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    mctk2kamo10

    @mctk2kamo10

    道タケと牙崎漣
    ぴくしぶからの一時移行先として利用

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    mctk2kamo10

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    2019年10月のミラフェスにアルテP相方と合同誌出したときのやつ
    腐じゃないよ でもレンキザキのオタクとして「弟子がわちゃわちゃしてたられんれも嬉しいよね ね」の気持ちで書いたからそういう意味で男同士がわちゃわちゃしている

    弟子トリオの話 ただの水がこんなにも美味しいものだと知ったのはそういえばアイドルを始めてからかもしれない。麗はそんな感慨とともにキャップを閉じた。体を動かし、歌い、金のためではなく自分のために表現することの心地良い疲労に水分が染みる。特にTHE虎牙道と一緒だと、道流が大量に軽食を持ってきて、Altessimoにも分けてくれるので(と言ってももらうのは一割もない。三人とも本当によく食べる)、いつまでも動いていたいような気持ちになる。シンプルな塩にぎりひとつとボトル一本の水、これだけであまりにも満たされてしまうのだ。
     水分補給のタイミングでしみじみと「美味しい」と呟いたとき、圭はそのわずかな声をたしかに聴きとって「そうだね」と微笑んでくれた。
     ただし今この時、その圭はスタジオの片隅で寝息を立てている。公式稽古は終了しているがプロデューサーが自主練用にとスタジオの利用予定を押さえてくれているのでメインキャスト五人だけ残って歌とアクションのどちらもを詰めるつもりでいた。――のだが。
     道流からの差入れを胃に収めた瞬間、圭は「これを消化するからもう少しだけ休むね」と笑って眠ってしまったのである。歌のスキルで最も優れる圭がこうなってはアクションしか練習するものもあるまい、と漣を見やれば、ほぼ同じ経緯で大の字になって眠っていた。圭との違いは食べた量と寝る姿勢くらいのものだろうか。
    「……、大河さん、これは」
    「いつものことだから気にしないでいい。起こすのも大変だし放っておくのが一番良いんだ。それより圭さんの方は」
    「ああ、それも気にしないでほしい。いつもこうなんだ。それに、起こすのも大変で」
     顔を見合わせて笑う。お互い気苦労するユニットメンバーを持ったようだ。
    「歌の練習は圭さんが起きてるときの方が良いよな。だったら俺は台詞の覚え直し、してくる」
    「ああ、今日の練習でも大河さんはところどころ、台詞が」
    「文字を読むの、苦手で」
     そうして苦笑したタケルが開いた台本には、彼らしい角ばった字で細かく書き込みがあった。主に漢字のふりがなと単語の意味、そして込める喜怒哀楽のメモのようだったが、彼が大切に読み込んでいることはわかる。
    「がんばっているんだな」
    「わからないところは辞書を引いたりもしてるんだが、頭がこんがらがっちまう」
    「読み合わせに付き合いたいところだが……わたしのC―13と、大河さんのA―31はこれといった会話シーンはなかったな」
    「ああ、でも麗さんがガンアクションの練習をするなら呼んでくれ。力になれることもあるはずだから」
    「あ、その件だが」
     ぱっと顔を上げ、道流の方に向く。
     奥で道流がタッパーを片付けながら楽しげにソロ曲の鼻歌をうたっていた。これの後に道流演じるA―7と麗演じるC―13のアクションシーンが入る。深紅と深青の最強がぶつかり合うこのシーンは作品のクライマックスとして位置づけられ、最高の見せ場になる。
     新しい音だ。それを奏でたくて、麗と圭のAltessimoはこの舞台に挑んでいる。
