ギフト 車窓から流れていく光景は既に見知らぬ土地のものになっている。揺れる列車の内、たった一人のコンパートメント。ミスタはトランクをぎゅうっと抱え込み、これから向かう先への恐怖で押しつぶされそうだった。
ミスタの人生に転機が訪れたのはたった数ヶ月前。自身を魔法使いだと名乗る初老の女性が母と二人で住む家に訪ねて来たあの日。
校長だと話す彼女の一言で、彼の生活すべてが変わってしまった。
「あなたは伝統ある魔法学校にて魔法を学ぶ権利があります」
手渡された入学許可証と共に、訝しげな視線を向ける自分たちの為に見せられた魔法。
お世辞にも一般家庭とは言えないような貧しい家庭で育っていたミスタにはとてもではないが考えられないような誘いだったし、母親もこんな機会はきっと二度と訪れないだろうと一人息子を快く送り出してくれた。
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