いちさにハロウィン 万屋街には、様々な形の南瓜がいたる所に飾られている。店内を覗けば、店員さんが猫耳やツノのついたかカチューシャ、魔女の帽子など、コスプレをしたまま接客している様子が窺える。今日はそう、可愛い子を口説いてもいい日─────ハロウィンだ。
視線だけを動かして、辺りを観察する。ハロウィン当日とはいえ、本丸で過ごす者が多いのだろう、仮装している人はほとんど見受けられなかった。それどころか町ゆく人々の姿は疎らだ。私も仮装はしてこなかった。
こういう日は仮装をして可愛い子を口説くのに限るのだが、横に並ぶ空色の王子と見まがうような青年、もとい一期一振は許してはくれないだろう。普段の彼であったなら、私が可愛い子に声を掛けていても「ほどほどにしてくださいね」と言うだけで(いい顔はしないけれど)止めるようなことはしない。しかし今日は違う。歌仙からお目付け役として私を見張るようにと念入りに頼まれているのだ。
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