Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

    文章や絵を投げます

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💕 🍇 🐥 🍣
    POIPOI 471

    流菜🍇🐥

    ☆quiet follow

    TF主ルチ。ルチと喧嘩したTF主くんが成り行きでるかちゃんに相談する話です。

    ##TF主ルチ

    恋愛相談 その日、ルチアーノは絶不調だった。
     デュエルにまつわるあらゆる運が、一切回って来なかったのである。スカイコアが手札に回ってきても、コアを破壊するためのトラップが足りていない。トラップを引けたと思ったら、今度はコアが手札に回ってこない。魔法カードを使ってサーチをしようとすると、相手のトラップに止められる。おかげで、僕たちの勝率は、半分が黒星になってしまった。
     とぼとぼと家路を歩みながら、ルチアーノは明らかに落ち込んだ様子を見せている。これまでの言動から予測できることだが、彼は負けることに慣れていないのだ。神によって協力なデッキを与えられ、圧倒的な力を振るうルチアーノにとって、敗北など許されないことなのだろう。真っ直ぐに下を向いたまま、重い足取りで前へと進む。
    「ルチアーノ」
     いてもたってもいられなくなって、僕はルチアーノに声をかけた。寂しそうな後ろ姿を見るのが、苦しくて仕方なかったのだ。相当悔しい思いをしているのか、彼は顔すら上げようとしない。とぼとぼと足を進めながら、ぶすっとした様子で返事をした。
    「なんだよ」
    「あのさ、こういうことは、デュエルしてればよくあるよ。だから、あんまり気にしないで」
     僕が声をかけると、ルチアーノは黙って足を止めた。唐突に顔を上げると、鋭い瞳で僕を睨む。
    「なんだよ! 僕のせいで負けたって言うのか!?」
     突き放すような言葉に、僕は言葉を失ってしまった。自分が対応を間違えたことは、考えなくても理解できる。僕が下手に声をかけたせいで、ルチアーノは傷ついてしまったのだ。せめてものフォローを入れようと、必死の思いで言葉を探す。
    「違うよ。誰だって、運が回ってこないことがあるんだ。僕たちが負けたのは、ルチアーノのせいじゃない。だから、あんまり気にしないで……」
    「運が悪いから負けたってことは、僕が弱かったってことだろ! 本当に強いやつは、運が悪くたって勝てるんだ!」
     僕が言い終わらないうちに、ルチアーノは大声で捲し立てる。僕の言葉を拒絶するような、勢いに満ちた言葉だった。僕が言葉を返せずにいると、ルチアーノは一方的に言葉を吐く。
    「もういいよ。君とのパートナーは解散だ。これからは一人でやりな」
     くるりと僕に背を向けると、大通りを走っていってしまった。小さくなっていく後ろ姿を、呆然と見つめることしかできなかった。また、僕は失敗してしまったみたいだ。ルチアーノの気持ちを察するのは難しい。
     とはいえ、こんな小さな喧嘩くらい、僕たちにとっては日常茶飯事だ。怒って家を飛び出しても、一晩経って気持ちが落ち着けば、彼は僕の元へと帰ってきてくれる。僕の前から去ったからと言って、そこまで心配する必要はなかった。
     しかし、翌日の朝になっても、ルチアーノは帰ってこなかった。起こしてくれる人がいなかったから、目を覚ましたのは太陽が高く登ってからになってしまう。重い身体を持ち上げて、ルチアーノの気配がないかを探す。僕たちの生活空間は全て確かめたが、部屋のどこにも彼の形跡はなかった。
     ここまで来ると、いよいよ不安になってくる。ルチアーノは、本当に僕に愛想を尽かしてしまったのだろうか。このままどこか知らないところで、別の人間とタッグを組んでいるのだろうか。そんなこと、少し考えるだけでも耐えられそうにない。
     自分の部屋に戻ると、僕は手早く支度を済ませた。デッキの入った鞄を手に取ると、家の外へと飛び出す。目的地は、ルチアーノの行動範囲である繁華街だ。そこに行けば、彼に会えるかもしれないと思った。
     人で溢れる繁華街を、ルチアーノを探しながら歩いていく。太陽は燦々と降り注いでいたが、僕の心は重かった。治安維持局の近くやアカデミアも探してみたが、ルチアーノの姿はどこにも見当たらない。いつもは向こうから声をかけてくるのに、今日は避けられているみたいだ。
    「あら、○○○じゃない」
     アカデミアの近くを歩いていると、背後から声をかけられた。振り返った先にいるのは、制服姿の龍可である。周囲に視線を向けてみたが、龍亞の姿はなかった。
    「久しぶりだね。今日は、一人なの?」
     尋ねると、龍可は優しく笑みを浮かべる。真っ直ぐに僕を見上げると、優しい声で答えた。
    「龍亞は、補習で居残りしてるの。先に帰ってって言われたから、これから帰るところよ」
     そういえば、今日は平日のど真ん中だった。学校に通わなくなってからというもの、曜日感覚が一切無くなっている。彼女に言われるまで、少しも気がつかなかった。
    「そうなんだ。龍亞も大変そうだね」
     答えると、龍可は不思議そうに首を傾げた。気遣うような表情を浮かべると、僕の顔に視線を向ける。
    「どうかしたの? 少し、顔色が悪いみたいだけど」
     やはり、龍可の観察眼は鋭かった。僕が平静を装っていることくらい、彼女にはお見通しのようである。隠しても仕方ないから、素直に認めることにした。
    「うん。ちょっと、悩んでることがあって」
     僕の返事を聞くと、龍可は心配そうに僕の顔を覗き込んだ。そこに女性らしい気遣いを感じて、少しだけドキリとしてしまった。しばらく会わないうちに、龍可もかなり大人っぽくなった気がする。子供の成長というものは、本当に早いものだ。
    「そう。わたしでいいなら、話を聞かせてほしいな」
     龍可の提案を、僕は少し迷ってから受け入れた。僕一人で考えていても、何も解決策は見つからないのだ。それなら、誰かに聞いてもらった方が、心も楽になるだろう。

