雪と狐の物語 2村の真ん中で燦々と点る、提灯の明かり。
夜の暗闇でそこだけ光る一筋の帯を、背の高い燈籠の上に胡座をかいて座って見守る、一人の妖の姿があった。
ふさふさと靡く黄金色の幾つもの尻尾。護り神とも崇められる、九尾狐の青年だ。
大きな鳥居から始まる参道を照らす明かりの元、賑やかにひしめいているのは村の人間達だ。
神社の祭りというものは、人々が主に五穀豊穣を祈り、祝う祭祀だが。徐々に形を変え、活気に満ちて華やかな、村人たちの憩いと賑わいの場、になっているように思う。特に熱気あふれる夏は、そうだ。それを穏やかな面持ちで、青年は見つめていた。
人には目に写らない九尾の狐の姿を、悠々と晒す。
彼自身は自分を瑞獣とも護り神とも思わないが、今ここで周囲を見回しているのは、良からぬことをしようとする妖がいないか、目を光らせているが故だ。人の憩いの場を、わざわざちょっかいを出して引っ掻き回すような輩は、あまり好きじゃない。
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