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    mito_0504

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    mito_0504

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    三月の新刊その2 忘れ草が書き終わらないので代わりに間に合えばこれを出します ババンババンバンバンパイアのパロディです ついにやりました タイトルは書き終わったら考えます 今日書いた部分なので推敲前ですがサンプルとして一度のせてみます

    #現パロ
    parodyingTheReality
    #くりつる
    reduceTheNumberOfArrows

    タイトル未定吸血鬼パロ()くりつる よっ。俺は鶴丸国永。平安生まれの吸血鬼だ。と言っても、青い彼岸花を躍起になって探したりそのために不同意で仲間を増やしたりすることはない、安全な吸血鬼だ。年齢は永遠の二十九歳ということにしている。実年齢が自分ではわからないので相談したらそういうことにしておけと言われたのでそうした。わからないというのはどういうことかというと、俺は自分がいつどうやって生まれたのか自分ではあまりよくわかっていない、ということだ。
     こんなことを言っても信じてもらえないだろうが、俺は長生きの吸血鬼なので、日本史でいうところの平安時代からの記憶がある。流石にそこまで遡ると昔すぎておぼろげだが、現役で活躍していた鎌倉時代以降の記憶ならわりとちゃんと残っている。これがまた波瀾万丈な人生だった。安達という家に仕えていたらもっと偉い人から謀反の疑いをかけられて一家全員皆殺しにされてしまったし、俺も殺されるもんだと思っていたら美人すぎるからという理由で捕まって北条という家に仕えることになったし、その後何故か神社に放り込まれてしばらくして、今度は伊達の家、そして皇室。俺が美人すぎるばかりに色々なところに引っ張りだこだったというわけだ。
     そんな俺が今どこで何をしているのかというと、そうなった経緯は不明だが道端で行き倒れていたところを、小さな龍、もとい龍の加護を受けた少年に拾われて、それ以来十年間にわたってその子の親御さんがやっている古物商に住み込みで働いている。その子がまた可愛いんだ、龍に見初められるのもよくわかる。相州伽羅といって、くっつけている龍と一緒にすくすく育ち、今はもう立派な十八歳の男の子になった。俺は伽羅坊と呼んでいる。ちなみに伽羅坊には弟もいて、火車切という十三歳の少年だ。俺は火車坊と呼んでいる。こっちも不動明王に縁があるのか何なのか、伽羅坊のと比べると可愛らしいサイズではあるものの勇ましい龍を連れている。伽羅坊に憧れてすくすく成長中の、可愛い子だ。
     さて、俺が伽羅坊に拾われたのは十年前のことだ。当時八歳の伽羅坊は、三歳の火車坊を近所の公園で遊ばせてやった帰りに家の前で倒れていた俺を見つけて、とりあえず車にひかれないようにと庭まで引きずって運んで寝かせてくれた。伽羅坊の話によると俺は大怪我をしていて服が血まみれになっていて、救急車を呼ぼうとしてくれたそうなのだが、伽羅坊が電話をしに家に入ろうとした時にむくりと起き上がった俺が引き留めたらしい。
    ──こんなもんは手入れすりゃ治る。きみは先に行け、伽羅坊。
     それ、引き留めてなくねぇか? と思うのだが。ともかくそう言い残してぱったり倒れた俺が急にぴかぴか光り出して、その光が収まる頃には俺の怪我は治り、服も真っ白になっていたそうだ。恐るべし吸血鬼パワー。怪我が治ってもしばらく気絶していた上に目覚めても若干記憶が飛んでいた俺は身元不明の不審人物なわけだが、長生きの甲斐あってモノの目利きができるということを見込まれて、伽羅坊の親父さんの店で働かせてもらえることになった。
