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    つーさん

    @minatose_t

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    カプは固定派だが、ジャンルは雑食。常に色んなジャンルが弱火で煮込まれてるタイプ。
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    つーさん

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    卒業前に盛大に拗れるガプアガ、その6。年齢操作です。
    無駄に文字数増えそうで完成できるか怪しいので、書けた分だけ供養に投げます。タグでシリーズ管理してます。
    無自覚ガープと自覚ありなので距離を取ろうとするアガレスという話です。

    #ガプアガ
    gapuaGa.
    #菫青石は砕けない
    cordieriteIsUnshatterable.

    菫青石は砕けない6 ガープに喧嘩腰のように告白をして、別離を告げた翌日。アガレスはいつもより早い時間に家を出て、自分で学校に来ていた。
     これには勿論、理由がある。
     アガレスはガープを信用していない。彼が空気を読めないのはよく知っているのだ。筋金入りとも言って良い。なので、いつもの時間に家にいれば、当たり前みたいに迎えに来る可能性を考えたのだ。
     そして、家に閉じこもるよりは、学校で級友達と共に居る方がマシだと判断した。家に押しかけられて、二人きりで顔を合わせるのは気まずすぎる。
     正直なところ、心情をぶちまけた結果、アガレスの心的強度は下がっているのだ。この状況で、無自覚に色々とこちらの心臓を射抜いてくるようなガープの言葉を聞く余力はない。
     そんなアガレスの考えは、正しかった。そう、正しかったのだ。

    「アガレス殿ー!今日はお早い登校でござるなー!拙者、迎えに行ったらもう登校したと言われて驚いたでござるー!」

     ぶんぶんと手を振って声をかけるガープに、アガレスはアイマスクをズラして相手の顔を見た。いつも通りの顔だった。この野郎、やっぱり何も分かっていやがらねぇ、と胸中でアガレスは吐き捨てる。
     先に行くなら魔インで連絡してくれれば良いのに、などと戯言を口にし続けているガープを、アガレスは無視した。俺は眠いと言いたげにアイマスクを被り、ししょーに伏せる。これ以上構ってくるなという意思表示だ。
     いつもならば、ここでガープは引き下がる。そう、いつものガープならば。アガレスの睡眠を邪魔するようなことはしないだろう。
     しかし、今日のガープは違った。アガレスは知らないが、彼が去った後に諸々を自覚したガープには、アガレスに言うべき言葉があったのだ。
     なので、ガープはアガレスのアイマスクに手を伸ばした。ぺろんとアイマスクを持ち上げられて、タヌキ寝入りを決め込もうとしていたアガレスは突然明るくなった視界に目を細めた。その視界に映り込むのは、にこっと笑うガープの顔だ。
     今までもずっと見てきた、いつだって一番近い場所にいた相棒の、見慣れた顔。そう、あまりにも見慣れた、見慣れすぎた表情だった。だからアガレスには、ガープはいつものガープなのだという風にしか見えなかった。ちょっとばかり強引なだけで。

    「何だよ……」
    「昨日の話についてなのでござるが」
    「……お前、ここでそれに触れようとするの止めてくんない?」
    「何故でござる?」

     まさか、昨日の今日でナイーブな話題を蒸し返されると思っていなかったアガレスは、なるべく平静を装って文句を口にした。ここは教室である。周囲には問題児クラスの仲間達がいるのだ。そんな場所で口にする話題では、ない。
     しかしガープにしてみれば、きちんと伝えておかなければならない重要な話題である。場所は関係ない。周囲に誰がいるかも関係ない。重要なのは自分の目の前にアガレスがいて、彼が眠ってしまう前に伝えるということだけだ。
     そういう、思い込んだら一直線、結局は自分がやりたいようにしかやらない、みたいなところがガープにはある。普段はそれが甲斐甲斐しいお世話の方向に発揮されるので、お人好しとか世話焼きとかでしか認識されていないのだ。その実彼は、他人の話をほぼ聞かないことがある。
     学生生活を経て、ある程度は他人との距離の取り方や、相手を尊重することも覚えた。ある程度は。問題児クラスの仲間達に対してはそれが顕著に表われている。
     しかし、困ったことにガープは、アガレスに対してはそれを学習していない。割とやりたい放題やる。尤も、その原因はと言えば、今までガープの行動を何だかんだ文句を言いながら全て許容してきたアガレス自身だろう。完全なる自業自得だった。

