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    ゲニー

    ZL小説
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    ゲニー

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    【学生ゾロ×海賊ルフィ+医者ロー】
    ・不老不死になったルフィが転生したゾロとトラ男に出会う話
    ・一味がいた世界線のなんちゃって未来
    ・何でも許せる方向け
    ・ゾロルがくっつくまで頑張って書きたい(抱負)

    #ゾロル
    zolu

    『500年後のおれ達は』


     海で不思議なことを言う男に出会った。
     なぜか初めて会った気がしなかった。
     男は、名をルフィと言った。

    「おれは酷ェ奴だよなァ」
     それがルフィの第一声だった。
     ゾロが浜辺で、譲り受けたばかりの真剣を素振りしていた時だった。
     ソイツは突然、現れたのだ。

    「酷い? お前、なんか悪ィことでもしたのか」
     旧知の仲のように、自然と受け答えしたことに言葉を発してからゾロは気付いたが、気配もなく後ろを取られたことに只者じゃないことだけは解った。
    「貰った命で、お前を捜してたんだ」
    「おれを? 何のために」
    「会いたかったから!!」
     どーん、とニコニコ笑顔を振りまくこの屈託ない男の顔を、ゾロは知っているような気がした。
    「前にどこかで会ったか?」
     会ったと言われてもおれは納得するだろう、それほどにどこか懐かしい。
    「いや? お前とは初めて会った」
    「なんだそりゃ……」
     ガクリ、つい項垂れる。
     これまでの会話は何だったんだ……やっぱり変な奴だ。
    「そのカッコ懐かしいなァ、着物! うんやっぱ侍みたいで似合ってる」
    「はい?」
     ゾロは改めて男を上から下まで眺めた。
     黒髪に童顔の細身の少年は、左目の下に横一文字の傷痕がある。何となく触れたい、とゾロに思わせる。
     それから赤いひらひらしたシャツの前は開けっぱなしで、その胸には大きなバツ印の朱い火傷の痕。腰に黄色いサッシュを巻いて膝が見えそうな半パンに草履、肩に羽織っただけの黒いコートの背中では、古びた麦わら帽子が揺れていた。
     そういや何かのコスプレだろうか?とゾロは首を傾げる。現代人はゾロのような着物も着ないし下駄も履かない、普段は用途に適したボディスーツを装着している。
    「誰に貰った命か知らねェが、とうとうこの世界は生命まで移せるようになっちまったのか?」
     デタラメな世界だもんな、とゾロは鼻で笑った。そして遠くの空を飛んでいく巨大ロボを指差した。
     この国は、世界の中でも特段にテクノロジーの発達した国だが、ゾロは文献で読んだだけの「ワノ国」にノスタルジーを感じている。剣が好きだからかも知れない。
     二人がいる浜辺は自然環境維持対策地区で、昔の景観を留めている。だからゾロはここが好きなのだ。
     一歩でも街に出たなら、大昔の天才科学者の何たら言う男の残した発明がこの世界の文明で、そして日常だった。
     もしかしたらこの男も天然記念物か何かだろうか、数百年前の大海賊時代にでもいそうな格好をしている。
    「移したんかなァ、よくわかんねェけど……確かに昔おれが仲間たちと冒険した島みてェな世界になったよなー」
    「昔?」
    「うん、500年くらい前かな」
    「へぇ……。じゃあお前は500といくつなんだ」
    「あん頃は19だ」
    「19歳か。もっとガキかと思ったぜ」
    「失敬だなァ! ゾロは!」
    「……あ? テメェ、なんでおれの名前知ってんだ」
     遅まきながらやっとゾロに警戒心が湧いた。刀の柄を握りしめる。ゾロは元々、他人を信用するタイプではなかったのに、コイツには調子を狂わされる。
    「えっ!? お前ゾロっつーのか!?」
    「いま自分で呼んだよな!?」
    「ほえー、おれホントに見つけたんだ……」
     子供っぽい顔で呆けたように、ぽかんと口を開ける。でもすぐさま大きな目を爛々と輝かせて、ゾロにずずいと顔を寄せて来た。
    「近………。目ん玉、落っこちるぞ」
    「へ?」
    「な、なんでもねェ」
    「おれルフィ! 海賊王だ!!」
    「なんだ、海賊王のコスプレだったのか」
     海賊で合ってた。納得した。
    「んん? なーなー、ゾロは今いくつなんだ!? どこに住んでんだ!?」
    「歳はお前と同じだ。あ、マイナス500歳な。大学2年。親戚んちに居候してる……って何を素直に答えてんだおれァ……」
     膝をつきたい。警戒心どこ行った。何かがおかしい……コイツに逆らえねェ。いやいやそんなバカな。
    「誰? あ、またホロホロ女か!?」
     ムーッとなぜだかルフィが不機嫌になった。
    「誰だよそりゃ。男だよ、従兄弟だ。つーかそろそろ帰らねェとヤベェ、今日メシ当番なんだ。買い出し行かねェと」
    「メシィィ!?」
     途端、ルフィのぺったんこの腹がギュルルルと豪快な音を立て、空腹を思い出したのかヘナヘナとその場に座り込んでしまった。
    「腹減ったんなら家に帰れよ」
    「サニー号はもうねェ……おれ帰るとこねェんだよ」
    「マジか……。そもそもお前どこから来た?」
     サニーってのはマンション名か何かだろうか。
    「出身は東の海だ」
    「随分と遠くから来たんだなァ。……う、うちでメシ食うか?」
     何誘ってんだおれは、と頭では戸惑ったが今更放り出せなかった。ぺかあっとルフィの顔が光る。
    「食うーーっ!!」
     もちろん、良い笑顔とお返事が返った。