     ところで、俺は吸血鬼だがその性質は眩しいのが苦手というところに現われているだけであって、普通に人間の食事をして生活しているし、記憶の限りでは血を吸ったことがない。血を見て美味しそうだと思ったこともない。それを吸血鬼仲間で織田治世の頃に知り合ったモリランという小姓に相談したところ、十八歳童貞の血が美味いから試してみろと言われた。しかもその男の子のことを好きであればあるほど美味いらしい。聞いた当時はとんだ変態趣味だと呆れたものだったが、吸血鬼としての俺がその話に興味を持ってしまったのも事実。というわけで、俺は伽羅坊に拾われてからの十年間、伽羅坊に纏わりついて彼の貞操を守り続けてきた。伽羅坊は昔からかっこよくて同年代の子達からはモテモテだったのが、本人があまり社交的でない上に色ごとに無頓着だったので、多分俺が何かする必要はなかったんだろうと思う。でも俺は大好きな伽羅坊が龍以外の誰かに見初められてしまうのが嫌だったし、襲われて怖い思いをする経験も絶対にさせたくなかったので、とにかく纏わりついた。
     具体的に何をしてきたかというと、伽羅坊のことを好きになりそうな子がいたら、片っ端から俺が落とした。そして思春期の子らを傷つけないように配慮しながら、告白される前にやんわりと振った。なんだそりゃ、と思うだろう。でも俺は美人だし、多分吸血鬼のフェロモン的なものが上手く働いてくれたのでそれができた。肝心の伽羅坊には龍がついているおかげかそのフェロモンが全く効かないようだが、それはそれでありがたかった。早いうちに色気づいても困るからな。モリラン曰く、童貞が良いらしいので。
     今日も今日とて俺は伽羅坊に若干うっとおしがられながら伽羅坊を可愛がっている。そして今日はそんな日々の中でもとびきり大切な日だ。なにせ、大事な伽羅坊の十八の誕生日なんだからな。まあ、血をもらうのは高校卒業まで待つつもりではあるんだが、それにしたって伽羅坊をここまで守り通せたんだから喜びもひとしおだ。
    「伽羅坊、おはよう! そして誕生日おめでとう! 俺は眩しいのが苦手だが、今日ばかりはよく晴れた日で良かった!」
     スパン、と勢いよく襖を開ける。伽羅坊の部屋は俺の隣の部屋で、襖で仕切られているのだ。とっくに起きて身支度を整えていた伽羅坊は、制服の学ランを羽織りながらちらりと俺を見て、ハァとため息をついた。愛想がないことだが伽羅坊はいつもこんな感じだ。
    「鶴丸。今日からはもう、俺を坊と呼ぶのをやめろ」
    「えっ」
     ガーン。そんな効果音が頭をよぎる。伽羅坊という渾名、俺しか呼んでいないし可愛いから、俺は気に入っていたのに。伽羅坊は嫌だったんだろうか。伽羅坊は俺が何をしても迷惑そうにあしらうだけだから、今まで気付かなかった。そんなショックで崩れ落ちそうになる俺に、伽羅坊は淡々と話し続けた。
    「少し前から、十八で成人ということになっている。俺は成人した。あんたに坊と呼ばれる謂れはない」
    「え……え~、でも俺からしたらきみは、十八になろうと二十八になろうと可愛い坊やだぜ? いやまあ、必要以上にガキ扱いしたら悪いってのは理解できるんだがな?」
    「可愛い坊やではない……俺はあんたに懸想している。子供の頃にあんたを一目見たあの日から、ずっと」
    「は」
     今、なんて? 俺は自分の耳を疑った。ぱちぱちとまばたきをして、自分の頬をつねって、どうやら夢ではないらしいと確認して、目の前にいるのが正真正銘、伽羅坊本人であることを認識した。そうこうしているうちに伽羅坊は俺の両肩に手を置いて、目を閉じて顔を近づけてきて、唇を押し当ててきた。ふに、と柔らかい感触がしたんだが、伽羅坊はどうやって唇の手入れをしているんだろうか。俺が前に渡したリップクリーム、もしかして使ってくれているのだろうか。
    「あんたは俺の周りの人間を誑かしては捨てるろくでもないやつだし、あんたが俺に対して全くその気がないこともわかっている。だからこれまでは黙っていたが……今、俺の部屋に飛び込んできて俺の誕生日を祝ったあんたの間抜け面を見て、気が変わった。俺はあんたを落としたい。それが嫌なら俺に構うな」