    「円城寺さん! 今からわたしと合わせてもらえないだろうか」
     腹に力を入れて、声を張る。道流はすぐさま振り向いて「いいぞ」と返事をくれた。荷物をまとめ、練習用ピストルを片手にすっと近づいてくる。
     改めて見ると大きな人だと思った。タケルと話しているときは視線の高さについて考えもしなかったが、道流とはどうしても見上げる形になって、簡単には目が合わないと思ってしまう。しかし道流は優しい目をこちらに向けてくれるし、威圧感はそう覚えない。人柄の良さが滲み出ている、と考えて、そういえば以前のミュージカルでもそんなことを言われていたことを思い出した。前回はひとりで随分と稽古を繰り返したようだが、今回はすでに問題なく冷徹な暗殺者を演じられている。道流はあのとき間違いなく成長したのだろうし、そのときそばにいれたことをユニット外の人間でも嬉しく思うのだ。
     お互いに少しずつ新しい音を響かせている、という証左だろうし、今回もそうでありたい。
    「牙崎さんにガンアクションについて指南してもらえたんだ。今日の稽古は演技面が中心だったから、成果を見せられなくて……殺陣の相手として、是非意見を聞きたい。大河さんも観客の気持ちで見てもらえると助かるのだが」
    「わかった」
    「自分と麗のシーンは大事に表現したいところだ、しっかり息を合わせていかないとな」
     ふたりが頷いてくれたのを確認して、麗もまた頷き返した。アクションに入る直前の台詞が圭演じるA―4になるのでタケルに頼めば快く引き受けてくれた。台本を片手にが壁沿いまで下がって真っ直ぐこちらを見つめてくる。
    「立ち位置いいか?」
    「ああ」
    「頼む」
    「よし。じゃあ……『もちろんさ。裏切り者の罪は死より重い。C―13、彼らを始末しろ』」
     圭の言葉遣いを真似たタケルの言葉をきっかけに、麗は地を蹴った。A―4の声が、言葉が、C―13を操る。A―4の意思をそのまま体に乗せてC―13はA―7に襲い掛かるのだ。
     A―7が一度は迎え入れるようにしながら力を跳ね返して、上手くC―13を弾き飛ばす。その力を受けて三連符で足音を立てて後ろへ。一拍も置かないうちにA―7が鋭い視線をこちらに向けている。
    「『クッ、人形か……! 聞いてくれ、死神! 組織のやり方は間違っている!』」
    「『他の敵は全滅、この子一人じゃ組織の脅威にはなり得ないはずだ』……ここから死神とファングのシーン。次は麗さんのタイミングで始めてくれ」
     タケルがA―31の台詞を読み上げて、状況説明に入る。数度の練習で覚えた二人の音を心の中で再生して、麗もまた大きく息を吸った。
     感情は、込めない。C―13は人形だからだ。それがかつての麗の音だったからだ。
    「『組織の敵を排除する。それだけがわたシの存在意義……覚悟シなさい』」
     その言葉にA―7の表情が歪む。冷徹な暗殺者という顔に押し込められた心が表れるのだ。声にも悔しさが滲んで、震え始める。
    「『やるしかないというのか……クロー、ファング! その子は死守するぞ!』」
     あとは漣に教わったアクションが続く。遠距離からの射撃になるので接触があるわけではない。しかしステップや重心のかけ方、表情に吐息、そういったものを表現して、人形が少しずつ自らの意思に目覚めていくラストへの伏線にする。
     得意の接近戦に持ち込もうとするA―7から逃げるように軽やかに走り、舞台の反対側からピストルを放つ。反動を受け止めて体を切り返し、向こうからの射撃を避けたらそのまま数発撃ち込む。BPMは140、少し速め。すべての音は無機質な金属のイメージ。スタッカートで鋭く、硬質的に。
     体勢を整えたら、目の前にいるA―7に向かってまた発砲。ここまでの弾はすべて逸れるか弾かれるかしているが、今度こそ外さないという意思を込めて相手を見据える。睨みつけるのではなく、ただ無表情で、ターゲティングをするのみだ。両手でピストルをしっかりと握り、トリガーを絞る。ここで台詞。息が上がっているのを悟らせぬ音で。