     ゾロがマンションへ帰ると、従兄弟は既に帰宅しているようだった。忙しい男なので珍しい。
    「なんだ、帰って来てんのか」
    「イトコ?」
    「ああ。気難しい奴だから大人しくしとけよルフィ」
    「おわ!」
    「な、なんだ?」
    「500年ぶり〜」
    「はい? まぁいいや。いちいち構ってると疲れる」
    「お前な……」
     ルフィがぷくりと頬を膨らませる。まだ会って数時間なのに、色んな顔を見せてくれる。なんだかちょっと可笑しくなった。
    「ハハ、拗ねんな拗ねんな」
    「しししっ」
     もう笑っている。やっぱりどこか懐かしい、人懐こい笑顔。
    「それよかなんて紹介すりゃいいんだ、ルフィのこと……」
     絶対イヤがられるに決まってる。ルフィはアイツが一番嫌うタイプじゃないだろうか。おまけに放浪中のレイヤーときた……途中、服屋で着替えさせりゃよかった。
     実は街中を並んで歩く二人を「海賊と侍のコスプレだ!」と周囲はパシャパシャ撮りまくってくれたのだが、その辺は棚に上げているゾロである。
     悩んでいても始まらない、まぁなるようになる(気が短い)。
    「ただいま」とゾロがルフィを連れてリビングへ入ると、従兄弟はテーブルに着いて何やらPCにデータを送っているようだった。凄い勢いで文字が自動入力されていく。
    「ああ……」
     画面から顔すら上げない、がいつものことなのでゾロはさして気にもならない。
     しかしルフィを紹介するにはこちらを向かせなきゃいけないわけで……とゾロが考えていた時だった。
    「トラ男!?」
     ルフィがゾロの前へ出て、テーブルをバン!と叩いて叫んだのだ。
    「!?」
     さすがの無表情従兄弟もガバッと顔を上げた。
    「ソイツはトラ男じゃねェぞルフィ、ローって言うんだ」
     得体の知れない人物に驚いたのだろう、ローは絶賛ドン引きしている。
    「だってトラファ……トラフォル……何とかだろ!?」
    「トラファルガーだが?」
    「そう! それそれ!!」
    「わ、悪いなロー、浜辺で拾ったんだ」
    「……拾っただと? お前はバカなのかゾロ屋? 人間を拾う奴があるか」
    「いや、そうなんだが、なんとなくほっとけなくてよ……。しばらくコイツうちに置いていいか?」
    「ハァ!? 何を言い出すんだ、ペットを飼うのとは訳が違うんだぞ!」
    「そりゃ解ってる。ちゃんとおれが面倒みるし」
    「だいたい何だ、ソイツのその格好は。古代から家出でもしてきたのか?」
    「似たようなモンかもな。おれも詳しい情報は知らねェ」
    「よく知らねェのに拾って来たのか……」
    「まぁ……」
     もう説得するアテがない。どうしたものか。
    「麦わら屋」
     誰にでも屋号を付けたがるローが、ルフィの麦わら帽子に目を付けたのかそう呼んだ。途端、ルフィがピクリと肩を揺らした。
     そう言えばちょっとルフィの様子がおかしい。おかしいと言えるほどの付き合いでもないけれど、ルフィは大きな目をますます落っことしそうなほど見開いて、じっとローを見つめていた。
    「ルフィ……?」
    「やっぱりおれは酷ェ奴だ……」
     そしてポツリと、ゾロが初めて聞いた第一声をこぼした。