    「……」
    「俺はもう支度ができたから登校する。あんたもさっさと朝飯を食って、働け」
     そう言って学生カバンを片手に持った伽羅坊はすたすたと部屋を出て、いつものように向かいの部屋の火車切に「行くぞ」と声をかけに行った。そして二人そろって階段を下りて(俺たちの部屋は二階にあるのだ)、ガラガラと玄関の引き戸を開いて出て行った。二人は昔から変わらず仲睦まじい兄弟で、通学路が途中まで同じなので一緒に登校しているのだ。呆然として棒立ちになっていた俺は、もう一度自分の頬を抓った。
    「……やっぱり、痛ぇな?」
     頬も痛ければ胸も痛い。ドッ、ドッと心臓が早鐘を打ち、同時に胃のあたりがキリキリと痛む。
    「うぅ~~……」
     ぽろぽろと涙まで出て来て、俺はその場に蹲った。後ろ手に隠していた誕生日プレゼントを渡せなかったばかりか、これまでの俺と伽羅坊の日常がガラガラと音を立てて崩れ去ってしまったのだから、ちょっとくらい泣いたっていいだろうと思う。懸想しているというのはつまり、同年代の思春期の子供たちと同じように、伽羅坊も恋をしているということなんだろうな。その相手が俺だった、と。フェロモンが効かないというのは間抜けな俺の勘違いで、実は効いていたのを鋼の自制心で隠してくれていたんだろうか。俺は伽羅坊に構い過ぎて、何かおかしな影響を与えちまっていたんだろうか。確かに伽羅坊が誰かと恋仲になるのは嫌だったが、それは伽羅坊の貞操を高校卒業まで守りたかったからであって、何も俺に惚れて欲しかったわけではなかったのに。
     いやこれ、俺、とんだろくでなしだな。っつうか伽羅坊も俺をろくでなしだって言ってたよな? えっ、惚れた相手にそれ言うの、事実だとしても結構酷くねぇか? まあいいか、事実だからな。
    「どうしたもんかねぇ……」
     ずぴずぴと鼻をかんで涙を拭って、俺はひとまず朝ご飯を食べることにした。階段を下りて居間に入ると、伽羅坊が自分の分と火車坊の分と親父さんの分を作るついでに用意しておいてくれた、俺の分の朝飯が並べてあった。あったかいご飯と味噌汁と焼き鮭と卵焼き。座布団に座ってそれらを眺めて、手を合わせて「いただきます」と呟いて、ぱくぱくと食べ始めた。
    「……うぅ……美味いんだよ、ばかやろ~……」
     ご飯があまりに美味しすぎたので、俺はまためそめそと涙を零してしまった。


     伽羅坊と火車坊が学校に行っている間、俺はいつも親父さんの店で働いている。けど今日は俺の泣き顔を見て驚いた親父さんが「看板店員にそんな顔で来られたらお客さんが驚いちまう! 気分転換でもしてきな!」と言って休みにしてくれたので、散歩に出かけることにした。俺は眩しいのが苦手なので、外出時には黒い帽子を被って、黒い長そでのシャツを着て黒いジャケットを羽織って、黒いジーンズをはいて、黒い靴下とスニーカーを履く。全身真っ黒けだ。そして仕上げに紫外線を遮断する黒縁メガネをかけて、金の首飾りを身に着ける。伽羅坊が高校生になって初めてアルバイトをした時の初任給で買ってくれたプレゼントだ。なんでも、俺が道端に倒れていた時に身に着けていたものと似たものを見つけてついうっかり買ってしまったものの、自分で身に着ける気にもならなかったので俺に押し付けることにしたらしい。全く、可愛いうっかりだ。
     休みの日の俺は、伽羅坊や火車坊からどこかに誘われでもしない限り、だいたいいつも同じ場所に出かける。そこは伽羅坊の龍みたいに常人には見えない魑魅魍魎が跋扈していて、吸血鬼の俺もすんなりと馴染める、憩いの場なのだ。
     電車で移動して目的の駅で降りて、地上出口から歩くこと数分。立派な門構えの博物館と、でかい庭。そこが俺のお気に入りのお散歩スポットだ。入館料を払って敷地に入って、四つある建物を今回はスルーして庭に直行する。平日の昼間とあって他の人影は少なく、空いているベンチにすんなりと座れた。
    「お~い、俺だ。鶴丸だ。休みもらったから遊びに来たぜ~」
