麻薬のような僕はいつも心配している事がある。この人に大事なモノを食べられてしまうんじゃないか……と。なにせいつもおいしそうにそれを咥えているから。
僕は今日も14も歳上のこの人がそれをしてくれてるのをじっと眺めている。毎回お馴染みになった光景だ。僕は自分のベッドに腰掛け、僕の足に挟まれる形で少し汗ばんだ色素の薄い色の髪が必死に動いている様子を見ている。
この人よく飽きもせず毎回毎回おいしそうに咥えているよなぁ。そんなことを思っていたので、僕なりの配慮で一応教えてあげることにした。
「……ふっ……んっ、し、師匠、知ってましたか? 実はそれ食べられないんですよ……っ……」
はっ? 信じられないといった表情をしながらこちらをちらりと見たこの人は、その後すぐに目線を元に戻し、口と舌の動きは止めないまま、きっちり僕をイかせて、それを綺麗に飲みほして口を拭った後、吐き捨てるように言った。
「は? 何言ってんだお前。知ってるよ。おいしいわけがないだろ。まずいし」
アンタそんなこと言ってるくせに、しっかり僕のドロドロとした欲望を毎回飲み込んでるじゃないか――。と思わず言いそうになったけど、少しオブラートに包んで言うように心掛けた。
「だって師匠、すごいおいしそうにするじゃないですか」
僕はこの人の顎をすくい上げるようにして、口の中にもう僕の物がないことを確認して、満足感を得た。
僕の師匠は口淫が好きだった。淫乱師匠。僕は隠れてそう呼んでる。毎回お互いの部屋に行く度に、されている。
僕たちに恋愛感情は全くない。はじまりは何となくだった。僕がまだ経験がないことをバカにした悪いおふざけだったと思う。
「ふーん、モブくんは経験ないんだ……」
いやなニヤ付き方をした師匠に、イラッとして、少し悪ノリした気がする。
「うるさいな。師匠にはどうでもいいことでしょ。それともアンタがどうにかしてくれるっていうんですか?」
僕がそう言うと、突然あの人がしゃがみこみ膝立ちになりながら、右手で何かを包み込み上下に動かすジェスチャーをした。
「俺が口でしてやろうか?」
ニヤつきながら言ってくる。
そういう意味で言ったんじゃないんですけど……と思ったにも関わらず、僕にも意地があったのか、引いたら負けぐらいの気持ちで、膝立ちになったあの人を見下しながら自らのモノを顔に押し付け強気な言葉を言ってしまった。
「僕を満足させてくれるんですか。それならお願いします」
結論から言うと、あの人の口淫は最高だった。まるで麻薬のように僕を翻弄した。誰にも言えない、誰も知らない僕と師匠がこういう行為をしている。その背徳感がより快感を際立たせた。
僕をイかせるとあの人はどこか満足気で、どこか嬉しそうだった。その堪らない顔を見るのも癖になってしまい、僕は師匠の口淫にまんまとハマってしまった。
だからその翌日にあの人の家に押しかけて、当たり前のように僕のモノを押し付けた。そんな行動を繰り返していたら、僕が何もしなくても、あの人の方から会う度に僕のモノを咥えてくれるようになった。
僕の吐き出した欲望は顔に出したりしていたが、顔が汚れ、カピカピになって面倒だからという理由で、最近は専ら口に出し、それをゴックンと飲んでくれている。あの人は後処理が楽だともっともらしく言っているが、飲んだ後の顔を見る限りそれだけじゃないと思っている。
そのうち僕はあの人の動きだけじゃ収まりがつかなくなり、あの人の髪に手を絡め、苦しそうな声が漏れようがお構いなしに、口内のより奥へより奥へ道を開いた。最初は驚いていたあの人も、それを何度も経験すると慣れたのか、苦しそうに咳込むものの、上手に喉を開いてくれるようになった。こうして僕のモノは師匠の喉で締め付けられる快感をも知ってしまった。
「あ、ここお祭り? やってたんですかね。テキ屋さんが出てますね。見ていきませんか?」
僕は何の気なしに師匠を誘う。
「いいよ」
と師匠は頷いてくれた。僕は色んなお店に目移りしてしまいこの人を追う形で歩いていた。
「ぶっ! すみません」
師匠が突然立ち止まったため、あちこちお店を見ていた僕はそれに気付かずぶつかってしまう。