     公園のベンチに歩み寄ると、僕はジュースの紙コップを渡した。既に腰を下ろしていた龍可が、にこやかな笑顔でそれを受け取る。わざわざ時間を取ってもらうからと思って、僕からジュースの差し入れを提案したのだ。彼女も断らなかったから、僕がまとめて買いに行った。
    「ありがとう」
     ここでお礼を言われると、なんだか変な感じがする。ルチアーノだったら、絶対にお礼なんか言わないのだ。さも当然と言った様子で受け取って、僕が腰を下ろす前に飲み始める。……ここで彼を思い出してしまうことに、染み付いた習慣を感じた。
    「それで、何があったの? 誰にも言わないから、話してくれないかしら」
     僕が腰を下ろすと、龍可は様子を窺うようにこちらを見た。相当心配しているようで、こちらを見る瞳は不安そうに揺らいでいる。僕の不安は、そんなに顔に出ているだろうか。自分ではあまり分からない。
    「ちょっと、友達と喧嘩しちゃったんだ。僕が余計なことを言っちゃって、怒らせちゃった。今は、どうやって仲直りするかを考えてるところ」
     答えると、龍可は少しだけ口角を上げた。重大事件じゃないと分かって、少し安心したのだろう。端から見たら、こんなのは子供同士の喧嘩でしかない。
    「そう。○○○も、喧嘩することがあるのね。子供と遊ぶのは上手なんだと思ってた」
    「そんなことないよ。大人げなく喧嘩しちゃうこともあるし、大人ぶりすぎて怒らせちゃうこともあるんだ。昔は、僕だって子供だったはずなのにね」
     僕の語る言葉は、少し自嘲的になってしまう。幼い頃の僕は、自分は偉そうな大人にはならないと思っていた。それなのに、今はこうしてルチアーノを怒らせている。幼い自分の思い上がりが、少し恥ずかしかった。
     龍可は、黙ったままジュースに口をつけているしばらくの間を開けると、彼女は不意にこちらを向いた。
    「ねえ、その件について、もっと詳しく教えてくれないかしら。わたしなら、力になれるかもしれないわ」
    「そうだね。子供のことは、子供に聞くのが一番だ」
     彼女に誘導されるままに、僕は昨日の出来事を話す。相手がルチアーノであるということは、彼女には秘密にした。僕がこんな話をしていたと知ったら、彼は怒るだろう。もしかしたら、二度と口を聞いてくれなくなるかもしれない。
     僕の話を聞くと、龍可はにこりと笑みを浮かべた。女の子らしい笑顔で僕を見上げると、からかうような声色で言う。
    「○○○は、優しさが空回りしてるのね。そういうときは、そっとしといてあげるべきなのよ」
     龍可にまで言われてしまって、僕は羞恥に頭をかいた。僕の対応は、子供にも分かるほどの悪手だったらしい。いや、子供だからこそ、ルチアーノの気持ちが分かるのだろう。いつの間にか、僕はそんなことすら分からなくなってしまった。
    「やっぱり、そうなんだね」
    「その子は、負けたことに悔しい思いをしていたのでしょう。カードを引けなかったことが悔しくて、どうにも出来なかったことが悲しくて、きっと泣きそうになっていたと思うわ。そんなときに励まされると、自分の失敗を掘り返されてる気持ちになるの。だから、○○○の前から去ったのよ」
    「そうなんだ……」
