転生現パロ(トマ人) そう日課は変えられない。庭に出て、木刀を握る。構えて目を閉じ瞑想し、雑念が消え去ったと同時に振り下ろす。シュッシュッと風切り音と布の擦れる音だけが響く。遠くで小鳥が囀っていたように思うが、それさえ耳に入らない。
身体を鍛える必要などなくなった。元素の薄まったこの世界で、身を守らなければならないことは数すくない。勿論悪人がいないほどに平和な世界というわけではない。それでもそれを取り締まる警察がいれば、自ら武器を持ち立ち上がらなければ危険を感じる世界ではなくなった。たとえばヒルチャール、たとえば獣域ハウンド、たとえば遺跡機械。そんなものはない。ときどき小さなスライムや昌蝶を見かけることはあるが、それらが害をなすことはない。そんな平和な世界でも、私は変わらず木刀を握っていた。
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