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    よるのなか

    二次創作文字書き。HRH🍣右、🍃右中心。

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    よるのなか

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    2023/7/17開催幻水webオンリーイベント「星の祝祭Ⅲ」展示作品です。パスワードはお品書きと水晶玉のリンク先に記載しています。
    主坊で、初夜を迎えた次の日の朝の二人の話。2主国王エンド後、国王を退位して二人で旅をしている前提。恋人同士です。
    二人の性格設定などは水晶玉のリンク先に記載しましたのでよろしければ…
    坊→アルト、2主→ミラン

    【主坊】Morning breeze 目を開けると、窓から差し込む光はもう明るかった。いつもよりも、少し遅くまで寝てしまっていた気がする。普段であれば、恐らく外に出て朝の稽古を始めている時間だ。ミランはベッドの上でぼんやりと、何で今日は寝坊したんだろ、と考えた。
     隣を見るが、そこには既に温もりはない。あの人も自分と同様、朝は毎日体を動かしているから、もう出たのかもしれない。体は大丈夫だろうか、そこまで考え続けた所で、体は大丈夫って何だ、と自分で自分の考えを振り返る。そして。
    「――!」
     飛び起きてベッドを改めて観察する。そこはいつもよりも乱れていて、動き回ってずれたシーツをなんとか直して寝ました、ということがよくわかる。それを認識した瞬間、昨夜のことがまざまざと脳裏に蘇ってきた。
     喜び、戸惑い、羞恥、それから快感――。
     昨日自分は、ついに「して」しまったのだ、あの人と。
    「うわぁ……」
     それを認識した瞬間、顔が熱くなる。望んでいたことだったとはいえ、どちらも初めてで必死だった印象が一番強い。それでも、昨夜だけで様々なことがあって、様々な思いをした、それらの記憶が次々とミランを襲う。ともすれば快感まで拾いそうな記憶を、大きく首を振って追い出して。
    「……稽古しよ。平常心平常心」
     少し気を落ち着けようと、ようやくベッドから抜け出した。