    「『そのまま動くな。死んだことにも気づかぬうちに殺シてあげまシょう』」
     この台詞のとき、きっとC―13は背後でA―4が微笑むのを感じているのだろう。C―13は人形である限りは彼に肯定してもらえるのだ。しかしA―7はそこを揺さぶってくる。
    「『人形、心を思い出せ。俺たちは暗殺者だが、心まで凍らせてはいけない!』」
    「『わたシには凍らせる心すらありません。わたシは、A―4の最高傑作ですから』」
    「『くそっ……』」
     この台詞をきっかけにしてBGMが流れ始めたら歌パートだ。A―7とC―13のやりとりを掛け合いの歌で表現しながら軽い殺陣も入るが、歌がメインなのでそう激しい動きはない。BGMも流れないのではっきりアクションと呼べるのはここまでだろうか。ちらりと道流を見ると、うんと頷いて演技を解いた。「タケル!」と朗らかに笑いながら彼を呼び寄せる。
    「どうだった」
    「すげえ良かった。円城寺さんはいつも通りさすがだし、麗さんは本当に前回の稽古よりずっと良くなってる」
    「ああ、よかった! 牙崎さんのおかげだ」
     麗の視線に合わせて全員が漣の方を振り返る。当の漣は相変わらず気持ちよさそうに眠っているし、一切目覚める気配がない。タケルの顔がわかりやすく歪んだ。
    「アイツ、物を教えるなんて出来たんだな。俺の時は教えるなんてものじゃなかったが」
    「大河さんも牙崎さんから何か教わったことがあったのか」
    「ああ、Cybernetics Warsのときに……本当に説明が下手で、円城寺さんがいないと何もわからなかった。なのにアイツときたら弟子だのなんだの」
    「それ、私も言われたぞ。教えるからにはオレ様の弟子になるんだ、と」
     横柄なところのある彼らしい行動は、前から変わっていないようだ。二人で笑い声を重ねたところに道流もまた声を重ねる。
    「漣は弟子がたくさんいるんだな! 自分も今は漣の弟子だ。ふたりの弟弟子になるな」
    「わたしたち三人は兄弟弟子というわけだな。大河さんが兄弟子か」
    「そうか」
     そこで言葉を区切って、タケルは一呼吸ののちに「俺がお兄ちゃんか」と小さく呟いた。返事を求めているふうではなかったので、麗がそのまま黙っていると道流の方が動いた。その大きな手で、そっと背中を叩く。
    「いい舞台にしような」
    「……もちろんだ、円城寺さん」
     タケルの笑みが柔らかく綻んで、道流を見上げる。THE虎牙道にはTHE虎牙道で、麗にはわからない事情があるのだろう。そこに踏み込む気はないが、少し寂しい気もするのも確かだ。自分の方はと圭を見るが、彼も彼で相変わらず気持ちよさそうに眠っている。
     話題の横暴な師匠と、自分の相方の姿は眠るあまりにも対照的だ。
    「……THE虎牙道と、Altessimoはとても正反対のユニットだから」
     思いつく言葉を、そのまま並べていく。異国の血が強いのか、眠る二人の髪色は金と銀。今会話している麗たち三人も似ているわけではない。麗とタケルは背が同じだが、標準的な体系の麗と筋肉質なタケルとではその差は一目瞭然だ。得意分野だって歌とダンスで違うし、二人とも道流のような包容力や温かさに遠く及ばない。
     それでも、三度同じ作品を共にして、その全てで少しずつ良い方へと進んできた。
    「一緒にいると、いつも新しい音が聞こえてくる気がするんだ。戦国映画村の時は、都築さんのメロディがとても心強くて。Altessimoの音楽が少し変わった。――きっとTHE虎牙道もそうだったのではないかと、先日のミュージカルで思った。THE虎牙道も変わったんだ。前に進んだ。そういった進化を、わたしたちは新しい音と呼んで、歓迎している」
     うん、と頷いてくれる。ふたりともだ。
