◆ポッキーゲーム◆「ポッキーゲームと言うものの、実際のゲーム性に乏しいと僕は考えた」
「フンフン、確かにネ。それでソレは?」
「僕が作ったポッキーゲーム盤だとも!」
バーンと効果音を背負う勢いで、若い私が差し出してきたゲーム盤と称された板。
視認性を高めるためか板には、和風に例えると市松模様に塗り分けられている。シックなアイボリーと、彩度の低い焦げ茶色だ。その約3㎝角の色の真ん中には3㎜ほどの直径で縦に8個、横に8個の穴が……うん、ポッキーを立てるのにちょうどいい穴ダネ!
「で、自分の色のマス目を決めたら自分の色のポッキーをその色の場所、手前3列に立てる」
「交互にポッキーを斜めに動かして、相手のポッキーを飛び越えたらそれを取れる、と」
「まだ説明の途中なのだが」
「チェッカーでしょ、ソレ」「ポッキーゲーム...」
「チェッカーでしょ」「……参考にはした」
チェッカーとはチェス盤を使って遊ぶもうひとつのゲームだ。駒の代わりにポッキーを使うというだけの改変か。
「はー…どうにも独自性に欠けるネェ」「う…うるさいな!」
いいからやろう!と強引にテーブルにゲーム盤を設置されてしまった。ミルクチョコレートのポッキーを押し付けられる。若輩の自分はいちごチョコのポッキーだ。
しょうがない、暇つぶしに少しだけは付き合ってやろうかネ。
「飛び越えて相手のポッキーを取ったら、褒美として食べていいことにするから」
「ハイハイ……って、すごく嫌な予感がするんだケド?!」
「おや? 老齢の僕が負ける未来がきてしまうかな?」
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「もう嫌なんですケド~……やめたいんですけど~……」
「絶対に嫌だ!」
ぐったりと椅子にもたれ掛かる自分と、やる気満々の若い私。ここだけ切り取ったら、私の方がゲームに負けた、と見えるだろうか?
「もう食べられないんですけど~…? おなかいっぱいなんですけどぉ~…?」
「僕はまだ食べられる...というか、勝つまでやる!」
相手にわざと駒を取らせてゲームの流れを作る場合もある遊戯ではある。だからお互いにそれなりにポッキーを食べてはいる。勝負には負けてないヨ、当然でショ。
ちょっと消化能力で負けたケド!!
「甘いの飽きたよぉ~…」
「プリッツで味変すればまだ可能ということだな?!」
「違うんですがっ!?」
Raishi 20231111,