雷鳴昔のこと。
俺は少し街から外れた場所で、両親と暮らしていた。近所にも家は1,2軒しかなく、1軒はあまり外に出ない老人が住んでいて、もう1軒は若い兄弟が住んでいた。
当時、両親の仲は悪く俺も両親と上手くいっているとは言えなかった。父と母の喧嘩は絶えず、俺は居場所を求めてよく近所を散歩していた。
その時に会ったのが、トニトラスさんだった。おどおどとして、陰気だったこんな俺にも明るく笑顔で挨拶をしてくれた。
家にも学校にも居場所の無かった俺にとって、トニトラスさんは光だった。彼の名前のように、俺の心には雷が鳴り響いていた。
「やぁ、近所の子だよね?元気?」とか、会話は些細な挨拶程度だったが、俺は確実に恋に落ちてしまったのだ。いや、恋ではなかったかも。
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