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    naki

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    naki

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    2023.12.13

    #fulgatus
    #Architus

    見渡す限りの枯れた荒野を、どれほど歩いたのか分からない。
    疲れを感じず、そして空腹も、喉の乾きも無く、ただひたすらに足を動かし続けていた。
    挙句の果てには自分が歩いている目的ですらも分からなかった。
    ただ1つ脳裏に焼き付いているのはあの忌々しい男の貼り付けたような笑顔。
    幸せに満ち、長年の夢が叶ったような満面の笑みを見せていた。
    そうして男が動かなくなった後、オレはこの荒野を彷徨い始めたのだ。
    そう、彷徨っているのだ。
    目的が分からないのも思えば道理である。
    一人納得をして一度瞬きをすると、何も無かった荒野がざわつき始め、暗雲立ち込める空から1本の太い雷が落ちてきた。
    その中から伸びてきた赤腕が雷を裂き、荒々しい音を立てて男は現界する。

    「久しぶりだな。レガトゥス」

    電気の纏う細く長い髪をしならせ、以前と変わらない笑顔でこちらへと微笑みかけた。

    「アーキビスト。何故...オレは生きているんだ。あの時死ぬのはオレだったはずだ」

    男が死ぬ直前の出来事、それはただの過失だった。
    死にたいと思ったことはなかったが、終わりがあるのならば、オレはそれを渇望していた。
    終わらない日常を続けていたある日、オレの隣をアーキビストは軽やかな足取りで歩き、「今日も天気が良いな」、「明日は向こうの丘まで行こう」等と平凡な日々を謳歌していた。
    アーキビストはいつも穏やかな表情で動物たちと接し、時折知らぬ顔で天へ語りかけている。
    オレはこの日常にどこか嫌気がさしていて、アーキビストがオレに無い物を持っていることに少なからず妬みを覚えていたのだろう。
    自分がどれだけ羨望しようとも手に入らないものをアーキビストは持っている。
    その事実がオレをいつも蝕んでいた。
    アーキビストは変わらぬ笑顔でこちらを向くと、期待を孕んだ声色で言葉を弾ませた。

    「お前は何処か行きたいところはあるか?」

    いつもアーキビストに連れられ、アーキビストの指差す場所を歩いていたオレは、あまり自分で何かを望んだことがなかった。
    しかしその時、その時だけは無意識に口が動き、瞬きの間世界が輝いた気がした。

    「オレは...お前のいないどこかへ行きたい...」

    腰に装着していたネットジャックを慣れた手つきで手に持ち、アーキビストに当てがった。
    動作を終えたネットジャックが機械音を発し、一瞬驚いた表情を見せたアーキビストだったが、オレと視線が合った瞬間走馬灯のように緩やかに笑顔を作り、消え行く声で呟いた。

    「ありがとう」

    そして一筋の涙が頬を伝った。

    「この時をずっと待っていた」

    力を失った体は後方へと倒れ、一度上半身を跳ねさせるとそれは活動を終えた。
    数秒、数分の間、思考が止まった。
    記憶の中のアーキビストは心臓が動き、血が流れ、確かに生きていた。
    しかし目の前に横たわるそれは一体何なのだろうか。
    オレがレガトゥスとしての存在意義、ネットジャック、そしてアーキビスト。
    こんな筈ではなかったと、後悔に近しい懺悔を小さく口にした。
    そして今、再びあの時の言葉を今度は聞こえるように声に出す。

    「オレは、お前のいない何処かに......オレだけの世界が欲しかった!」

    水も食料も必要なかった筈の口内がやけに乾いていた。
    しかし一度吐き出た思いは止めどなく溢れ、喉を枯らし、痛めつける。

    「オレは、誰で、どうしてまだ生きている。何故オレは......お前じゃないんだ」

    じわりと滲むような痛みが眼球の奥を襲い、酷く痛む左目を耐えきれず掌で覆い隠す。
    虚ろな視界でアーキビストを視認し、ゆっくりと足を進めていく。
    まるで待ち合わせのように、退屈しのぎのようにアーキビストは片足に重心を置いていた。
    その顔に笑顔を貼り付けて。

    「オレ、は...お前に...」

    伸ばした腕が、寸でのところで空を切った。
    電波の乱れのようにアーキビストの体は裂かれ、オレは倒れ込むようにして地に這い蹲る。

    「お前は独りじゃないさ」

    背後から優しげな声が聞こえた途端、全ての歪みは正され、荒野には再び静寂が訪れた。
    振り返るとそこには何も無く、ただひたすらに先が見えた。
    その時オレの中に渦巻いた不思議な感情は全身を駆け巡り、体を震わせた。
    気づけば左目の痛みは消え、徐に血が流れ出ていた頬を乱雑に拭い取る。
    そして何気無しに血に汚れた手でネットジャックを掴むと、自身の首に宛てがった。
    しかしそれは終ぞ作動することは無かった。
    オレはその場にネットジャックを放り投げ、砂埃を巻き上げながら膝を立てた。
    どこへ向かうでもなく視線の先を目指し、この荒廃とした世界で、永遠とも言える時間を歩き続けた。
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