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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    TF主ルチ。TF主くんの小学校時代の同級生が尋ねてくる話。オリジナル設定が多大に含まれる上に女の子の誘惑に威嚇するルチがいます。

    ##TF主ルチ

    思い出の人 午後の静かなリビングに、チャイムの音が鳴り響いた。カードに触れていた手を離し、壁に取り付けられたインターホンへと向かう。通話ボタンを押すと、画面に映し出されたのは、見慣れない女の子の姿だった。
    「こんにちは。○○○さんのお宅ですか?」
     カメラへと視線を向けながら、女の子はかわいらしい声で言う。ノイズの入った音声では、知り合いかどうかさえ分からなかった。服装や全体の雰囲気から、僕と同年代なのだろう。
    「あの、失礼ですが、どちら様ですか?」
     尋ねると、少女ははっとしたような顔をした。すぐに表情を引っ込めると、落ち着いた声で言う。
    「そうね、久しぶりだもんね」
     彼女の物言いから考えると、僕たちは過去にどこかで会っているのだろう。記憶を掘り起こしてみるが、少しも見当がつかなかった。首を傾げていると、再び彼女が口を開く。
    「私は、✕✕✕だよ。小学生の時、同じクラスだったでしょ」

     数分後、僕はその女の子と向き合っていた。僕の隣にはルチアーノがいて、冷たい瞳で彼女を見つめている。部外者にどこまで話していいのか分からなかったから、ルチアーノのことはタッグパートナーとして紹介していた。彼女がルチアーノに告げた自己紹介は、僕の小学生時代の同級生だ。しかし、これも完全な真実とは言えないのである。
     そんな二人の間に挟まれて、僕は気が気ではなかった。断りきれずに家に上げてしまったことを、今になって後悔する。来客用の紅茶を用意している間も、逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
    「綺麗な家ね。私の部屋よりも綺麗かも」
     リビングをぐるりと一瞥してから、彼女は僕に声をかける。返す言葉が分からなくて、とりあえずお礼を告げた。
    「ありがとう」
    「紅茶まで出してもらっちゃって、ありがとね。気を遣わなくても良かったのに」
     饒舌に語る彼女を、ルチアーノが威嚇するように睨み付ける。気づいているのかいないのか、彼女は無視を貫いていた。
    「ごめんね。こんなものしか出せなくて」
     僕が口を閉じると、室内に思い沈黙が訪れる。ルチアーノと過去のクラスメイトに挟まれて、僕は気まずい思いをしていた。何を隠そう、この女の子は、僕のかつての想い人だったのだ。友達に囃し立てられるままに、僕は彼女と距離を縮めていた。
     そんな彼女が僕の前に現れたのだ。しかも、ルチアーノと一緒にいるタイミングで。もう彼女に想いは無いと言っても、この状況は気まずすぎる。どうやって打開しようかと、必死に頭を巡らせていた。
     僕が黙り込んでいると、女の子が口を開いた。部屋の壁に飾られた賞状に視線を向けると、感心した声で言う。
    「○○○くんは、プロデュエリストを目指しているのよね。大会に出て、優勝もしてるんだって」
    「そうだね。ルチアーノと組んで、いろんな大会に出てるよ」
     僕の返答は、ただのおうむ返しになってしまった。彼女も返事まで気にしていないのか、一方的に言葉を続ける。
    「ルチアーノくんも、小さいのにプロデュエリストだなんて、すごいね。私なんてただの高校生なのに」
    「子供だからって、下に見ない方がいいぞ。僕は、スポンサー契約までしてるチームの一員なんだ」
     彼女に話題を振られて、ルチアーノは間髪入れずに答えた。トゲのある言葉選びに、慌てて彼の口を塞ぐ。
    「ルチアーノ!」
     心配とは裏腹に、彼女は気分を害してはいないようだった。ルチアーノの方に向き直ると、大人の対応で答える。
    「そうね。プロの世界に、大人も子供もないものね。ごめんね」
    「分かればいいんだよ」
     その後も、彼女の質問は続いた。際どい問いかけが飛び出す度に、僕は心臓がドキドキしてしまう。大会の優勝歴やシティでの暮らしというデュエルにまつわることから、ルチアーノとの関係や交遊関係に関するプライベートなことまで、その内容は多種多様だった。
     ルチアーノとの関係を誤魔化している以上、素直に答えるわけにはいかない。何度も言葉を濁しては、曖昧な返事で問いかけをかわした。ルチアーノはそれが気に入らないようで、終始冷たい態度を貫いている。上から目線な言葉の数々に、今度こそ気分を害するんじゃないかと心配だった。
    「ねえ、もし良かったらなんだけど、今度一緒に食事をしない?」
     ようやく質問攻めが終わった頃に、彼女はそんなことを言い出した。真っ直ぐに僕に視線を向けると、優しい笑みを浮かべている。話の先が見えない展開に、僕は間抜けな声を上げてしまった。
