Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    rui2022niji

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💛 💜 💚 👍
    POIPOI 6

    rui2022niji

    ☆quiet follow

    2023年12月23日、鯉登音之進くん誕生日おめでとう〜!
    前からぼんやりと考えていた尾鯉を書きました。
    現パロ記憶関係なし、エロなしです。
    鯉登がウワー(↑)ウワー(↓)ウワー(↑)てなる話、かな?
    自己満すぎていつにも増して何が言いたいの、って感じかもしれないです。

    #尾鯉
    koi

    火は付けられた「なあ、12月23日は空いてるのか」

     暖冬と言ったって暖房が欠かせない12月頭。リビングでくつろいでいると、同じくくつろいでいたはずの尾形が何の感情を表しているのか分からない顔をこちらに向けて切り出してきた。
     12月23日は私の誕生日。毎年、家族か友人かの誰かしらに直接祝われている。付き合って3年目の尾形には、クリスマスイベントと併せて2人きりになって祝ってもらうことが続いていた。尾形は独占欲が強いわりに、私の周囲の人たちが私のために何かすることを決して邪魔をしないところがある。
     付き合って初めての12月23日直前になっても私の予定を押さえようとしないことに怒って拗ねて困らせたものだった。

    「お前の誕生日は……いつも親御さんや杉元とか誰かに祝ってもらっているだろう。お前には誕生日を祝福してくれる人がたくさんいるんだ。祝われておけ。」

     尾形が気が収まらない私の髪を撫でながらそんなことを言うものだから呆気に取られた。尾形の誕生日に、尾形を祝う人だっているだろうけど、一緒にいたいと思う私は幼いだろうか。結局話し合って、私の誕生日の翌日・翌々日のクリスマスイベントは一緒にいる、ということで話がついた。
     私の誕生日・クリスマスに関してはそのような経緯がある訳だが、私の誕生日の空きを確認するだなんてなんのつもりだろうか。放っておけば勝手に予定が入っている方が多いのは知っているだろうに。今年のクリスマスは会えない用事があるとか?それとも何か企んでいるのだろうか?

    「いや、まだ何も予定はないが」
    「そうか……空けておいてくれるか」
    「わかった。けど、珍しいじゃないか。今年のクリスマスは仕事か?」
    「毎年、クリスマスは休みにしている。……知ってるだろ」
    「うん……じゃあ今年は12月23日から25日まで尾形と一緒にいれるのか?」
    「そうだ、な」
    「嬉しいっ!」
    「ヴェッッッ」

     ぶつかるように尾形に抱きついてやる。頬が緩んで笑みが溢れてしまう。いつもより輪にかけてモゾモゾと話すのが妙だけど、3日間の尾形と2人っきりの休暇を思えば些末なことに思えた。



     それからというもの、尾形は妙だった。妙なのだ。ふと気づいたら私を見ていたり、ぼんやりと宙を見ていたり。何をするにも気が散ってるというか、ソワソワしているというか。どうかしたか、と聞けば何でもない、の一点張り。強情な尾形が何でもないという時は大抵何でもないことはないのだが、どうにも聞き出すのが難しい。時に任せた方がいいことは今までの経験から分かっているのでしばらくは黙るしかない。
     12月23日の予定について聞くと既にいろいろと決めているらしく、詳細は教えてくれなかった。知りたいと食い下がったら、ボンボンスタイルを用意しておけばいいと返されたので軽く肩を殴った。口の悪さだけは変わらないな!
     尾形の言う『ボンボンスタイル』はどんなレストランでも入れるフォーマル目な服装を指すことを考えると、そういったところに連れてってくれるのだろうか。通常のデートでそういう服を着ると場に合ってない、これだからボンボンは、と不機嫌になるのに。
     予め服装を指定されるなんて今までにないことだ。付き合って3年目の誕生日、予測ができなくなってきた。何が起こるんだろう。もしかして?



     12月23日朝。尾形の言う『ボンボンスタイル』に着替えようとしたらまだいいから、と別の服に着替えさせられ車に詰め込まれた。まだって何だ。折角クリーニングに出して準備しておいたのに。
     尾形は付き合って初めてのクリスマスに行ったところや付き合って2年目の記念日に行ったところなど、懐かしいところに連れて行ってくれた。また訪れたいと思っていた場所に、尾形と再び遊びにこれていることが嬉しくて楽しくて時間が過ぎるのはあっという間だった。

