Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    mctk2kamo10

    @mctk2kamo10

    道タケと牙崎漣
    ぴくしぶからの一時移行先として利用

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 23

    mctk2kamo10

    ☆quiet follow

    そしてこちらが2018年みちる誕で書いた道タケ

    2018年(息を飲む)

    #腐向け
    Rot
    #エムマス【腐】
    #道タケ

    2018みちる誕道タケ 去年、だって、めちゃくちゃ喜んでくれただろ。そう言って彼が台所に立ってくれた時は正直、ヒヤヒヤした。あまり過去を語りたがらない彼が「これでも、施設時代は回り番で料理係してたから」とまで呟いて、自分を安心させようとしてくれたのもわかっているが。それでも、だ。
     そわそわしながら見守り続けて、なんとなくひと段落着いてきたことだけ察して、やっと息を吐いたのが今さっき。自分の空気が変わったことを察したのか、ふと振り返ってタケルは笑った。
    「な、大丈夫だっただろ。出来ることは少ないけど、慣れてはいるんだ」
    「そっか……いやあ、でも使ったことない台所だろ、わかりづらくなかったか」
    「いつも円城寺さんが作ってくれるの、見てたから。あ、円城寺さん、ラップ……と、チンして良い皿、貸してくれ。深めのやつ」
    「ああ、それなら……」
     言われた通り、戸棚から耐熱皿を取り出し、調味料棚からはラップを取り出す。その間に彼は手を洗っており、拭き終わるのを待ってそれらを渡せば、皿には冷凍のかぼちゃが放り込まれた。ラップがふんわりかけられ、電子レンジの中へ。解凍ボタンが押される。すぐさまタケルの体はコンロに戻り、フライパンを火にかけ、温める。さらに隣のコンロには水を張った鍋を。粉末だしを放り込んでそのまま放置し、フライパンの方に手をかざして温度を測り、うん、と頷いて、フライ返しを使いながらハンバーグの種をふたつ並べた。少し形が崩れたようで、表情が歪む。
    「ハンバーグ、好きなのか」
     そういえばロケ弁やケータリングに入っていると彼は喜んでいたような気がする。そう思って尋ねてみれば、タケルはフライパンを見つめながら「いや」と答えてくれた。
    「俺も、好きだけど。一番は、弟と妹が、好きだったから」
    「そうか」
    「うん。ハンバーグなんてめったに出なかったけど、出たら、嬉しそうにしてた。それに小学校を卒業する少し前の調理実習が、ハンバーグで。料理とかレシピとか、全然わかんねえけど、作り方覚えたらきっとあいつらも喜ぶと思って、これだけはちゃんと覚えてた。……すぐに別れることになったから、作ってはやれなかったけど……今でもハンバーグだけは、作れる」
    「そうだったんだな」
    「ああ、でもさすがに、一度信玄さんに教わり直してきたんだ。だから不味くはない、と思う」
     ハンバーグの縁が変色してきたのを確認して、ひっくり返す。もとは歪んでいたのがさらに歪んだ。彼の表情がもっと険しくなり、遠くでピピッ、と軽快な電子音が聞こえてきた。「チンしたやつ」とタケルは呟いて、もうひとつも慌ててひっくり返してしまうと、蓋をしてかぼちゃを迎えに行く。
     ほくほくと湯気を立てるかぼちゃを見て、タケルの機嫌が少し戻った。フォークを取り出して、剥いてあったゆでたまごを入れて全部潰してしまい、さらにスライスしていた玉ねぎとハム、マヨネーズと塩胡椒。軽く混ぜて「円城寺さん、味見」とフォークを向けてきた。
    「いつもと逆だな」
    「こういうの、してみたかったんだ」
     そうやって微笑む彼の手首を掴んで、フォークを迎えに行く。口に含んでみれば、塩が少しキツイかもな、と思うくらいの味にはまとまっている。
    「ちょうどいいぞ。そろそろハンバーグも出来上がってるんじゃないか」
    「あ、そうかも」
     出来上がったかぼちゃサラダはそのまま作業台に置かれ、蓋を開けて見ればハンバーグ独特の肉と香辛料のかおりが一気に広がる。
