよう。
少し頬を染め、狂児を見上げる聡実は格別だ。
──エロさと可愛さが天元突破やな
きっちりとシャツを着てはいるが、着ているのはシャツだけだ。
狂児はそのシャツの裾を軽く捲った。
よく見れば、聡実の細腰には狂児の手跡がくっきりと残っている。それが痛々しくもあり、また扇情的だ。
「これはアカンわ」
狂児は裾を正すと、聡実を抱きしめた。
「こんなんたまらんわ」
「彼シャツ、そんなにええもんですか?」
「そんなにええもんやったわ」
「こんなん見慣れとるんやないの?」
「ほかのヤツがやったかて、ウザいだけや。勝手に俺のシャツ着るなや」
「僕はええの?」
「すごくええよ」
狂児は微笑み、聡実を見つめた。
「勝手に着たの怒っとらん?」
「怒らんよ、最高や」
「……そうですか」
聡実は恥ずかしそうに、狂児を見つめた。
偶然とはいえ、恋人を喜ばせる結果になったことは嬉しい。
聡実は、ゆっくりと素肌の狂児の足に、自分の足を絡ませた。
「ほんなら、ええことしてや」
聡実の頬が、ほんのり赤く染まった。
「喜んで!!」
「……うるさ」
聡実はクスリと笑うと、狂児に軽く口づけた。
狂児がそれに微笑み返し、口づけを返すと、ふわりと柔らかな甘い吐息が漏れた。