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    Norskskogkatta

    @Norskskogkatta

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    Norskskogkatta

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    花冷えの答え合わせらしきものを書きたかった
    とりあえず機嫌のいい大倶利伽羅の主くり
    偽善ぽいと悩む主とそれすら愛おしくなってる大倶利伽羅

    ##君とひととせ

    夜桜に酔いませんか夜桜とくれば宴会になるのは当然だった。大広間の廊下側の戸を開け放し、満開の桜が月明かりに照らされ発光しているかのように輝いている。
    ほとんどのやつらが舞い散る花弁に見とれているうちに回避しようにもがっつりと両脇を光忠と国永に押さえられてしまえばそれまでだった。
    だがもう宴もたけなわになる頃合いだ。この騒がしさに俺ひとりがいなくなっても文句は言われないはずだ。
    「ひとりで花を見てくる」
    わいわいと賑やかな広間の中でつぶやき立ち上がれば大広間を一周して飲み歩いてきた国永が仰ぎ見た。
    「なんだ、もういくのか」
    「もう十分付き合っただろう」
    「まあ、伽羅坊にしちゃあ辛抱したほうだよな」
    けたけた笑いながら徳利を傾ける白い刀はすでに首まで赤い。だが酔ってはいないこの老獪は口角をあげた。
    「酒用の冷蔵庫に半端になってるやつがあるから持って行って良いぞ。ここで飲むにはちと足りないが伽羅坊が持ってくなら十分だろう」
    こちらの行動を見透かしたような言動に舌を打てばまた声をたてて笑い始めた。酔ってはいないが笑い上戸になる白い刀は放っておくことにかぎる。だが、ひとこと断ってはおく。
    「……酒、もらうぞ」
    「おう、持って行ってやりな」
    振り向かずに手だけを振った鶴丸を背に大広間をあとにした。
    厨に寄り、国永の言っていた酒を最近新調したという硝子製の徳利にうつし、そろいの猪口もふたつ盆にのせた。
    執務室までの渡り廊下の近くにも桜が立ち並んで春の夜風に運ばれてくる。ひらりと盆に着地した一片を眺めながらつい数日前を思い出す。

    転移装置の不具合で短時間の遠征に出たはずが本丸に帰れたのが子の刻を回ってから。そのとき近侍と出迎えた主がこちらの顔をみて安堵したあと、顔色を悪くしたのが気にかかった。
    またなにか自責をしているような気がして身を清めてから執務室へ向かった。そこには座椅子にぐったりともたれて眠っている主がいた。まだ寒さが残る時期だというのに無防備なことだと揺り起こしてみても寝ぼけて起きやしない。それどころかやはり寒かったのかすり寄るように頭を胸元に預けてきた。
    仕方ないと部屋まで運んで布団に押し込み、ついでに隣に潜り込むと名を呼びながら抱きつかれた。
    そうして同じ夢の中で主の懺悔めいた言葉を聞いた。主にとっては憂慮すべきことなのかもしれないが、依怙贔屓はしないと宣言している主からあんなふうに言われれば気分も高揚する。面と向かって言うつもりは無かったのだが口をついて出た言葉は桜に紛れていった。
    翌朝起きた主になぜ隣で寝ているのかと驚かれた。夢を覚えていないのかもしれないが気分が良かったからあえて言わずにおけば案の定、頭を抱え始めた主を置いて朝餉にむかったのだ。

    執務室に着くと行灯ひとつだけで端末に向かい操作をしている主がいた。こちらにはまだ気づいていない。部屋には入らず、姿が見える場所で音を立てぬよう盆を置く。集中しているせいで丸くなっている背を眺めた。
    はじめは花見と称した宴会にも参加していたのだが政府から至急の仕事が入り退席した。だから国永は酒が余っていることを伝えてきたのだろう。さて、この冷酒の注がれた徳利の汗が引くのが先か主が背を伸ばすのが先か見物だ。
    「…………」
    「……これでおわりっと」
    かたかたと雨粒のように続いていた音がやんだ。ぐいと両腕を真上に伸ばす主の肩や首回りからはゴキンと硬い音が鳴っていた。
    「ようやくか」
    「おわ!? 大倶利伽羅いつからいたんだ!」
    びっくりした、来たなら声かけろよ、と小言を並べる主に盆にのせたものを見せた。まだ徳利は汗をかいたままだった。
    「ほとんど飲めていなかっただろ」
    「気が利くな。ありがと。……ふたりで飲むってことでいいんだよな」
    打って変わって身を乗り出してきた主に口元が緩みかける。
    主の夢の中は桜で埋め尽くされてしまうほどで、その中から現れた主の表情と言葉は覚えている。そのどれもが偽善的だと自分を責めているようで胸をくすぐるものだったが、今は覗うように向けられる視線が何よりも代えがたいと思った。
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    Norskskogkatta

    Valentine主くり♂くり♀のほのぼのバレンタイン
    料理下手なくり♀が頑張ったけど…な話
    バレンタインに主にチョコ作ろうとしたけどお料理できないひろちゃんなので失敗続きでちょっと涙目で悔しそうにしてるのを見てどうしたものかと思案し主に相談して食後のデザートにチョコフォンデュする主くり♂くり♀
    チョコレートフォンデュ一人と二振りしかいない小さな本丸の、一般家庭ほどの広さの厨にちょっとした焦げ臭さが漂っている。
    執務室にいた一振り目の大倶利伽羅が小火になってやいないかと確認しにくると、とりあえず火はついていない。それから台所のそばで項垂れている後ろ姿に近寄る。二振り目である妹分の手元を覗き込めば、そこには焼き色を通り越して真っ黒な炭と化した何かが握られていた。
    「……またか」
    「…………」
    同年代くらいの少女の姿をした同位体は黙り込んだままだ。二振り目である廣光の手の中には審神者に作ろうとしていたチョコレートカップケーキになるはずのものがあった。
    この本丸の二振り目の大倶利伽羅である廣光は料理が壊滅的なのである。女体化で顕現したことが起因しているかもしれないと大倶利伽羅たちは考えているが、お互いに言及したことはない。
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