    「今度のミュージカルもがんばりたい。Altessimoの新しい音をファンのみんなに知ってほしい。牙崎さんに教わったことだってAltessimoの、わたしの新しい音だ」
     返事は特に必要はない、と思った。「いい舞台にしような」というその声色から察するに麗が語り掛けた二人はもうとっくにそんな覚悟を決めていただろうし、きっと漣だってそうだろう。そしてそれはTHE虎牙道の中でのみ共有されるべきことだ。Altessimoの麗が踏み込むものではない。
     だからタケルが笑って「アイツがものを教えられるなんていまだに信じられない」と言ったときも、麗だって笑い返せた。
    「すごく感覚的な教え方をするな。昔気質の職人然としている、というべきか。見て学べ、見て盗めといった姿勢だ」
    「技術は確かにあるんだがなあ。言葉が足りていないのが漣のもどかしいところだな」
    「ああ、しかし案外粘り強いところもあるようだ。わたしの練習にずっと付き合ってくれて」
    「アイツが……? こうやってすぐ練習すっぽかして寝るのに」
    「はは、むらっ気があるのも漣だなあ。ところでタケル、タケルは兄弟子として弟弟子に言うことはないか」
     会話が一段落して、道流が話を戻した。タケルは驚いたように目を見開いて、そして正解を探すようにゆっくりと言葉を紡ぐ。
    「麗さんもかなり良くなってるけど、円城寺さん、少し相手に合わせようとしすぎだ。リズミカル、だとは思うが、THE虎牙道らしい勢いが削がれている、ようにも、思う」
    「ああ、そうだな。自分もそこが気になっていた」
     つまり手加減をされていた、ということだろうか。麗がじっと道流を見上げると彼は「いや」と軽く手を振った。
    「麗も圭も、アクションの経験がほとんどないだろう。対してこちらは経験が多い方だ。それに自分は元とは言え、武道ではプロだからな。そうとなれば相手のやりやすいように合わせてやるべきかと思って」
    「そういうことか。実際それでわたしは助かっているが、THE虎牙道の良さが削がれているなら考え物だな」
    「ああ、だから、一度俺相手に本気で来てくれ。円城寺さん」
     タケルの真っ直ぐな視線が道流をとらえた。
    「いきなり麗さんにアクションを変えろっていうのも厳しい話だと思うし、円城寺さんも俺が相手なら慣れてるだろ。麗さんと俺は身長が変わらないし、アクションは今見て覚えたからそう間違ったことはしないと思う」
    「み、見ただけで覚えたってそんなこと……」
    「任せてくれ。十の台詞を覚えるより百のアクションを覚える方が簡単だ」
     自信満々に言い切るタケルを、道流が見つめ返した。しばらく無言でそうして、どこかで覚悟が決まったのかひとつ頷く。
    「わかった。麗もお手本を見るようなつもりでタケルの動きに注意してくれ」
     今度は麗が下がって、舞台分の場所を「セブン」と「人形のふりをしたクロー」に譲った。麗相手よりも気兼ねなく出来るからか、道流はピストルを片手に、すでに役の雰囲気に入っている。演技仕事が多いだけのことはあるか。その冷徹な表情を見上げたタケルが微笑んだ。
    「円城寺さんとできるの、嬉しい」
    「……そうだな。『俺』もだ」
    「……、ああ。『僕』のこと、殺す気でいいぜ」
     その言葉だけでおそらく二人は何かを通じ合わせたのだろう。視線が絡んだかと思えば、もうタケルが地を蹴っていた。A―7に飛び掛かり、首を弾こうとする。この二人の間にアクション開始の台詞さえ、要らなかったのだ。
     A―7はその襲撃を受け止めもせず力任せに振り切った。かなりの力だったはずだがA―31はよろめきもせず後ろへ。本来はここでA―4とA―30の台詞が入るが、そういった説明を麗がすることもできなかった。
     体勢を整えたA―31の表情が少しだけ歪むように笑った。本当に小さな声で、一言だけ呟く。
    「『セブン』」
