なんかバーとかで出会う景萩(タイトル)「諸伏サンて、ずっと髭伸ばしてんの?」
ふと訪れた会話の隙間に、さきほどから気になっていたようないないような、けれどわざわざ聞かなくてもいいと思っていたことが口から滑り落ちた。
うっすら血液中に巡りはじめたアルコールが、ほんの少し思考を鈍らせていたのかもしれない。
案の定、猫みたいな瞳が瞬いて、それから少し困ったような笑みが返ってきた。
「うーん……ずっと、でも、ないんですけど」
歯切れ悪く言いながら、柔和な印象からは意外なくらい節の目立つ指が、顎のあたりをなぞる。頬から頬へくるりと輪郭を縁取るそれは、本人の性格を表しているのだろうか、均一に整えられていた。
「……あの、俺」
「うん?」
「これがないと、なんていうかすごく……若く、見られるんですよね」
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