     諭すように続けられる言葉を、僕は素直に聞いていた。彼女の話を聞いていると、本当にそうであったように思える。それこそ、ルチアーノが聞いたら怒り出しそうな内容だ。彼は子供のような感性を持っているけど、決してそれを認めたがらないのだから。
    「次に会った時には、この事は言わないようにしてあげて。そうすれば、いつものように接してくれると思うから」
    「ありがとう。そうしてみるよ」
     お礼を告げると、僕は手元のコップを口に運んだ。ガラガラと氷の音を鳴らしながら、中の液体を吸い上げる。冷たくて甘い感触は、僕の心を落ち着かせてくれた。
     しばらくジュースを飲んでいるうちに、ふと、疑問が湧き上がってきた。どうして、龍可はこんなに的確なアドバイスができるのだろう。彼女は女の子だから、これは実体験ではないはずだ。どこでこの事を知ったのか、単純に疑問だった。
    「あのさ、ひとつ聞いていい?」
     尋ねると、彼女はこちらに視線を向けた。ストローから口を離すと、不思議そうに尋ね返す。
    「どうしたの?」
    「どうして、龍可は男の子の行動に詳しいの?」
     僕の問いを聞くと、彼女は含むように笑い声を上げた。くすくすと笑い声を上げながら、おかしそうな様子で僕を見上げる。
    「当たり前でしょう。わたしは、ずっと負けず嫌いな男の子と一緒にいるんだもの」
     その言葉で、僕はようやく気がついた。龍可が語っているのは、紛れもなく実体験なのだと。しかし、それは男の子の方ではなくて、男の子をフォローする身内の視点だ。彼女が見てきたのは、紛れもなく双子の兄の姿だろう。
    「なるほど……」
     僕が納得していると、今度は彼女が声をかけてきた。
    「ねえ、私からも聞いていい?」
    「どうしたの?」
     質問を投げ掛けられ、今度は僕が同じ反応を返す。こちらから問いかけた手前、断ることはできなかった。
    「今の話って、ルチアーノくんのこと?」
     衝撃的な発言が飛び出して、僕はジュースを吹き出しそうになってしまった。慌てて平静を装って、口の中のものを飲み込む。
    「どうして、そう思ったの?」
     慌てながら返した言葉は、案の定上ずってしまった。こんな態度を取っていたら、動揺していることがバレバレだ。案の定、龍可にも伝わったようで、納得したような笑みを浮かべていた。
    「そうだと思ったのよ。○○○が親しくしてる男の子で、負けず嫌いな子はルチアーノくんだけだもの。ルチアーノくんは、ちょっと龍亞に似てるから」
     穏やかな微笑みを浮かべたまま、龍可はそんなことを言う。そこまで観察していたとは、全くの予想外だった。
     残りのジュースを飲み干すと、龍可は手元の時計に視線を向ける。慌てたように立ち上がると、くるりとこちらを振り向いた。
    「もう、こんな時間。わたしは、そろそろ帰らなくちゃ」
    「じゃあ、ごみは僕がもらうよ」
     手を差し出すと、龍可は空になったカップを差し出した。片手で受け取って、一度ベンチの隅に立てる。中にはまだ氷が入っているから、倒したりしたら大変だ。カップと格闘している僕に、龍可が上から声をかける。
    「ありがとう。またね」
     去っていく後ろ姿を眺めながら、僕はぼんやりと考えていた。ルチアーノは、僕の元に帰ってきてくれるのだろうか。帰ってきてくれたとして、ちゃんと話ができるだろうか。我ながら、あまり自信を持てなかった。