「チョコバナナ」
師匠は言葉を発した。一瞬ドキっとしたが
「食べたいんですか?」
と聞くと、
「最近食べてないよな。モブこれにしようぜ」
子どものように目を輝かせたこの人は、おやじさんにすぐさま声をかけて、二本を受け取っていた。
二人揃ってそのカラフルなチョコスプレーで彩られた、バナナにたっぷりチョコがついている物を頬張った。
「甘いな」
とこの人が当たり前のことを言う。確かに甘い……ズブズブになった僕たちの関係のように、コーティングされたチョコは甘く、その内側には他の物には例えようのない柔らかでネットリとした甘さがある。
僕はチョコバナナを口にいれる師匠をそっと見ていた。普段はよく喋る口は思ったより小さい。師匠はその口にチョコバナナを差し入れる。僕のモノよりは咥えやすそうだ。それらはあっとゆう間に師匠の喉に受け入れられ、残ったのは割り箸だけだった。
――あぁえっちだなと思った。
「モブ? どうした? まだ食べ終わってないのか……?」
師匠は舌をチロっと出して、汚れた自身の唇を舐めとる。
ボーッと一連の流れを眺めていたので、僕のチョコバナナが全然減っていなかった。僕はそれを急いで食べた。
分かっているくせに。この人絶対分かってる。分かってて僕に見せつけてきたんだ。確信犯だと思った。
この人の手に残った割り箸を奪い取って、ゴミ箱に捨てた。
そんな様子の僕を見て、あの人はフッと笑った。
そのまま転がるように、僕の家に帰ってきた。ドアを閉めた瞬間、我慢できずに、靴を脱ぎ散らかし、すぐさまスボンを寛げる。もう既に立ち上がっているモノをこの人の身体に押し付ける。
「師匠、口、開けてください」
「ここ、玄関だけど。…………モブくんも好きだな」
なんてイラつく言葉を吐きながらも、膝を折り、ゆっくりと口を開き、舌を出し、全体を下から上へ舐め上げて綺麗にしてから咥えてくれる。
そう言えば洗ってないから汚いかも……と思ったが、それを文句も言わず、おいしそうに舌で丁寧に綺麗に舐め上げてくれたという事実が僕を興奮させた。こんなに汚いモノをおいしそうに食べるなんて淫乱師匠は変態だ。
やっぱり僕のは咥えにくそうだな。その小さな口が僕のモノを精一杯咥えている様を上から眺める。その表情はとてもえっちだった。
「ねぇ師匠、甘いですか?」
師匠の後頭部を支えるように両手を添え、チョコバナナのように口に差し入れて、抜き差しする。いつの間にかその動きは、この人が僕に与えてくれるというよりは、僕自身がこの人の口内、その奥を犯すものへと変わっていた。チョコバナナがこの人の喉に受け入れられていたのと同じように僕のもゆっくりと受け入れられていく、師匠が苦しそうに時おり
「うっ……おぇっ……」
という声をあげた。顔は真っ赤で目からは涙が出ている。それでも逃げずに必死に僕の咥えている。
まぁ僕が頭を押さえつけてるから苦しくても逃げることはできないけれど、この人は僕が望めば僕からは逃げない――何となくそういう確信があった。
そろそろ僕も限界だ。もうフィニッシュ目前だった。
「……っ。し……ししょお…………ィク……っ」
ドクドクと僕の欲望が吐き出されて、それはこの人の体内に流し込まれていった。最後まで綺麗に出し切り、口から自身を出すと、師匠は激しく咳き込んだ。
「っ! 大丈夫ですか……?」
師匠の背中を優しくさする。
「ごほっ……大丈夫なわけないだろ……! ごほっ……おまえのおっきくて顎疲れる……」
なんだか師匠に睨まれた気がしたが、言ってることがもう既に僕を煽るえっちな言葉だった。さすがは僕の淫乱師匠である。
「すみません……。師匠の口気持ちよくて……まだしばらく卒業出来そうにないのでこれからもよろしくお願いします」
「……まぁいいけど」
なんだかんだこの人も気持ち良くなってるの知ってるんだ。この人のも立派に存在を主張しているから。僕は知らないフリをしていて、敢えてはそこに触れてないけど、そのうちこの人の口からどうして欲しいって言わせたいとは思っている。
こうして僕たちはこれからもこの麻薬のような快楽に溺れ続けることになる――。
おわり