     言い終わると同時にA―31は人形のような無表情に戻った。ぱっとピストルを構え、発砲。反動だけ受け流してすぐさま次の行動に移る。視線がA―7から離れない。否、視線だけでなく聴覚も、肌の感触もすべてA―7の動きに反応できるように意識が向いているのだろう。ステップも発砲のタイミングもすべて狙ったかのようにA―7に合わせている。すさまじいスピードで流れているのに、テンポが安定しない。緩急の切り替えが繰り返され、一発一発が読めないようになっている。
     A―31の動きが軽く、そして素早いせいでA―7が近づけないまま最後の撃ち合いに入ってしまう。互いの弾を避け合う緊迫感が麗にも伝わってくる。発砲音など鳴らしていないのに、聞こえるのだ。足音と呼吸のすべてに、殺し合う二人の情景が詰まっている。
     ぴっと二人の腕が真っ直ぐに伸びて、お互いを貫くように交差する。A―7が呼吸。A―31は息のひとつも上がっていない。
    「……はは、さすがだな、『クロー』は」
     A―7――もしくは道流が笑った。もうアクションは終わりらしいが、演技が抜けきっていない。
    「『セブン』こそ。『僕』はどうだった」
    「良かったぞ! もしこの話の続編があればセブンとクローや、セブンとファングで戦うのもいいかもしれないな」
    「面白そうだな。俺も円城寺さんと本気のアクションをやってみたい」
     互いに褒め合う二人を前にして、麗は今の気持ちをどう表現するか悩んだ末に、そっと拍手を送った。小さく、しかしながら強い音で。
    「ブラボー。すごい。大河さんも、円城寺さんもすごい……音が、力強くて。それでいてリズミカルで美しい。余計なものがない音だ、ただただ力がこもっていて純度が高い」
     感じたことをそのまま並べ伝えると道流とタケルが顔を見合わせ微笑み、照れたように赤くなる。
    「はは、円城寺さん。音で褒められたのはさすがに初めてだな」
    「そうだな。少し照れてしまう」
     道流が言い切ってこの話題は終わりになったらしい。タケルが麗の隣に立ち「えっと」と切り出す。
    「実際にやってみて少しわかった。麗さん、アクションを良くするために俺からも教えられることがあると思う。タイミングの合わせ方は監督に相談だが……体の使い方とかなら」
    「ああ、よろしく頼む! 新しい音を響かせたいんだ。それはTHE虎牙道もそうだろうが、アクションばかりは手伝ってもらいたい」
    「もちろんだ、俺にできることなら全力で行く。例えば最初の飛び掛かるところだが体をこう……えーと、すまない、円城寺さん」
     麗の言葉を受けてタケルが実演しようとするが、言葉が出てこないらしい。その姿は漣によく似ていて、タケルもそうだと自覚したのか思うより苦々しい顔をして道流を見上げた。道流はなんら気にすることなくじっとタケルを見つめ返し言葉として表現しなおしてくれる。
    「ああ、つまり脚力だけで飛ぶんだな……だがタケル、人形はもう少ししなやかな動きをするから、下手に動きを重くするより高く飛ばして軽やかに見せた方が良い」
    「それなら、こうか?」
     軽く膝を曲げて、反動を用いつつ高く跳ね上がったタケルが目の前の道流に飛び掛かり、それを道流も難なく弾いた。やはりよろめきもせず着地したタケルが麗を見て、道流を見返す。
    「麗さん、今の感じ」
    「ああ、タケルが動いた感じだ。跳ねるイメージで屈伸を使う。着地は自分が調整するからまずは軽く当たってみよう」
    「マット、こっち引っ張ってくる」
    「ありがとう、頼む」
     ずいぶんと頼もしい兄弟子と弟弟子を持ったらしい。ふたりを見つめていると感じる胸の高鳴りは、きっと新しい音の前奏だろう。麗は一度目を閉じて呼吸し、マットの上に立った。
     この練習が終わったら、自分の大切な相方と、自分たちの師匠を起こして男道らーめんに行きたい、と言ってみようか。ひとり笑って、麗は高く飛び上がった。
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