夜のお供にバティンが水を飲みにキッチンに向かうと、ソロモンがボウルと泡立て器を持って作業をしていた。作業台にはカボチャやチョコレートも並んでいる。
「……お菓子作りですか」
「ああ。ハロイーで教わったお菓子をアレンジしてみんなと食べようかと」
「そうですか」
バティンはコップに水を注いで飲み干すと、ソロモンの作業を覗き込んだ。
「2種類作っているのですか」
「子供向けの甘いのと大人向けのを作ってるんだ。そうだ。味見してくれないか?」
「……ええ」
バティンは並んだカップケーキを手に取り、口に含んだ。
甘苦いチョコレートと滑らかなカボチャ。
「美味しいですよ」
「良かった」
満面の笑みを浮かべるソロモンにバティンは更に近付き、耳元に口を寄せた。
「カボチャは若返り作用が期待されています。血行不良改善も……チョコレートと相まって、熱い夜になりそうですね」
指先でそっとソロモンの太ももを撫でると、バティンはそのままキッチンを後にした。
顔を赤くして座り込んだソロモンはお菓子作りを終えられず、通りすがりのダゴンに全て平らげられてしまったのだった。