    「帰るぞ」

     日が沈むかどうかという時間なのに、もう帰るのか。まだ外で遊んでいたい、デートを楽しんでいたいのに。

    「もう帰るのか?まだ帰りたくない……折角の誕生日デートなのに」
    「一旦家に帰るだけだ。家に帰って着替えたらディナーに行く」

     そういえば、尾形は『ボンボンスタイルは《まだ》いい』と言っていた。一旦家に帰ってから改めて、ということか。そのぐらい先に言ってくれてもいいじゃないか。でも、まあいいか。今日は尾形のデートプランに身を任せよう。ディナーも楽しみだ。



     こんな尾形は見たことなかった。今まで見た中で一番格好良いと言っても過言ではない。タキシードを持っていたなんて。

    「何見惚れてんだよ」
    「見惚れてなんかっ……ある……」
    「フン」

     嘘をつけないくらいめちゃくちゃに格好良い。尾形のためにあるようなタキシード。全然否定できなかったのが悔しいが、尾形が照れたのでまあいいだろう。そっぽ向いたって赤くなっている耳は見えているぞ。

    「タキシード、だよな?持ってたのか」
    「今日初めて着た。オーダーメイドで前から頼んでいた」
    「前から……?」
    「予約に遅れるからもう出るぞ」

     タキシードについていろいろと聞きたいことがあったが予約に遅れるのは良くない。自分の身なりを最終チェックして尾形を追いかけるようにして家から出た。外にはタクシーが待っていて、尾形の用意周到さに改めて驚かされる。ここまで準備されているとは。電車で行くのかと思った。
     タクシーに乗ると尾形がだんまりになってしまったので1人思いを巡らせる。タキシードをオーダーメイドしよう、なんてあの尾形が思うことあるのだろうか。行こうとしたレストランのドレスコードが厳しいのか、何か目的があるのか。いずれにせよ今までにないディナーになる、そんな予感がした。



     やはりそういうことだろうか?そうでなければ、ここ最近から今日までの尾形の行動の理由が他に思い浮かばない……

     私はここでプロポーズされるんだ!!

     私が連れていかれたのはとあるラグジュアリーホテルの最上階にあるレストラン。一等地のロケーションで、煌めく都内を見下ろせる眺望が魅力的だ。そんなレストランの一角にある、周りを遮断するような背の高いソファに案内された。
     横並びに座って夜景を観ながら食事するのだろう。こんなロマンティックなディナーなんてしたことない。ああ、むずむずする。ラグジュアリーなレストランで食事をするに慣れていたって、プロポーズを受けるための食事に慣れている訳がない。
     付き合って3年目の私の誕生日にプロポーズするんだな!思い出の場所を巡るデートコースにして!タキシードを着て!夜景の綺麗な高層レストランに連れて行って!結婚してくださいって私に言うんだな!尾形のことだから一捻りあるセリフかもしれない。どんなセリフだっていい、私はプロポーズを受け入れる。結婚しよう、尾形!いや、百之助か?慣れないとな!
     流れるように運ばれてくる美しいコース料理を味わいながら尾形と優雅な時を過ごした。お酒もほどほどにしっとりと、煌めく夜景に照らされるワイングラスとタキシードに身を包む尾形が夢見心地にしてくれた。本当に夢じゃないかと思うくらいに。
     ふと、室内に流れていた音楽が止んだ。どうしたのかと天井あたりに目を向けていると尾形から声がかかる。

    「鯉登、こっち向け」
    「ん?」

     目の前には何本あるかすぐには分からないほど沢山の、美しく赤い薔薇。黒いタキシードを着る尾形とのコントラストが鮮やかで、お互いを引き立たせている。これは花束をプレゼントして、というやつだろうか。さあこい!

    「……誕生日、おめでとう」
    「……?ありがとう」

     照れたような尾形から発された言葉は誕生日を祝う言葉のみだった。で?とかそれだけ?の言葉は飲み込んで、とりあえず薔薇の花束を受け取る。圧倒的な香りとずっしりとした重み。一体何本あるのやら。まずは喜んでおかないと。

    「こんなに沢山の薔薇をもらうのは初めてだ!嬉しいぞ!尾形!」
    「柄でもないが……鯉登なら喜びそうだったからな」
    「何だその言い方!誰だって嬉しいだろ!」
    「鯉登以外は知らん」
    「……ところでこの薔薇は一体何本あるんだ?本数によって意味が違うのは知っているぞ!」
    「……自分で数えてみろ」
    「教えてくれないのか。だったらちゃんと数えなくてはなっ」

