季節の変わり目。気温差に体がついていけず風邪をひいた。もうこの季節はどうしようもないのだ。昨日までは30度あった外気温が今日は15度。体には自身はなく筋肉もあまりない。防御力なんてほぼないようなもの。
「少しは運動したらどうだ?オレがコーチングするぞ」
とは言ってくれるものの、住む世界が違う気がして断ってしまう。軽いウォーキングはしてるんだけど、多分私の体には足りないのだろう。
そうして私はベッドに横たわっている。今回の風邪はそこまで酷くない。微熱と頭痛、少し喉が痛い程度でまだかわいいほう。薬飲んで寝て安静にしてれば治る。食欲は喉が痛いのを除けば普通に食べれる。
体調悪い時の時間の流れといったら無情にも早いもので寝ていればあっという間に過ぎていってしまう。せっかくフィンクスも旅団の用事がなくて休みなのに暇な時間を過ごさせてしまっている。
「ごめんね、せっかくの休みなのに…どこか行ってきてもいいからね」
「別にいいよ。お前のことが心配だから」
「……ありがと」
このやりとりも2回目だ。うんざりされる。次目覚める時はお昼かな。頭に置かれた氷枕によって強制シャットダウンをされる。
…………
「ん、んん……おはよ、今何時…?」
「おっ、はよ。今13時過ぎだよ、メシ食うか?」
「…うん。お腹空いた。フィンクスが作るの?」
「病人に作らせるわけにはいかねーだろ」
「あははっ…フィンクスは見た目に反してそういうところあるよね」
「っ、どーいうことだよ…寝てな、できたら起こしてやるから」
「ありがと」
起きたら横で1週間前にクロロが私に貸した本を読んでいるフィンクスがいた。そして私が少し弱ってる以外は他愛のないいつもの会話。おまじないかのように少しぎこちなく額にキスをして部屋から少し早足で出ていく。耳赤くしてて愛おしいな。そのおまじないも、熱が下がったのかすっきり起きてしまったせいでもう一度寝るところにはいかなかった。携帯端末を開き連絡の確認をする。友人から何通か心配の連絡が来ている。体調崩してるって教えてないシャルナークやフェイタン、旅団の皆からも連絡が来てる。フィンクスが話したのかな。流石に旅団の皆への返信は多い。半分定型文になりつつ返していく。マチとパクノダとシズクはお見舞いに来たらしい。フルーツゼリーと牛乳と今日発売の新刊を置いていってくれたらしい。
「愛されてるなぁ…」
「誰にだ?」
「わわっ!?できたの??」
「おう、……で、誰に愛されてんだ?」
「旅団の皆と友達から…」
「……、よかったな」
ポツリと静かな空間に残したはずの言葉を拾ったフィンクスは部屋の中に香ばしい匂いを運んできた。質問に答えると目を逸らして明後日の方向を見た。何かおかしいこと言ったかな。
「わぁい、フィンクスのチャーハンだ〜!」
「いやお前はこっちだ」
「雑炊も作れたんだ……」
「ほぼインスタントだけどこっちの方が食えるだろ」
「……フィンクスのチャーハン…」
「そんな顔しなくてもいつでも作ってやるよ」
基本私が料理を作ってはいるけど、たまに作ってもらう時もある。フィンクスの得意料理はチャーハン。少し大きめに切られたチャーシューとアクセントのなるとが入っていて、味付けは醤油とゴマ油の至ってシンプルなチャーハン。これだけは本当に美味しい。他にも色々作ってくれたりするけどお店を出すならチャーハン一択なのだ。今日のお昼もチャーハンだと思っていたから少し残念な気持ちがある。ちょっといたずらしてみても神様は怒らないよね。
「雑炊熱い…ねえ、あーんしてよ」
「そりゃ熱いだろうよ…は、はぁ!?おま、」
「病人だから動けなーい」
「今は仮病だろ…さっき元気そうにはしゃいでただろ」
「あーんしてくれなきゃやだ」
「〜〜〜〜〜〜っ!!わかった」
ちょっとわがまま過ぎたかなと思ったけど了承してくれたみたい。器からひとくち分をすくいあげてふーふーと冷ましてくれている。私がそうさせたのだけど今更恥ずかしくなってきたなんて言えない。
「ん、あーん」
「……っ、あ、あーん」
「熱くねえか?」
「ん、……大丈夫」
「ほぼインスタントだけど味大丈夫か?」
「…っ!これ、なるととチャーシュー入ってる!」
「お、気付いたか。…や、その、つい癖でお前の分の具材切っちまって、流石に米とのバランスが悪くなるから入れさせてもらった、まずいか?」
「ううん!美味しい!チャーシューもなるともいつもより小さいサイズだし、食べやすいよ!流石フィンクスって感じ!」
「お、おう…っ!」
雑炊の中にチャーハンの具材が入ってるなんて誰も思わなかった。なんか得した気分になった。褒めちぎるとフィンクスは赤くした頬をかいてた。
「愛おしいなぁ…」
「…何がだよ」
「フィンクス」
「ばっ、お前さぁ……熱下がってねえんじゃねえのか……」
「下がりました〜さっき熱計ったら36.4℃で平熱でした〜」
「やっぱりさっきのは仮病じゃねえか…」
「バレちゃった」
「ったく…早く食っちまえよ、冷めんぞ」
「そうだね、あったかいうちに食べなきゃ」
顔を真っ赤にしてこっちをチラと見ては逸らしてを繰り返しながらチャーハンを食べ進めるフィンクス。言ったあとで恥ずかしくて目を合わせられない私。少しぎこちない空気がそこにいた。お互い食べ終わってフィンクスは食器を片しにキッチンへ向かった。私はまた携帯端末で連絡の確認をする。少ししたらフィンクスが何か手を持って戻ってきた。
「……プリン!これ私の好きなやつだ〜っ!」
「お前が寝てる間にそこで買ってきた」
「ふふ、ありがと〜っ」
「……その、お前のこと1番愛してんのオレだからな」
「え?……あっ!あれ気にしてたの!?」
「っるせ……男が嫉妬すんのダセェのは分かってるけど無理だったわ……」
「フィンクスはかっこいいよ!」
「いやそういう意味じゃないって…あーっ、もう…一旦黙ってくれ」
顎と後頭部を持たれグッと黙らせるようにキスをされる。
「……明日、埋め合わせに付き合ってもらうからな」