    *****

     遅く起きた、といってもミランにとってという話であり、一般的にはまだ早朝だ。朝の冷えた空気は火照りかけた体を冷ますのに最適だった。晴れた澄んだ空気の中での稽古はきっと気持ち良く、余計な考えを吹き飛ばしてくれるに違いない。宿から少しだけ歩いた所にある空き地にやってくると、見知った姿が目に入った。
    「アルト……」
     二人で旅を続けていて、昨日ついに体を重ねた相手だ。予想通り、既に日課の稽古を始めている。ミランは足を止めてその姿を眺めた。
     相変わらず、綺麗だと思う。勿論外見も端正な部類に入るが、それだけではない。立つ姿勢、構え方、腕の突き出し方、それらの立ち居振る舞いが美しい。同じ武術の心得があるものとして、見ていて惚れ惚れとする姿だ。
     昨夜は気遣いながら事を進めたつもりだったが、如何せん必死だった記憶の方が多い。影響はないだろうかと観察した。受け入れたのはアルトの方だ。当然、負担はアルトの方が大きいはずなのだが、見た目からは動きに違和感は感じなかった。
     じっと見ていたために、すぐに気付かれて。アルトは一瞬警戒する気配を見せたが、来訪者がミランであると認識したところでそれを解き、ミランに向き直り微笑んできた。
    「おはよう、ミラン」
    「お、おはよう」
     アルトはいつもの調子で声をかけてきたのでいつも通り返したつもりだった――が、少しだけ返答にまごついてしまった。それを見たアルトが、おかしそうに笑う。
    「君にしては少し遅かったな」
    「あー、うん、ちょっと寝坊した」
     些細な会話なのに、いつも通りが少し気恥ずかしい。だがアルトはいつも通りだ。まるで昨日のことが嘘のように。
    (俺の夢……ってことは流石にないか)
     何せ、部屋に痕跡は残っていた。あれは現実のはずなのだが。何故ここまで様子が変わらないのだろう。
    「あのさ、アルト」
    「何だ?」
    「えっと、体は、何ともないかなって」
     意を決して訪ねてみると、アルトは一度その目を瞬かせた後であぁ、と声を出した。ミランの質問が何を指しているのか、理解したらしい。
    「普段あまりしない体勢だったり、あまり使わない筋肉を使ったのか、若干節々は痛い」
    「……えぇ!?」
     あまりにもさらりと言われたため、その意味を理解するのに時間がかかった。少し遅れてから驚きの声を出す。
    「全然、そうは見えないけど……」
    「体を動かせば、解れて少しマシになるかと思った」
    「……で、マシになった?」
    「多少は」
    「多少なの?」
     事も無げに言うその様子からは、とても痛みを抱えているようには見えないのだが。
    「悟られるようでは、僕は生き残ってこうして君と旅を続けられていない」
    「まぁ、それはそうかもだけど」
     確かに、戦いの場で弱みを見せるのは致命的な行為だ。軍を、そして国を率いた経験のあるミランにもそれはわかる。だが。
    「痛ければ、無理しないで言って。俺は敵じゃないし、心配もする」
     痛みを作った原因である自分が言うのもおかしな話だとミランは思ったが、それは伝えておきたかった。大事な人だ。強い人なのはわかっているが、その中に柔らかい、弱い部分があることも知っている。全てを、大事にしたかった。
     アルトはまたミランを見て数度その目を瞬かせて。それからふわりと柔らかい笑みを見せた。互いに恋をしている、それを知ってから見るようになった、少し特別な笑顔だ。
    「そうさせてもらう」
     どうやら言いたいことが伝わったようで、ミランはほっとする。共に戦い始めて、この人は滅多に弱さを出さない人だと知った。最初の頃は、それは強さ故だと思っていた。自分がまだ軍を率いていて生き抜くのに必死だった頃に出会ったアルトは、非常に落ち着いていて何事にも動じないように見えた。既に軍主として戦乱を駆け抜けた経験もあり、それは実力に裏付けされたものだと思っていたのだ。だが、それはほんの一面に過ぎないと、自身も役目を終え共に旅をするようになってから知った。考え方は違えど、アルトも感情の持ち方は人並みで、弱い心も持つ。それを敢えて見せないようにするのが上手い人、というだけだったのだ。強さに弱さが隠れていたわけではなく、強がって弱さを隠していた。その弱さに触れたとき、それまで以上に共に在りたいと思った。その体を、この手に収めたいと思った。そこで初めて、ミランは自分が目の前の人物に恋をしていることに気付いたのだ。
     アルトが自分のどこが良いと思っているのかは、ミランはまだ聞いていない。わかっているのは、アルトもミランには恋心を抱いているのは確かということ、それから、その体に触れることを許してくれたということ。アルトがミランを好いているということは直接その口から聞いたので、自分の一方通行ではない、はずである。だが、あまり大きく感情を変化させない人なので、常にその好意を全面に出しているというわけではない。それでも、時折今のような笑顔を見ると、少しはこの人の特別な存在になれているのかもしれないと、胸の奥があたたかくなる。
     そのあたたかさを胸の奥にしまい込んで。ミランが自分も稽古を始めようかと一歩踏み出そうとした時だ。アルトのすぐ後ろで一陣の強い風が吹く。旋風だ。そういえばこの地域は大気が不安定で、時折局地的にこういった風が吹くと宿の主人から聞いていた。
    「……っ、と」
    「わ、大丈夫?」
     反射的に避けようとしたアルトの体を、こちらも腕を掴んで反射的に引き寄せた。勢い余って軽く抱きとめる形にはなったが、お陰で風の被害を受けることは免れたようだ。
    「大丈夫、だ……」
     大丈夫か、というミランの問いに、耳のすぐ近くで応答があったのだが、珍しく歯切れの悪い口調だった。あれ、と顔を動かしアルトを見ると。
     戸惑うような表情で固まっている。その白い肌が、次第に赤く染まっていくのがわかって。
    「えっ、と……?」
     軽く動揺しながらミランが声をかけると、アルトは少し俯いた。
    「いや……急に、君に近付いたので、その、昨夜のことを思い出してしまって……嫌というわけでは、決してないのだが」
    「…………」
     それはおそらく、起床した時の自分と同じ状況ということだろうか。きっと今この人の中で様々な記憶が蘇っているのかもしれない。嫌ではないと言った。自分もそうだ。嫌ではないのだが、恥ずかしかったり幸福感だったり、色々な感情に翻弄されてどうして良いかわからなくなる。
     この人も、同じだった。その事になんだかたまらなくなって、ミランはそのままアルトを抱きしめた。
    「かわいい」
    「か……わいいというのは、年上の男性に使う言葉ではないだろう」
    「そんなことないよ。かわいいは老若男女関係なく使える。……ね、またそのうち、しても良い?」
     思い切って尋ねてみると、腕の中のアルトは、構わない、と頷いた。
    「君が確認するようなことでもない。君が希望するタイミングで構わないし……僕が希望することだって、きっとある」
    「本当に? アルトも?」
    「……君は全く、僕を何だと……」
     僕だって君と同じだと言いながら、アルトの両腕がミランの背中に回される。
     外の空気で冷めた体が、その腕の部分からまたじわじわと温かくなっていくような気がした。

    (了)
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    Replies from the creator

    よるのなか

    MOURNINGキスブラ。酔っぱらって暴君極まりないブさんです。ブさんが大分いけいけどんどんおかしなことになってます、すみません…キさんを暴君振りで振り回すブさんが急に書きたくなりまして。
    書いててとても楽しかった。
    割増暴君『三十分後、お前の家』
     受信したメッセージには、それだけが表示されていた。理由も状況もさっぱりわからねぇが、とりあえず三十分後に家にいろ、ということだけはわかったから、ディノにそれを告げてオレは自宅へ足を向ける。ちょうどパトロールが終わったところだから三十分後に着けるけど、これタワーで受け取ってたら三十分後に着けるかなんてわからねぇぞ、とそこまで考えて、いや、パトロール中だとわかっていたんだな、と思い直した。あの男のことだ、それくらい把握済みで送った指示なんだろう。
     ぴったり時間通りに着くと、既にブラッドは玄関先に立っていた。
    「……来たか」
     そう言って、オレをじっと睨んでくる。来るなり睨まれても、とオレは思わず後退りしそうになって、それからよくブラッドを観察した。どうも、目が据わっているように見える。なのにどこか覇気がなくて、それから目元や首筋、頬など全体的に妙に赤いような。
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