    「俺は、」
    「拙者は、アガレス殿が好きでござる」
    「……――ッ!」

     その言葉は、するりとアガレスの耳に入った。入って、そして、絶望を呼んだ。
     いつも通りの声音だった。いつも通りの表情だった。アガレスが抱えた痛みも苦しみも理解していない、今まで告げてきたのと同じ好きという言葉。少なくとも、アガレスにはそうとしか受け取れなかった。
     何故なら、ガープの表情がいつもと何一つ変わらなかったからだ。声も同様だ。何も変わらない、何も変わっていない、そんな相手から告げられた好きという言葉は、アガレスにとっては死刑宣告にも等しかった。
     叫びそうになる己を、アガレスは必死に押さえ込んでいた。当たり前の顔で、当たり前の声で、自分がどれほど切望しても与えられない言葉を軽やかに口にしないで欲しかった。そんな残酷な戯れをするぐらいなら、いっそ、ひと思いに引導を渡してくれれば良いのだ。
     そしてガープは、そんな風に荒れ狂う胸中を必死に押さえ込んでいるアガレスの気持ちに、まったく気づいていない。これに関しては、ガープが鈍いのと、アガレスが隠すのに慣れているのが災いした。嫌な相乗効果だ。
     目の前でにこにこ笑っている朴念仁を、罵倒せずにいる自分をアガレスは胸中で褒めた。些か現実逃避のようでもあるが、そうやって意識をズラさなければ、自分が保てなかったのだ。
     対するガープは、きちんと伝えることが出来たとご満悦だった。その表情も、声音も、雰囲気も、何もかもが今までと変わらない。変わらなくて当然だった。ガープにとってアガレスを大切に思う気持ちは、特別の相手だと思う気持ちは、自覚するより前から己の中にあったのだ。今更、何かが変わることはない。
     そう、変わることは、ないのだ。変わる必要をガープは感じていなかった。今まで通りで、それが正しくアガレスを唯一無二だと認識している感情の発露なのだ。だが、それは、アガレスには通じない。伝わるわけがない。アガレスがどれほど聡くとも、それに気付くのは不可能だ。
     何故ならばアガレスは、もう何年も、自分を何とも思っていないガープの姿を見てきたのだから。嫌というほどに見続けてきた。特別扱いをされても、そこに何の感情も含んでいないと知りすぎていた。だから、気付かない。気付けない。

    「アガレス殿……?」

     表情を凍らせたまま何も言わないアガレスに、ガープは不思議そうに首を傾げた。聞こえていなかったのだろうかと、アガレスが起きているのか確認するように手を伸ばす。
     その手を、アガレスは、反射的に払った。教室中に音が響くほどに、強く。

    「……え?」
    「……触るな」

     辛うじてアガレスの口からこぼれ落ちたのはその言葉だった。ししょーに伏せるように俯いて、そのふわふわの身体をぎゅっと握って、アガレスは意識からガープを追い出そうとした。主の感情の乱れを察したのだろう。ししょーはゆるゆるとガープから距離を取る。
     取ろうとした。それを、ガープの腕が阻む。がしりと掴まれて、ししょーはびっくりしたように目を丸くした。こんな風にガープに行動を妨げられたことなどなかったから、なおさらだ。

    「ししょー殿、どこへ行くおつもりか」

     いつも柔和に笑う男の口から、低い声音が零れ落ちた。ししょーを見据える瞳には、鋭い光がある。まるで戦場で敵と相対した時のような姿に、ししょーはぴゃっと震えた。何故自分が威圧されているのか分からないと言いたげに。
     その使い魔の動揺を感じて、アガレスが顔を上げる。鋭利な、彼が扱う風のように鋭い眼差しと、視線が交わった。思わず、ひゅっとアガレスの喉が鳴る。見たこともない、いや、自分に向けられるなどと思ったことのない視線が、そこにあった。

    「……離せよ」
    「嫌でござる」
    「離せって言ってんだろ」
    「お断りするでござる」
    「ガープ!」

     苛立ちを込めてアガレスが叫ぶ。こんな時ばかり頑固癖を発揮しないでくれと思いながら、ししょーを掴むガープの指を引き剥がそうと掴む。瞬間、逆の手で腕を掴まれて、その力の強さに思わずアガレスは息を呑んだ。
     ガープはガープで、困惑していた。困惑を通り越して、焦っていた。その焦りが、普段の彼ならば取らないだろう行動になっている。理由は分からないが、このままアガレスを行かせてはいけないと彼は思ったのだ。
     けれど、ガープのその焦りはアガレスには理解されない。そしてまた、ガープから距離を取りたいアガレスの気持ちも、ガープには理解されない。今まで一番近いところにいた筈の彼らは、今、互いの感情に何一つ気づけないままにすれ違っていた。
     先に動いたのはアガレスだった。より限界だったのはアガレスの方だ。積年の傷は、そう簡単には癒えない。抱えた痛みは、目の前の相棒への情よりも己の心を守る道を選ばせた。

