それはある褪せ人が終わりに至るまでの話あるいは一人の魔術師の新たな旅の始まりの話
その二人組は共に旅をする時間が長かった。
まだ成人してまもない若輩の身でありながら腕の立つ葦の国の侍と学者志望だった魔術師。
狭間の地に来たばかりで異国の文化に疎く途方に暮れていた若者にロジェールが知恵を授けたのがきっかけで、人懐こいその男は親鳥の後ろを追いかける雛のように共に行動するようになったのだ。
この地での生活に慣れる頃には離別するものと思われていたが気づけば良きパートナーになっていた。
青年は残念ながら頭を使う事は苦手であった。しかし好奇心はロジェールと同じく、若しくはそれ以上に旺盛だった。分からないなりに理解をする努力をしたし目新しい物は試してみたい性分であった事も助け、何事においても受け入れる寛容さがあった。傍から様子を伺っていたロジェールも自分の知識を与えれば目を輝かせて頷き話の続きをせがまれるのだから悪い気はしなかった。
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