    「円城寺さん、皿! どれ使えばいい?」
    「それならこれ使ってくれ」
    「ありがとう。あと味噌汁作るから、お椀貸してほしい、あと炊飯器がもうすぐ鳴るはず……」
    「わかった、出しとくからタケルは飯作っててくれ」
     くしゃりと髪を撫で、ハンバーグが移された皿を受け取った。照れたように顔が蕩けたを見つめ返して、下手にキスなんかする前に、とちゃぶ台へ向かった。ふたりきりだと妙に気が緩んでしまう。まだ火は付いていたし、タケルも自分が料理するところを見ていたとは言えあそこで何か作るのは初めてだ。慌てさせるようなことは、だめだ。うん。とりあえずお椀と箸、お茶にコップと食事に必要なものを出してくることにする。
     タケルは沸騰したお湯に豆腐と油揚げをぼちゃぼちゃと突っ込んで(水切りも湯抜きもしていない気がするが、変に突っ込むのも野暮だと口を噤んだ)、火を止め、味噌を突っ込んでいる。そこで炊飯器が鳴って、炊きあがりを示してくれた。
    「自分がご飯をよそおう」
    「すまない。こっちは味噌汁、注いでおく」
     お椀ふたつ。おたまで移して、さらにネギを散らす。そこまで見届けてからこちらも炊きたての白いご飯をお茶碗によそった。あんまりにも頻繁にご飯に呼ぶから、とタケル用に買った青いお茶碗。自分のは同じタイミングで黄色に変え、赤い漣用も買った。おもちゃみたいな色合いがこの部屋には似つかわしくないけれど、自分たちにぴったりで結構気に入っている。箸も、同じく。
     かぼちゃのサラダもより分けて、すべてちゃぶ台に並べる。
    「ソースまでは作れないから、ケチャップで許してくれ」
    「十分だよ。すでに泣きそう」
    「円城寺さんは、大袈裟だな。……でも、ちゃんとお祝い出来て良かった」
     座布団に腰を下ろし、タケルが呟く。
    「きっと明日はみんなにお祝いされるだろうから……俺も、同じユニットメンバーとして贈り直すつもりだし。でも、今日のうちに個人的なお祝い、しておきたかったんだ。付き合ってる人として。アイツにも今日はここに来ないように頼んである」
     えっと、それは、つまり? そういうお誘いということで? いいのだろうか? 待て落ち着こう、タケルはまだ未成年で、まだそんなことはしたこともなくて。まだもう少し、大事にしているつもりだったから。
     混乱を極める自分を前に、しかしタケルは恥じらった様子もなく「食べてくれ」と微笑んでくる。もうそれ「俺を食べてくれ」と言っているようにしか聞こえない、なんて本人に言えるはずもなく、生唾を飲み込んで、意識を逸らすように大きく音を立てて手を合わせた。
    「いただきます!」
    「召し上がれ。不味かったら、俺が全部食うから」
     黄色の飾りが埋め込まれた箸を取って、真っ直ぐ、ハンバーグに伸ばす。肉厚でありながらふんわりと押し返され、切り開けば肉汁が垂れる。一欠片、口に入れるだけで肉の旨味と玉ねぎの甘味が一気に口内を満たした。
    「う、美味い」
    「良かった。……はは、やっぱり自分の作ったものを食べてもらうの、緊張するな。円城寺さん、いつもありがとう」
     ハンバーグをぐっと飲み込んで、とりあえず先程の発言はやっぱりそういうお誘いではなかったことを察する。良かった。変に先走らないで。「タケルも食べろ、冷めるぞ」と促しいつも通りの、しかしいつもよりずっと嬉しい食事に戻る。
     明日は誕生日だった。日付が変わる瞬間も隣にいてくれるのは、もう確かなようだから。それだけで十分だ。まだ、今は。
     それにしても、と前置きをひとつして、かぼちゃサラダを飲み込んで話し始める。
    「自分も、タケルが喜ぶかと思って、誠司のハンバーグ教室に参加してきたんだが……」
    「あっ、そうなのか? だから信玄さん、変に笑ってたのか」
     今度何か誠司にお礼しに行くか。そう言ってみれば、彼も頷いた。そうして食事に戻る。

     日付が変わるまで、残り数時間。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💞🙏💞❤❤❤❤❤👏💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works