触れられないその温もり。「なあヘクター知ってたか?城下じゃこんなものが出回ってるらしいぞ。」
そう言うヘンリーの手には1枚の小さな紙。
それをひらりと翻されるといつも追っている柔らかな赤毛と澄んだ緑の眼差しを持ったこの国の頂点である人物を模した姿絵が見えた。
城内城下で良く見られる第二皇子時代の肖像画とはまた違うものだ。
黄金の鎧を纏い皇帝として威厳のある姿だった。
「戴冠式も終えて帝国内にも余裕がでてきたって事かな。にしてもこんな持ち歩き出来る大きさの絵姿を量産する程なんてジェラール様の国内の人気も凄いもんだよな。」
大きな笑い声を上げつつジェラールの絵姿について語るヘンリーはご満悦だ。
そりゃ自分達がお仕えするご主君様が帝国民に愛されているという事実はヘクターだって嬉しい。
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