アナザーイーライ邂逅人間、動物、命あるもの全ての殺気を感じ取ることができるがこの男にはそれが全くと言っていいほど無い。凪いだ水面のような、
恐ろしいほど静かなこれは
───怒り。
「んもぅ!アタシの話聞いてんのかね?!」
「貴方、誰ですか」
認めたく無い、知りたく無いと本能が拒絶している。
ペンキを被ったように真っ黒で、内側は緑の髪を無理やり一つにまとめ、細く骨ばった指先には煙草。こちらへお構いなしに毒煙を撒き散らす。目の前の男は此方の心情を知ってか知らずか深い隈を蓄えた目を細めて微笑う
「だぁから言ってるデショ、イーライだってば」
「」
これ以上喋らせると判断が鈍る。容赦なく顔面目掛けて拳を振り下ろす。
どうしようもなく優しいあのひとを名乗る見知らぬ男。何処も似ていないはずなのに、ストレスが溜まりに溜まったあの人が隠れて吸う銘柄のにおい、声音、左手の癖。何処をとっても脳が乖離してくれない。同じだと本能が叫ぶ。
1103