咲く花と手折られる花 華がほころぶように笑う君を見ることが出来るのは、ずっと僕の特権だと思っていた。どこかでだれかとどうなったとしても、最後には僕の目を見て、僕に向かってそのバラ色の頬を美しくしながら僕の名前を呼んでくれると。だが僕はその感情がどこから来るものか自覚していなかった。自覚した時には手遅れで、行かないで欲しいとその手をつかんでもそっと離されてしまう。
「ブラッドリー、僕は、ぼくはずっと君が」
「遅いよ、マーヴ。俺はマーヴの事がずっと好きだったんだよ。でも、もう遅いんだ」
そう言って寂しそうに、でも綺麗に笑う君に僕はどうしたって諦めることができなくて、でも恋人のところへと行ってしまうその背を見つめることしか出来なくて。空では最速であるのに、地上での僕はいつだって君のことに関しては手遅れになってしまうのだ。
354