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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    TF主ルチ。ルチが自分を両親の代替品にしてる可能性を考えるTF主くんの話。

    ##TF主ルチ

    誰かの代わりになれなくても 夜中に、燃えるような暑さを感じて目が覚めた。部屋の中は真っ暗で、月明かりが僕たちを照らしている。時計を見ようと身体を動かしたが、上手く寝返りが打てなかった。僕の身体を固定するように、背中に何かが張り付いている。
     その、肌と肌の触れているところが、燃えるような熱を放っていた。身体から汗が吹き出して、Tシャツが張り付く感覚がする。お腹へと回された腕も、同じくらいの熱を放っている。喉がからからに渇いていて、息を吸う度に気道に違和感を感じた。
     喉の渇きに耐えきれなくて、僕は布団を持ち上げた。隙間から冷たい風が流れてきて、火照った身体を冷ましてくれる。背後からの拘束から逃れようと、回された腕を引き剥がしてみる。抜け出せそうな隙間が出来たと思ったら、再び力強い腕で抱きつかれた。
    「いかないで」
     背後から、小さな声が聞こえてきた。か細くてあどけない、幼い子供の声である。それは僕の耳を擽り、行動の手を止めてしまった。
    「どこにも、いかないで」
     懇願するような声色で、ルチアーノは再び言葉を吐いた。そこに含まれる悲痛な響きに、胸の奥が苦しくなる。後ろを振り向きたくても、身体を固定されてしまっているから、思うように動くことができない。ひとりでやきもきしていると、再び声が聞こえてきた。
    「いかないでよ、パパ」
     その単語の意味を認識して、僕は心臓が止まりそうになった。彼が夜中に泣いていることは知っていたが、ここまで明確な言葉を告げられたのは初めてだったのだ。心臓がドクドクと音を立てて、一気に身体が冷えていく。お互いの表情が見えないことだけが、唯一の救いだった。
     ルチアーノは、夜というものが嫌いらしい。日が暮れて、空が暗く染まり始めたら、彼は町から姿を消してしまうのだ。僕と一緒にいる時も、夜になるとしおらしく甘えてきたり、ひとりで涙を流したりする。それには彼の生まれた経緯が関わっているようだけど、理由を聞くと機嫌を損ねてしまう。胸に引っ掛かるものを感じながらも、見て見ぬふりでやり過ごしていたのだ。
     でも、これではっきりと分かってしまった。ルチアーノが求めているのは、両親からの愛なのだ。薄々気がついていたその事実を、その言葉は明確に突きつけてくる。漠然とした恐怖に襲われて、何も考えられなくなった。

    ──僕は、誰でも良かったんだ。僕を愛してくれるなら、誰でも良かったんだよ。

     かつてルチアーノが語った言葉が、僕の脳内に蘇る。『誰でも良かった』という言葉の意味が、質量を持ってのし掛かってきた。きっと、彼は自覚していたのだろう。自分の求めている愛情が、両親の愛の代替品であることに。
     ルチアーノにとって、僕は両親の代わりなのだろうか。自分を保護して温めてくれる存在に、両親の面影を見出だしているだけなのだろうか。だとしたら、彼はどうして僕の行為を受け入れてくれるのだろう。考えても仕方のない物事が、脳内を浮かんでは消えていく。
    「ルチアーノ」
     気がついた時には、言葉が口から零れていた。聞こえているのかいないのか、背後からの返事は聞こえてこない。返事を待つこともせずに、僕は次の言葉を口に出した。
    「僕は、僕だよ。君のパパじゃないんだ」
     僕の言葉は、ルチアーノには届かなかった。僕の身体を抱き締めながら、彼は譫言のように言葉を発する。それは心臓を抉るような、悲痛な声色をしていた。
    「嫌だよ、パパ。僕を置いていかないで。ずっと、僕の側にいて」
     胸を締め付ける痛みは、もはや何が原因か分からなかった。彼の苦しみに共感しているのか、自分を代替品にされていることが苦しいのか。不明瞭な気持ちを抱えながらも、心を鬼にして言葉を吐く。
    「僕は、ルチアーノのパパにはなれないよ。僕は僕であって、それ以外にはなれないんだ。分かってくれる?」
     相変わらず、向こうから返事はなかった。僕の言葉は、彼にはまだ受け止められないのだろう。今は寝惚けているようだし、そうじゃないとしても、気持ちの整理などできていないだろう。
    「大丈夫、僕はどこにもいかないよ。ずっとルチアーノの側にいる」
     言葉を重ねると、彼は腕を緩めてくれた。腕の中から這い出して、ベッドの外へと足を踏み出す。後ろを振り向くと、こんもりと膨らんだ布団に視線を向けた。真っ直ぐに手を伸ばし、隠れたままの頭を撫でる。
     僕は、ルチアーノの親になることはできない。僕は僕であって、それ以外の何者でもないからだ。でも、僕は彼を愛しているし、ずっと側にいるつもりでいる。両親にはなれなくても、心を通わすことはできるのだから。
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