ちょっと進んだニーキンズ事務所 小話ゆるやかな午後の日差しを浴びながら、全く動く気配のないメールの受信ボックスを見る。先ほど淹れたばかりの珈琲はすっかり空になってしまっていた。
こんなに静かな事務所は3人目が加入してから初めてのことで、今日はたまたまパワー担当とハッキング担当のみで事足りる依頼だった。一応通信機は付けていたが、つい先ほど依頼完了との連絡が入り、それも乱雑にデスクに放り投げ、部屋着のままソファに足を投げ出して横になっている。
時間が流れるのが恐ろしく遅い
「財布…。」
ドライブがてらコンビニでも行くか
あまり静かなのは良くない。考えるのを辞められなくなる、思考が止まらない
「赤いセダン」
低音の男の声が頭に響く。
咄嗟に目だけをキョロキョロと動かせば"それ"は静かな水面のように窓ガラスの前に立っていた。
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