コナパズのサンタ降谷さんとしんしんと雪が降り積もる聖夜。大人になってしまった私にはサンタからの贈り物なんて届くはずもない。しかし、クリスマスにこうも雪が降っているのをみるとどこかにサンタクロースがいるのではないかとつい、空を見上げてしまうのだ。
「まぁ、いるわけないよね…」
いたとしても特に願う物はない。私の願いは子供のプレゼントのように簡単には叶わないのは分かっているから。
すると、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。今日届く荷物はなかった筈、と首を傾げながらドアについた覗き窓を覗くと一瞬、息が止まったような気がした。上から下まで真っ白な衣装は私の知っている色ではないけれど、どう見てもサンタクロースで、それを着ているのが誰なのか認識した瞬間にぽつりと名前を溢していた。急いで鍵とチェーンを開ければメリークリスマスと腕を広げて待っていてくれる彼の胸へと飛び込んだ。
「零くん…!ほんとに零くんなんだよね」
「あぁ、勿論。君の為に仕事を終わらせて、こんなものも用意してみたんだ」
少しはしゃぎすぎたかな?と照れくさそうに笑う彼にそんなことない!似合ってると伝えると嬉しそうに目を細められる。
「零くん、その色すごく似合ってる。なんだか神聖な感じがして、神様のお遣いみたいだなって思っちゃった」
「気に入ってくれたならよかった。今日は君だけのサンタだ。何か欲しいものは無いか?」
「物じゃなくてもいいなら…私、零くんとゆっくり過ごしたいな」
それはサンタでも叶えられない、むしろ彼にしか叶えられない願い事だ。どうだろう?と顔を覗けば君のお願いなら何でも叶えるよと笑顔が返ってくる。今からでは大した料理は出来ないけれど、ケーキはあるしスーパーで何か買い足せば良いだろうか。突然彼と一緒に過ごせることが決まりあれがしたい、これはどうだろうと目まぐるしく頭の中で計画を立てる私を見て、彼はくすりと笑う。
「明日の朝までは絶対に居るからやりたいこと、一つずつやっていこうか」
優しく微笑む彼を見て楽しみにしていたのは自分だけではないのだと心が暖かくなる。
突然現れた私だけのサンタクロースのおかげで、今年のクリスマスはとても幸せな1日になりそうだった。