     天を仰いで呼びかけると、目の前に大柄な男性が現れた。
    「鶴丸国永、また来たのか。呆れたやつだ、よほど暇なんだな」
     赤い髪と凛々しい顔立ち、逞しい長い手足が特徴的なその男の正体は、この博物館に所蔵されている日本刀「大包平」の付喪神だ。黒と赤を基調とする洋装に、本体である立派な太刀を佩いている。彼は俺の十年来の友だ。
    「聞いてくれよ、大包平。俺、心底驚くことがあって、働くどころじゃなくなっちまったんだ」
    「お前、働くといっても店番として座っているだけのことがほとんどだろう。だからいつまでたっても細いんだ。鍛錬をしろ」
    「細いのは仕方ねぇだろ! 筋トレしても筋肉つかなさすぎて冷めたんだよ。そんなことより俺の驚きの話を聞いてくれよ。朝から何度も泣いちまって、大変なんだ」
    「おや。お前が驚くとは、何事だ?」
    「あっ、三日月! きみも聞いてくれるかい?」
     よよよと泣きまねをする俺の肩を誰かがポンと叩いたので顔を上げると、藍色のさらさらとした髪を揺らして微笑む美男子が俺の顔を覗き込んできた。こちらは太刀「三日月宗近」の付喪神で、濃紺の狩衣や烏帽子を身に着けている。こちらも大包平同様、俺の十年来の友だ。三日月は俺の顔にひょいと手をかざしたかと思うと、眼鏡をさっと取り上げてしまった。
    「あっ、返せよ」
    「またこのようなものをつけて。お前の顔が良く見えないではないか」
    「でも似合うだろ~? それに、それつけてないと俺、目が焼けちまうかもしれないんだ。吸血鬼だからな」
    「またそのような戯言を……まあ良い。返そう。それで、お前の驚きとは何だ? 確か、今日は大俱利伽羅の誕生日ではなかったか?」
    「おお、そうだった! 大俱利伽羅がついに十八になるんだったな! いやぁ、久々に顔を見たいものだな!」
     三日月と大包平は、伽羅坊のことをなぜか昔から「大俱利伽羅」と呼んでいた。しかもこの博物館には二人以外にも色々な付喪神がいるのだが、みんな揃って「大俱利伽羅」と呼んでいる。なんでも、俺が伽羅坊に会う少し前に伽羅坊はこの博物館に社会科見学で来ていたらしく、そのときに伽羅坊が連れていた俱利伽羅龍が立派だったのでそれを見たみんなが勝手にそう呼んでいるらしい。
    「だからあいつは相州伽羅だっての……まあいいか。話ってのはその伽羅坊のことだよ」
     俺は両隣に三日月と大包平を座らせて、今朝の出来事を順番に整理して語った。俺が伽羅坊にプレゼントを渡そうとして襖を開けたら伽羅坊が俺に懸想していると告げたこと、伽羅坊が俺に接吻をしたこと、伽羅坊が俺を落としたいと言ったこと、そしてそのまま火車坊を連れて部屋を出て行ったこと。
    「つまり、お前が大俱利伽羅に告白をされた、と。で、それがどうした?」
    「今の話に何か、驚くことがあったか?」
    「おい! 二人とも、その反応はおかしいだろう!」
     話し終わった俺が反応を窺うと、二人とも揃ってコテンと首を傾げていた。吸血鬼の俺がいうのも変な話だが、刀の付喪神というのは他人の色恋沙汰にそこまで興味がないものなのだろうか。
    「だって、俺は平安生まれの吸血鬼なんだぞ? 多分千年以上生きてる。対する伽羅坊は十八のガキだ。歳の差何世紀分あると思ってんだ。それに前提として伽羅坊は人間であって、老けないし死なない俺とは全然違う生き物なんだ」
    「ほう、そういえばそういうことになっていたんだったな」
    「それで、何だ?」
    「確かに俺はあいつが高校卒業したら美味しく頂こうと十年間画策してきたが、あいつの心まで頂くつもりはなかったんだんだ。あいつには幸せになってほしい。俺と違って人間として幸せに生きて、死んでほしい。そう思う、本当だ。でも俺、あいつが作ってくれた朝飯食べてたらさ……あいつ俺のこと好きなんだなって思ったらさ、嬉しくなっちまって……なあ、俺、どうしたらいいと思う?」