     喜んでもらえているのか不安なのか、落ち着かない様子の尾形と薔薇についてあれやこれやと話しているうちにデザートのミニホールケーキプレートが運ばれてきた。純白の生クリームを纏った丸いスポンジに、可愛らしい複数種類のベリー類。プレートにはチョコで書かれたメッセージがある。『Happy Birthday おとのしん』。『Will you marry me?』でも『結婚してください』でもない。
     尾形は純粋に私の誕生日を祝うためにあれこれと今日の準備してくれただけだったのか。浮かれ過ぎた自分が恥ずかしい。それでも、誕生日に素敵な夜景とディナー、薔薇のプレゼントがとても嬉しいのには変わりなかった。
     デザートのケーキを食べたらディナーは終了。ここのホテルも予約してあるから、と尾形に連れられ、そのままチェックインしてスイートルームへ。やっぱりプロポーズするためのデートプランかと懲りずに思ったが、部屋に薔薇の花びらがばら撒かれていたりバルーンが浮かんでいたり、なんてことはなかった。やはり誕生日のために特別なデートを用意した、というところだろう。今は尾形が先にお湯を張る準備をしてくれているところだ。
     やっと。やっとと言うのも申し訳ないが、わずかながらやっと1人になった。やっぱり、どうしても、ほんの少しがっかりしている。気持ちを整理したい。最近の尾形の様子やレストランの雰囲気からプロポーズされるんだと思ったのに、されなかった。思い込みで勝手に期待していただけなのは百も承知だ。だとしても、プロポーズされることに、尾形との結婚に期待している自分に気づいてしまった。
     尾形とは仲良くやっているはずだ。これからの一生を一緒に過ごすと信じているし、信じることができる状況だと思う。お付き合い、同棲ときたら一般的に次のステップは結婚だろう?一生を共にする誓いをしたい。
     尾形は私にプロポーズする気はないのだろうか。今日ほどのデートコースでプロポーズしないなら、今後いつするのか予想がつかないところだ。いつ言われたって「喜んで!」と返してやるけれど。薔薇を目一杯用意することはできるのに、「結婚してください」の10文字程度を発声できないなんてことはないだろうとも思ってしまっている。
     まさか婚約指輪を用意してないから、間に合ってなかった、とか?でも、付き合って1年目にペアリングをねだったら指輪なんぞ付けたくないって言ってたから、そもそも結婚指輪等はないか?いや、それはいい。指輪はプロポーズに必要不可欠なものではないんだ。プロポーズに必要なのは「結婚してほしい」を伝える言葉だ。
     あれこれと考えたら疲れた。尾形がプロポーズしなかったことにこんなにモヤモヤさせられるなんて。モヤモヤさせるなんて?別に尾形のプロポーズを待っている必要はないのかもしれない。もう私は尾形と結婚すると決めたのだから。プロポーズが私からでも良いのではないか?
     そうだ、それだ。思い返せば恋人になるのも同棲するのも私から言ってきたのだから。結婚の申し出だって私からすればいい。
     どんなプロポーズをしてやろう。とびっきりロマンチックにするか、極めて自然な流れにするか。プロポーズすると決めたらいろんな案が湧き出てくる。自分でもニヤニヤしているのが分かるくらいには楽しみになってきた。
     気を取り直し、すっかりご機嫌になった私は風呂の準備から戻ってきた恋人をキスで出迎えた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💯💯💯💯💯💒💒💒👏👏💘👏👏👏☺☺☺💗💗💗🎂🎉㊗💒💛💜🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    rui2022niji

    DONE2023年12月23日、鯉登音之進くん誕生日おめでとう〜!
    前からぼんやりと考えていた尾鯉を書きました。
    現パロ記憶関係なし、エロなしです。
    鯉登がウワー(↑)ウワー(↓)ウワー(↑)てなる話、かな?
    自己満すぎていつにも増して何が言いたいの、って感じかもしれないです。
    火は付けられた「なあ、12月23日は空いてるのか」

     暖冬と言ったって暖房が欠かせない12月頭。リビングでくつろいでいると、同じくくつろいでいたはずの尾形が何の感情を表しているのか分からない顔をこちらに向けて切り出してきた。
     12月23日は私の誕生日。毎年、家族か友人かの誰かしらに直接祝われている。付き合って3年目の尾形には、クリスマスイベントと併せて2人きりになって祝ってもらうことが続いていた。尾形は独占欲が強いわりに、私の周囲の人たちが私のために何かすることを決して邪魔をしないところがある。
     付き合って初めての12月23日直前になっても私の予定を押さえようとしないことに怒って拗ねて困らせたものだった。

    「お前の誕生日は……いつも親御さんや杉元とか誰かに祝ってもらっているだろう。お前には誕生日を祝福してくれる人がたくさんいるんだ。祝われておけ。」
    4865

    related works

    recommended works