    「俺に……っ、触るな……!」

     魔術に至る前の純粋な魔力の放出。弾き飛ばされたガープが再び近寄ってこようとするのを、アガレスは全身全霊で拒絶する。
     だがそれでも、ガープはなおアガレスに近寄ろうとする。逃すまいと。その姿に、アガレスは強固な檻を求めて家系能力を使おうとした。
     だが、使う前に彼らの身体は仲間達によって拘束される。

    「アガレスくんもガープくんもちょっと落ち着いて!」

     声を上げたのは入間だった。そして、ガープを片腕で軽々と拘束しているのはサブノックで、アガレスをししょーごと捕まえているのはアスモデウスだった。問題児クラスでも一、二を争う武闘派二人は、入間の指示で素早く動いたらしい。
     その頃になると、何をやっているのかと遠巻きに眺めていた仲間達も全員集まってくる。二人が喧嘩をするところなど皆は知らない。だからこそ、どうしたんだと言いたげな視線が突き刺さった。

    「いったい何があったの?喧嘩?」
    「……喧嘩じゃない」
    「アガレス殿が……!」
    「ヌシは黙っておれ。その方が話が早そうだ」
    「何故!?」

     入間が優しい声で問いかけるのに、アガレスはぼそりと答えた。そこに被さるガープの声は、彼を確保したサブノックによって無情にも遮られた。当事者なのに!と言いたげなガープであったが、仲間達は全員「お前は黙ってろ」と言いたげな目を向けていた。
     この辺り、冷静に状況を説明できるのはアガレスの方だ、と皆が思っている感じだった。少なくとも、ガープが手を伸ばしてアガレスが拒絶している段階で、何かをやらかしたのはガープの方だと皆が考えたのだ。

    「……そんな大事じゃねぇんだよ。ただ、俺が」
    「アガレスくんが?」
    「……こいつから、距離を、……距離を、取りたいって思った、だけなんだ」
    「「…………ッ」」

     それだけだ、と静かに呟いたアガレスに、問題児クラス一同は何も言えなかった。何かを叫びそうだったガープは、サブノックの大きな掌で口を塞がれている。ヌシは黙っておれと言った言葉を行動で示すサブノックだった。
     ガープとアガレスはずっと一緒だった。少なくとも、問題児クラスの面々が認識する限り、いつだって一緒だった。修業を始める前から彼らは二人一組で、それが普通だと思っていた。だからこそ、アガレスの言葉が突き刺さる。
     6年間ずっと一緒に居た相棒から距離を取りたいと思った。その心境はいかほどなのか。顔を見合わせた問題児クラス一同は、目線だけでしっかりと意思を交わした。詳しい話を聞くべきだ、と。
     ただし、二人別々の場所で。この場で話を聞くのは不適切だ。それは皆同感だったのか、あまりにも自然に彼らは二組に分かれた。
     ガープはサブノックに担がれた状態で、アガレスはししょーごと入間に引っ張られて。他の仲間達もそれぞれ半分に分かれて、彼らは王の教室内の別の部屋へと移動するのだった。
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    無自覚ガープと自覚ありなので距離を取ろうとするアガレスという話です。
    菫青石は砕けない3「……何で」
    「ん?何がでござるか?」
    「何でここにいるんだよ、お前」

     眉間に指を押し当てて皺を伸ばしながら、アガレスは面倒くさそうに問いかけた。ここはアガレスの実家で、当たり前みたいな顔をして玄関前にいるのは、ガープだ。アガレスの問いかけに、きょとんとしている。
     見慣れた、見慣れすぎた、どこまでも他人との間合いが分かっていない剣士の、ポンコツな姿である。

    「アガレス殿に会いたくなったでござる!」
    「……明日学校で会うだろうが」
    「そうでござるが、明日は学校に行っても別行動でござるし、今日は家にいると聞いたので」
    「俺は、休みの日は家でのんびりしたいの。知ってるだろう」
    「そうでござるが……」
    「何だよ」

     別に何も間違っていない主張をするアガレスに、ガープはしょんぼりと肩を落とした。少しずつ、少しずつガープとの距離を取ろうと努めているアガレスにとって、休みの日に押しかけられるのは困る案件だった。気持ちが揺らぐ。
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