     また泣きべそをかきそうになりながらなんとか吐き出して顔を上げると、大包平も三日月も、俺の苦悩なんか知ったこっちゃないという調子で肩をすくめた。
    「お前、またそんな戯言を……いっそ呆れるな……」
    「大倶利伽羅もなかなかのものだが、お前も大概だな……」
    「おい三日月、俺はともかく伽羅坊をちょっとでも悪く言ってみろ? とっちめるぞ」
    「おお、怖や怖や」
     怖いと言って両手を挙げた三日月だが、表情は呆れ顔から穏やかな笑顔に戻っただけだった。大包平は俺が思わず三日月の頭にチョップしそうになった手をぱしりと掴んで止めさせてから、「はぁ」とため息をついた。
    「お前がどうしたらいいか、という問いだが。俺には『そんなものはお前が決めろ』としか答えられん。お前は大俱利伽羅をどうしたいんだ。血を吸いたいと言っていたが、吸ってどうする? お前の口ぶりだと、吸血鬼らしく吸い殺すというわけではないのだろう? 吸った後にも大俱利伽羅の人生は続くし、お前も生きる。まさかこの十年、それを考えずに大俱利伽羅に付き纏ったわけではあるまいな」
    「……あっ、確かに。美味いって聞いたから試したいとは思っていたが、その後どうするかまではあんまり考えてなかったな」
    「おい! 貴様、この盆暗! 大俱利伽羅の十年を返せ!」
    「おわぁ、離してくれ、目が回る」
     大包平は俺の両肩を掴み、がくがくと揺さぶった。ちょっと吐きそうになったところでようやく三日月が助けに入ってくれた。
    「まあ、まあ、大包平。あまり強く責めてやるな。鶴丸は確か、十年前に強く頭を打って倒れたんだろう。多少『ぽんこつ』とやらになっていても仕方ないさ」
    「本当、きみたちに相談した俺が『ぽんこつ』だったな……」
     今度は俺がため息をついた。二人が俺をどんなやつだと思っているかもよくわかったし、俺自身が本当に考え無しだったこともわかってしまったからだ。俺にはもうがっかりだ。だが俺は美人なだけでなくメンタルもそこそこ強いタイプの吸血鬼なので、両脇で「やれやれ」と苦笑する二人に改めて向き直り、「うん」と頷いた。
    「でもまあ、ちょっと気が晴れたよ。大包平の言う通りだ。俺がどうしたらいいかは、確かに俺が決めなくちゃならないことだったな。真面目に考えてみるよ」
    「そうだな、考えろ。くれぐれも真面目にな」
    「ああ。真面目にな?」
    「これ見よがしに繰り返すな!」
     いくらメンタルが強くても、揶揄われたらムッとするぞ、俺は。ぷんすこと頬を膨らませていたら三日月にぽんぽんと頭を撫でられたのでぺしぺしと振り払い、ベンチから立ち上がった。せっかく来たから、二人だけでなく他の連中にも挨拶したい。確か今は京から二振り、特別展の目玉として遊びに来ていたはずだ。
    「じゃあまたな。落ち着いたらまた報告しに来るよ」
    二人に軽く手を振って、庭から博物館の本館に戻る。なんやかんやで優しい二人は俺ににこやかに手を振りかえしてから、幻のように姿を消した。

    続く
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     こんなことを言っても信じてもらえないだろうが、俺は長生きの吸血鬼なので、日本史でいうところの平安時代からの記憶がある。流石にそこまで遡ると昔すぎておぼろげだが、現役で活躍していた鎌倉時代以降の記憶ならわりとちゃんと残っている。これがまた波瀾万丈な人生だった。安達という家に仕えていたらもっと偉い人から謀反の疑いをかけられて一家全員皆殺しにされてしまったし、俺も殺されるもんだと思っていたら美人すぎるからという理由で捕まって北条という家に仕えることになったし、その後何故か神社に放り込まれてしばらくして、今度は伊達の家、そして皇室。俺が美人すぎるばかりに色々なところに引っ張りだこだったというわけだ。
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