    「え?」
    「今日は急に押し掛けちゃったから、ゆっくり話ができなかったでしょ。今度は、二人きりで話したいの」
     ポカンと口を開ける僕に、彼女は淡々と言葉を続ける。ここまで直接的な言葉を使われたら、僕にだって意図が理解できてしまった。彼女は、僕をデートに誘おうとしているのだ。大胆で、なおかつ恐ろしい言葉だった。
    「えっと、それは、その……」
     僕が返答に困っていると、ルチアーノがちらりと視線を向ける。僕の返事を伺うような、冷徹な視線だった。上手く断らないと、彼の機嫌を損ねてしまうだろう。口実なんて考えられないから、簡潔な言葉で断る。
    「ごめんね。二人きりでは会えないんだ。嫌がる人がいるから」
     それでも、彼女は引き下がらなかった。真っ直ぐに僕を捉えたまま、上目遣いで見つめてくる。手元では、誘惑するような仕草をしていた。
    「どうして? 誰か付き合ってる人でもいるの? そうでなければ、一緒に来てくれないかな」
     諦めの悪い態度に、僕は言葉に詰まってしまう。彼女とデートをするなんて、僕の望むところではなかった。でも、上手くこれをかわすには、ルチアーノとの関係を語らなければならないのだ。
    「どうしても、ダメなんだ。諦めてほしい」
    「そう。なら、今回は諦めるわ。また今度会いましょう」
     再三断っても、彼女は諦めていないようだった。引き下がるような言動の中に、今回はという言葉をつけている。隣に座るルチアーノが、ピクリと身体を動かした。
     彼女が帰ったのは、それから少し経ってからだった。帰り支度を終えた彼女を、玄関まで見送りに行く。彼女の行動が心配なのか、ルチアーノも玄関までついてきた。僕の方を振り返りながら、彼女は寂しそうに笑う。
    「今日はありがとね。本当は、もっとゆっくり話したかったけど、また今度にするね」
     別れの言葉らしきものを告げてから、彼女は僕の方へ歩み寄る。すぐ目の前まで顔を近づけると、囁くような声で言った。
    「私ね、ずっと、貴方に会いたかったんだよ。そのためにわざわざシティまで来たの。だから、また会ってほしいな」
     彼女の女の子らしい声が、僕の耳へと伝わってくる。ふわりといい香りがして、頬が熱くなってしまった。隣に立つルチアーノが、ピリピリとした空気を走らせる。彼女が顔を離すと、ルチアーノが一歩前に出た。
    「黙って見ていれば、諦めの悪い女だな」
     魂の凍えるような、低くて重い声だった。目の前に立っている女の子が、びっくりしたように口を開ける。それもそのはずだ。ついさっきルチアーノが発した声は、これまで彼が発した声とは全く違っていたのである。威圧感に満ち溢れていて、背筋が凍るような声だった。
    「その男は、僕のパートナーなんだよ。ただのタッグパートナーじゃない、人生のパートナーだ。僕のお気に入りなんだから、他のやつに譲るわけ無いだろ。とっとと諦めて、実家とやらに帰りな」
     沈黙する僕たちを見ながら、ルチアーノは淡々と言葉を続ける。さっきまで僕に迫っていた彼女は、怯えた様子で身を引いていた。そそくさと荷物をまとめると、僕たちに対して背を向ける。小さなその背中から、震えた声が聞こえてきた。
    「私、帰るね」
     音を立てながらドアが締まり、室内は二人だけになる。去っていく女の子の後ろ姿を、僕は呆然と見つめていた。そんな僕を見上げながら、ルチアーノが怒りに満ちた態度で近寄る。吊り上がった瞳を見て、僕も逃げ出したくなってしまった。
    「お前もお前だぞ。あんな断りかたじゃなくて、もっときっぱりと断りな。中途半端な拒絶じゃ、チャンスがあると思われるだろ。お前は僕のパートナーなんだ。相応しい自覚を持てよ」
    「ごめん。ルチアーノがパートナーだってことは、隠した方がいいと思って」
     僕が言うと、ルチアーノは呆れたようにため息をつく。冷めた視線を見ていると、なんだか申し訳なくなってきた。
    「隠してても、断る口実なんていくらでもあるだろ。恋人がいるって言えばいいんだよ」
     言い聞かせるような口調で、ルチアーノは言葉を続ける。ここまで言われてしまったら、素直に断るしかなかった。
    「ごめん。本当に悪かったよ」
    「分かったならいいよ」
     僕の答えを聞いて、ルチアーノはリビングへと歩き出す。僕に不満をぶつけたことで、ある程度の機嫌は戻ったみたいだ。ホッと息を吐き出しながら、安心してその後に従う。
     あの女の子は、もう僕の元へは訪ねて来ないだろう。ルチアーノに睨まれて怖い思いをしただろうし、そんな図太さは無いと思ったのだ。彼女の誘いを断ったなんて、周囲からしたらもったいないのかもしれないが、僕はそうは思わない。僕には、ルチアーノというパートナーがいるのだから。
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