泡末のような話。※ヘクジェラとサジオラとハーキュリーズ×終帝くんを混ぜた傭兵一人称雑文です。
「…何処なんですかね、此処」
夜半眠りに付いた記憶はある。
最終決戦を前にして怖気付く自分を慰めてくれた白銀の色を持つ主君と共に。
覚醒する刻かと思い目を開ければ広い白の世界に自分と主君のみがいるのみで仲間達の気配すら感じられない。
「何処なんだろうねえ、死後の世界?
一緒に寝たら2人で死んでるってのも悪くは無いけど時期的には良くないね」
「いや俺はともかく貴方は…!」
この方即位直後から色々あった事もあってか本当に動じないしそこが強さではあるけども言い合いをしている場合でも無い。
とりあえず方向も掴めないままただまっすぐ勘に頼って歩いて行くうちに扉だけが1枚存在する空間にたどり着いた。
「私はこういう場面だととりあえずさっさと開けたい」
「せめてまず警戒するを前に入れてからにしていただきたいってのは口酸っぱく言ってますよねえ!?」
打たれ強さから来る自信なのか性格なのか知らないが皇帝として無謀な選択はどうかと思うし何故か自分が歯止め役となっているのが納得は行かないが悪くないと思う自分もいる訳で…
とりあえず扉の向こうの物音を確認するも無音、気配も感じない。ただこんな異常な空間で何もありませんでしたは有り得ない。
結局主の意見鵜呑みにしてさっさと開けるしかないのか…!
「開けるしかないって思ってる顔してる」
合ってます。
「じゃあ開けて良いよね?」
もう腹括るしかない、扉の先にいるのが悪意持つものなら自分の身体と命全て使ってでもこの方だけは守ると重い覚悟決めてる横で鍵もかかってない扉を無造作に開ける主に眩しさも感じつつ扉の先を見る。
何だ此処、アバロンの城内を思わせる室内とある程度の人数を招いて茶会出来そうな机に4人の人間?と思いたい存在がいた。
いやでも1人は凄く見覚えがある場内にやたら肖像画のあるアバロン国民で知らない奴はいないだろうと思われる初代継承皇帝と瓜二つ…?
もう1人は宮廷魔術師と思われるローブを着用した男と2人の傭兵…なんかこの2人は自分が鏡で良く見ているツラにしか見えない…自分にそっくりな人間が3人いるとかいうアレか。
こういう状況で煩くなりそうな人が静かだなと隣を見れば固まってる、珍しい事もあるものだと思っていた矢先。
「ジェラール帝…!?」
やっぱりそうなのか…って初代継承皇帝って1000年前の皇帝が何故こんな所に…?
「いらっしゃい、君達は何代目かな?」
線が細そうに見えてこの余裕…観察するように見ているとジェラール帝の隣の俺のそっくりさんからの圧が凄いので目線逸らして自分の主に色々任せる事にする。
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こいつはオレなのか...?
飄々としながら内に秘めた威圧感を持つ白銀の皇帝と共に現れた蒼に染めた髪色から身に着けた防具や服装どころか顔まで瓜二つの傭兵。
多少の色違いがある程度で生き別れの双子の兄弟だと名乗られてもそうかもしれないなんて馬鹿な事を思ってしまってもおかしくない。
既に同室にいるもう1人の傭兵も似ていると言えば似ていると思うがジェラールの極近い未来に継承を受けたらしい皇帝だと聞くし、その件の話し合いで少々揉めた時に側近の宮廷魔術師に色々と窘められている場面に遭遇した事もあってかただの傭兵とは立ち位置が違うと感じてしまっている向きがある。
「私はアバロンの...ジェラール帝の世から1000年の未来に可能性を受け継いだ最後の皇帝です、彼は私の一の臣下であるハーキュリーズ」
また凄い方にお仕えしてるなこいつ、という羨望と色々苦労もあるんだろうなという同情で2人をまじまじと見入ってしまっていると隣から腕に感じる慣れた体温。
どうも要らない心配をされているらしい、不要なものですよオレがお仕えするべき唯一無二の稀有な存在であるジェラール陛下。
「継承法にも限界があったという事?それとも我らが悲願である七英雄の完全な討伐完了か...」
初代継承皇帝であるジェラールでは判明しなかった事が確認出来る場なのかもしれない。
...と思ったがこの良く分からない空間での記憶は果たして自分達が生きる世界に帰還時に残るのかどうか。
「はっきりしねー事で悩んでも仕方ねーだろ。正直悩むくらいならこっから出る事考えた方がいいんじゃねえの?」
「皇帝へい…オライオン陛下!」
「俺達はジェラール帝から約100年後のアバロンから来た。俺はオライオン、んでこっちは相棒のサジタリウスな。」
ジェラール以降の皇帝は血に寄らない実力のみで選定される継承法を使用したものだと聞くがまさか自分と似た男が継ぐことになる未来があるとは予想もしなかった。
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宮廷内で面倒な書類仕事をしつついつものようにサジタリウスに叱られ…なんて事をしていたその時に何の前触れも無くここに居た。
自分1人ではなく相棒が居た事に安堵しつつも探索を進めれば出会ったのは親の顔より見たかもしれない継承法を使った初代皇帝であるジェラールとその護衛である自分にそっくりな傭兵だった。
別に血縁がある訳でもないのにここまで似てると笑えてくる。
後から合流した2人のうちの護衛の方もやっぱり自分にそっくりだった。
俺にも傭兵の護衛が居てもいいんじゃないのかとも思ったが自分に必要なのは護衛よりも参謀だよなと思い直す。
「何か要らない事考えていらっしゃいませんかオライオン陛下?」
こういう場に突然連れてこられてもブレないコイツが居てくれて良かった。
「俺にはお前が必要だなと再確認しただけだよ。」
「ま、それはそうでしょうね。ジェラール帝も最後の皇帝も思慮深い方々とお見受けするのに貴方は良くも悪くも相変わらずで…」
自分の事を褒めてくれるなんて珍しい、やっぱり変な世界に来た悪影響があるのかもしれないという思考を読まれたのか耳を引っ張られた。
そうかここは立場のしがらみ気にせず過ごせる場所なんだな。
「せっかくの機会だ。ここでこうやって不毛な話続けててもこの記憶ごと元の世界に持って帰れるかもわかんねえ。ここから出たとして出口があるともわかんねえしとりあえず今のところ安地のここで休憩しつつ茶でも飲んでりゃいいんじゃねえの?」
「いいねえそれ賛成!散々歩いて疲れちゃったもの。そこの戸棚の中の茶器使ってもいいかな?」
このでかいけど中身軽いヤツって最後の皇帝なんだよな。さっきはもうちょっとしっかり話してなかったか?
迂闊に戸棚開けようとしてピンク色した俺みたいな奴ハーキュリーズに止められてる。
こういう皇帝持つと大変だよなあと零せばサジタリウスは大きな溜息をついてやがった、皇帝の側近同士で意見交換したら少しは気晴らしになっていいんじゃないか。