「………!」
目が覚めて驚愕した。ルカは、大声を出しそうだったのをギリギリのところで引っ込めた。
部屋に誰か入ってきて気づかないなんてことはないと思う。けれど、彼を部屋に迎え入れた記憶はない。ならばどうやってシュウはルカの腕の中に潜り込めたのか。
考えてみても、シュウだったから、という理由しかルカには思いつかなかった。マフィアのボスなんて仰々しい肩書きを背負ってはいるが、恋人相手には形無しだったようだ。
しかしルカに落ち込む様子はない。すっかり気を抜いて寝こけているシュウを見つめて、むしろにんまりと笑みを深めた。
「ぽぐ、ぽーぐ…」
極力小声で、ルカはシュウの頭上で話しかける。まだ寝ているかの確認だ。シュウは身じろぎすらせず、ルカの胸元にぴったりとくっついた体制のままだった。
ふふん。満足そうに鼻を鳴らせたルカは、大きな手のひらでシュウの頭を撫でた。艶めく黒い髪が、ルカの指の間を通って、シーツに落ちていく。
背中を撫でていくと、ズボンとトップスの間で、少しだけ素肌が露出されていた。指の腹で肌の熱を確かめるように、静かに肌に触れる。途端、びくりとシュウが身体を震わせる。ルカの指先は、布団の中で温まったシュウの身体には少し冷たすぎたようだ。
「…んん、るかぁー…やめて………」
地を這うような低い声。ルカはクフクフと笑って、けれど止める素振りはなく、むしろシュウが少し覚醒したことで、遠慮なくその背中に手のひらを這わせた。
「ちょっ…と!んん、るか……」
シュウは腕を突っ張ってルカの腕の中から逃れようとするが、まだ半分寝ているシュウの抵抗など、ルカにとっては赤子が戯れている程度のものだった。
少しの隙間さえ許さず、背中を露わにしていく。寝ぼけながら離れようとするシュウを面白がっていたが、すぐにその抵抗はなくなった。ルカの手のひらがシュウの背中によって温められ、抵抗する理由がなくなったからだ。
ルカのやわらかな胸に顔を埋め直し、シュウはまた夢の世界へ旅立っていく。ルカはそれを阻むことなく、シュウの腰に手を添えたまま、自分も瞼を閉じた。