     家に帰ると、リビングに明かりがついていた。カーテンの締まっていない窓から、眩い光が溢れだしている。少し無防備なこのきらめきは、ルチアーノが帰宅している証だった。
     玄関の扉を開けると、僕は小走りで室内へと入る。リビングに駆け込むと、ソファに座っているルチアーノの姿が見えた。彼は首をこちらに向けると、冷たい声でこう言った。
    「遅かったな。何してたんだ?」
     冷徹な彼の態度に、僕は一瞬面食らってしまう。帰って来たとは言っても、まだ機嫌は治ってないのかもしれない。慎重に言葉を選びながら、伝えたいことを選んでいく。
    「ちょっと、町に行ってたんだ。ルチアーノを探してたんだよ」
     僕の言葉を聞くと、ルチアーノは冷たい瞳で僕を見つめる。おもむろに立ち上がると、目の前まで距離を詰めてきた。
    「嘘ばっかり。君は、アカデミアの近くでシグナーと話してたんだろ。堂々と浮気をするなんて、いい度胸だよな」
     粘つくような声で言われ、僕は笑みを浮かべそうになってしまう。何だかんだ言いながらも、ルチアーノは僕の様子を見ていたのだ。僕が龍可と話をしてることを知って、浮気じゃないかと心配している。
    「違うよ。ちょっと、相談をしてたんだ。男の子と付き合うには、どう振る舞えばいいかって」
    「はあ? 付き合い方って、恋愛相談か何かか? 君は、そんな女々しいことをするやつだったんだな」
     冷めた瞳で僕を見ながら、ルチアーノは湿った声を返す。相変わらず機嫌はよくないようだが、さっきほど冷たい声ではない。少し安心していると、ルチアーノの追撃が飛んできた。
    「それで、相手は何て言ってたんだよ。僕のこと、話してたんじゃないのか?」
     こうして正面から問い詰められると、僕は答えに困ってしまう。ルチアーノの話をしていたのは確かだが、その内容は彼には言いづらいことなのである。龍亞に似て負けず嫌いだって言ってたなんて、とてもじゃないけど口にできない。
     僕が口ごもると、彼は再び機嫌を悪くした。トゲのある空気を醸し出すと、低い声で囁く。
    「なんだよ。やっぱり疚しいことがあるんじゃないか」
    「違うって! ルチアーノは負けず嫌いだって話をしてたの!」
     これ以上疑われるのは嫌だったから、僕は正面から言葉を返した。恐る恐る反応を見るが、ルチアーノに怒ったような様子はない。こちらに顔を向けると、静かな声で言った。
    「ふーん。シグナーは、そんなことを言ってたんだな」
     彼らしくない態度に、僕は一抹の不安を感じてしまう。彼が大人しくしているときは、大抵何かを企んでいるのだ。もしかしたら、もう一度龍可に近づくつもりなのかもしれない。
    「ルチアーノ?」
     不安になって尋ねると、彼はにこりと笑みを浮かべた。作り物のような笑みを張り付けながら、不自然な態度で口を開く。
    「まあ、浮気じゃないってことは認めてやるよ。それに、多少は僕も悪かったしな」
     またしても、彼らしくない反応だ。これは、確実に何かを企んでいる。後で遊星に連絡しておこうと、僕は心の隅で思うのだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💕💕💕💖💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works