シュウは嫉妬しない。いや、嫉妬を隠しているだけなのかもしれないが見てる限りでは嫉妬している素振りを全く見ない。
例えば、シュウとデート中に俺が女性に声をかけられたとき。明らかなデートのお誘いをしてくる女性を断ってシュウの顔を見た。シュウはけろりとしていてお誘いされた事を気にしている様子は無かった。デート中なのに、とか隣に恋人いるって言えばいいじゃん、とか、そう言う嫉妬を見せても何もおかしくない状況なのに。
でもシュウに好かれていないと言う訳ではない。むしろ好かれているし愛されていると思っている。シュウに嫉妬して欲しいって思っている訳じゃないけど、そういうのが全くないと少し気になっていた。
『お願い、一回だけでいいから!』
友人からどうしても、と電話口で告げられる。知り合いの女性がルカと一度食事をしたいとの事だった。ソファーにシュウと隣り合って座ってテレビを見ながら電話をしていて、シュウが気を利かせてテレビの音量を下げたからきっと会話は筒抜けだろう。
「だから〜俺恋人がいるんだって!だから食事は行けないの!!わかる??」
友人には申し訳ないがはっきりと断る。シュウを悲しませたくないし、顔も知らない、一方的に知られている人と食事なんてごめんだと思った。
「なんで?」
隣に座っているシュウから声がかかる。顔を見ると不思議そうな顔をしていた。
「食事くらい行ってあげなよ。友達の友達なんでしょ?」
「え、」
耳から離したスマホから友人の喋り続ける声が聞こえる。ちょっと待って!と一言伝えてシュウを向いた。
「女の人と食事だよ…?シュウは嫌じゃないの?」
「なんで僕に聞くの、行くのはルカだよ!」
笑って答えるシュウに、そうじゃなくて、とルカは身体を完全にシュウの方へと向き直す。
「…嫉妬とか、しないの?」
嫉妬して欲しい訳じゃない、そう思っていたが違ったのかもしれない。だって今、なんで嫉妬しないのって思ってしまっている。
「嫉妬?」
「うん、」
「んー、だってルカがそういう意味で好きなのって僕だけじゃん。」
そう言うと、シュウはテレビを向いて用意していたお菓子をもぐもぐと食べ始めた。ルカの手からスマホが落ちてソファーにバウンドする。シュウに思いきりハグをした。
「どしたの、」
突然したハグにも驚くことなくルカは頭をぽんぽんとされる。俺の恋人がこんなにも格好いい。敵わないよ。
「シュウ〜〜〜!!!」
シュウに頭をスリスリしながら暫く抱きついていた。
『ルカさんの事好きなの?あー…やめときな。いや、性格悪いとかじゃなくて…うーん、まあ一回ご飯でも誘えば?』