Q.Did you find it 心の中で、ほんの僅かに気持ちが揺らいだ。
小石一粒、大海原に投げ込んだところで構いはしないだろうか、と。人生、最後の最後に思い残してしまったら台無しになるだろうか、と。
そうして、すぐに打ち消した。死に際で左右される様な生き方ではなかった、胸を張ってそう言える。断言出来る。
「( なぁ、おれと心中してくれるか? )」
眉一つ、呼吸一つ乱さずとも答えは返ってきていた。
この気持ちを抱いて、海の底まで持っていく。
「( だよな、たった一人じゃ旅は楽しくないもんな )」
だからこそ、言わなかった。
何一つ、いつもと行動を変えることもせず、いつもの様に宴を終えてからの行動は単独で。誰にも怪しまれることがなかった。勘の良い兄弟子にも、好物に囲まれて顔を綻ばせる弟分にも、敬愛する父親にも、勝手に心の片方を預けてしまった男にも。
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