テオ子の腰細すぎてびっくりした。抱きしめるその体があまりにも華奢で、壊れてしまいそうで不安になる。
とはいえ、そう簡単に壊れるものではないとも理解はしているけれど。
柔らかな髪に顔を埋めて、彼……彼女の香りを感じながらキスを落とす。
「……サリ」
真冬の太陽に照らされた、森林。
その中に感じるいつもとは違う、ほんの少し甘い香り。
甘やかで少し困惑を乗せた声に名前を呼ばれて顔をあげる。
なぁに?と頬を擦り寄せて甘えてみれば少し遠慮がちに俺を抱きしめる手に力が籠る。
突然女性になってしまって、暫く互いに動揺をしていたものの、多少は慣れて、ようやっと前に近しい距離感でこうやって身を寄せている。
可愛くて、綺麗で、かっこいい。
女性になっても変わらないその凛とした姿と、男性の時とは違う脆さと儚さを感じ取ってそばによることを躊躇してしまっていた。
数日経って少し落ちってからは嫌がることはしたくない、だけど、触れたいがせめぎ合ってひどく複雑な表情をしていたのを咎められた。
先ほどからひどく胡乱な返事しか返していない。
名前を呼ばれてふたたびなんて、返そうか。
と、考える間に彼女の香りと体温と、少し心配そうに震える体を感じ取って、じくじくと脳内が痺れ始めていた。
このままだき潰して仕舞えば、否応なく俺のものになってくれるだろうか。
嫌われることなんて考えずに、逃がさなくしてしまえば。
なんてドス黒い考えが先ほどからちらついているのを無視していたけれど、久しく彼を感じていない自分の体は素直ではあった。
下腹部に熱が溜まる。
俺は彼女を抱きしめる力を強めて息を吐く。
何かに気がついたのか、彼女は俺から手を外す。
「サリ」
若干眉間に皺を寄せてから目を伏せる。
この角度から見える表情は、まつ毛の長さが際立って、ああ、テオ君だな。
と。
そう思った瞬間にプチ、と何かが切れた。
愛しい人大好きな人、大事な人。
君の後ろを歩くのが大好きだ。
隣に立って耳を寄せるのも
君の先を歩いて振り返ってみせるのも。
どんな姿であれ、君が君であるのなら俺は君を愛したい。
そこに君の幸せがあるのかは知らないけれど。
俺の幸せは君の元にある。
「サリ、痛い…のですが…」
その言葉に我に帰る。
でも、もう遅かった。
愛しさに目を細めて、口角が上がる。
「テオくん、優しくするからシよ」
ね。と、俺はわざと意地悪そうな笑顔を向けて、彼女を抱きしめる手に力を込めた。