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    ##シャンウタ

    小さな島のデーア 元国王と九歳の子が壊れた島で二人ぽっちで生きていくにはどうしたら良かったのだろう――

    「ウタ、今日は風にあたってみるかい?」
     硬い地面を全力で駆けたためにウタの足の裏へできた怪我が完全に治った頃、ゴードンはカーテンを開けて外を指さした。海はキラキラと輝きとても良い天気で、遠くにカモメも鳴いている。
     ちらりと窓の外を見たウタは光を嫌うように目を伏せると「いらない」と布団の中へと潜ってしまった。まだ外の景色はあの日のことを思い出して辛いのかもしれない。
    「そうだ、子守歌はどうだろう……」
     赤髪海賊団と別れたあの日まではあんなに楽しそうに歌っていたというのに、めっきり歌わなくなってしまったウタに、ゴードンは音楽の存在を思い出してもらおうと声をかける。
     なるべく優しく、寄り添うように子守歌を歌うと「ゴードンさん、上手だね」と少しだけ反応があった。良い反応なのか悪い反応なのかは判断がつかなかったけれど、反応があったことそれ自体が嬉しくて「他に聴いてみたい音楽があったら言ってくれ。音楽のことであれば大抵のことは分かるから」とゴードンは彼女の背中を慰め以外の意味で初めて撫でた。
     音楽を教える教育ではなく、子を育てるということは初めてのゴードンは四苦八苦しながらもウタがやりたいことを言えるように声をかけた。最初は首を振ってばかりでうまくコミュニケーションも取れなかったが、それでもゴードンは諦めなかった。身を千切るような別れを家族とし、暗い目をするこの子になんとか前を向いて生きて欲しかったのだ。
    「ここには沢山の本がある。何か読みたいテーマはあるかな?」
    「……楽しいお話がいいな」
     ウタが布団から出て座れるようになると、ゴードンは何かあれば気がまぎれるだろうかと城に沢山ある本のことを思い出した。回答があったのはいいものの音楽に関連する本なら沢山あるが、子供が楽しい物語なんてあったかとゴードンは部屋中を引っ掻きまわす。
     地下まで探しに行ってなんとかバレエ音楽の『The Nutcracker』を見つけ出し、ウタへと渡すことができた。これからはもっと色々な種類の本があった方がいいだろうなと考え直すきっかけになった出来事だった。
    「ゴードンさんは一緒に浜辺を歩いてくれる?」
     ある日いつものようにカーテンを開けたタイミングでウタにそう声をかけられたゴードンは、雨が降っているにも関わらず「もちろんだとも。今から行くかい?」と彼女の手を握った。
    「雨だけどいいの?」
    「ウタと一緒ならどこだって行きたいと思う」
     ざあざあ振りの雨を見て「こんなに天気が悪いのに?」と信じられないような顔をした後、ウタは細くて長くて大きな手を「それなら、一緒に行こう」と俯いたまま握り返した。まさか雨でも一緒に来てくれるなんて思いもしていなかったのだ。
    「前パイプオルガンを弾きながら歌ってくれた綺麗な歌、もう一回聴きたいな。私も歌えるようになりたい」
     島民のお墓参りをしたり、二人並んでキッチンに立つようになった頃、ウタがそんなことを言い始めた。時折慣れ親しんだ歌を口ずさむことはあっても、新しい音楽に挑戦したいとは言ってこなかったウタが。
    「もちろんだとも。他に知りたいことがあれば言いなさい」
     嬉しそうにそう答えるゴードンに、ウタはだんだんとこの人には我儘を言ってもいいんだなと思えるようになってきていた。ゴードンと共に沢山の本を読むうちにウタは難しい言葉も理解することができるようになっていった。
    「ゴードンが読んでる新聞? っていうの読んでみたい」
    「分からないことがあったら聞きなさい」
     そう言ってゴードンは読んでいた新聞を彼女へ与えた。
     ゴードンと共に本を読んだり裸足で草を踏むうちにだんだんとウタは自分からやりたいことを口にできるようになっていった。いい兆しだと思いながらも音楽の事ならいざ知らず、人の子を一人立派に育て上げることは一人では難しい。そのため、ゴードンは食料の手配などを手伝ってもらっている知り合いの修道女によく相談をしていた。
    「ねぇ、貴方達こちらへ来る気はないの?」
    「すまない……私はここを離れることはできない」
     国民を放ってはおけないと頑ななゴードンに修道女は「分かった」と頷き、それなら「時々ウタちゃんと話させてね。たまにはゴードン以外の人間と話した方がいいわ」と微笑んだ。あの日のこともあり、ウタが他の人間と触れ合う事への恐れは多少なりともあったが、信頼している修道女からの言葉にゴードンは「同性の方が話しやすいこともあるだろうからね」と頷いて見せた。
    「頼んでもいいだろうか」
    「ずっと二人で閉じこもってちゃ、不健康よ。貴方が私と話しているように、彼女も他の人と話さないと……ね、ウタちゃんのお父さん」
     ゴードンは耳に入ってきた「お父さん」という単語にきょとんとする。
    「私が……お父さん?」
    「えぇ、貴方はもう立派にお父さんやってるわ」
     島と外を繋ぐのは新聞と電伝虫だけの誰も褒めてくれる者がいない二人ぽっちの島で、ゴードンは目元を隠して俯いた。


    17 ウタ映像でんでん虫での配信開始。
    15
    18 ウタ真実を知る。配信終了。エレジアを出る。小島を拠点にチャリティーコンサート開始
    16
    19 シャンクス、ウタがエレジアから失踪していることを知る。捜索開始。小島に歌のうまいシスターがいるという噂が広がる
    17 ルフィ旅立ち
    20 シャンクス、噂を頼りにウタを捜索。発見
    18
    21 あれがそれしてそうする
    19
    チャリティー 支援 船
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