     ◇◇◇

    『あれ? おれ生きてる……? なんでだ、ギア5も切れて今度こそ死んだと思ったのに……』
     ルフィは海賊王となり、夢の果てを仲間たちと叶え、うまいもんもたくさん食ったし、半身だった相棒を亡くしてからは一味を解散し、ただただ思うままに世界を廻った。
     強い奴がいると聞けば単身乗り込んだ。
     放っておいても海賊王の首を狙って世界中からルーキーが決闘を申し入れてきたし、生傷が絶える日はなかった。
     それでよかった。それがよかった。
     最強の剣士となった相棒の大剣豪と、共に戦っている気になれたから。

     でも世間はこう噂した。
     海賊王は、もう笑わない。
     どんなに勝っても笑わない。

     そんなルフィをいい加減、見ていられないからとかつての同盟相手トラファルガーが助太刀に現れたのが、確か数時間前のこと──。
     それで? どうなったんだっけ?
    『よう、麦わら屋』
    『トラ男……! お前がまたおれの命を救ってくれたんか!? でもお前、スゲェ苦しそうじゃんか……何があった!?』
     敵はもう一人も立てない状況になっていた。トラ男がやったんだろう。余計なことだと思うほど、ルフィはまだ捻くれてはいない。
    『まぁな、もう立てそうにない。オペオペの実の禁断の技、不老手術をお前に施したからだ』
    『は……? それどういう意味なんだ? もしかしておれのせいでトラ男はそんな苦しんでんのか!?』
    『聞け、もう時間がない。この不老手術でお前が歳を取ることはなくなった。実質死なない体になったんだ』
    『え、なんだそれ』
    『代わりにおれは死ぬ』
    『ま、待て待てお前何言ってんだ! おいトラ男、しっかりしろよ……! 勝手なことすんなバカっ!!』
     ルフィは死に場所を探していたわけじゃない、ただ相棒の存在を感じたかった。誰よりも大切だったから。
     そんなおれの為に、トラ男が犠牲になる義理は一つもないのに──
    『テメェがいつ死ねるかのは知らねェが、まぁせいぜい、一生おれのことを覚えとけよ』
     それからトラファルガーが目を開けることはなかった。

     覚えておけと言われたが、そんなのは言われるまでもなかった。
     数年後、ルフィは姿を消した。
     忘れられなかった。
     でもそれは、生涯最高の相棒ロロノア・ゾロのことを──。

     だからおれは酷い奴なんだ。

     ◇◇◇

     なぜかぽろぽろと涙をこぼし始めたルフィを、ゾロは柄にもなくおたおたしてこっちに向け、顔を覗き込んだ。
    「なに泣いてんだルフィ」
    「ゾロぉ〜〜!!」
    「!?」
     急に腕の中に飛び込んできた細い体をゾロは躊躇いがちに抱き返して、事情も解らないままとにかく背中をさすってやった。
    「おい泣くなよ、男だろうが。しっかりしやがれ!」
    「うはは……ゾロっぽいなァそれ。ぐすん」
    「ゾロなんだよ! おれはゾロだ」
    「ゾロ……?」
     濡れた頬で見上げて来たルフィが首を傾げる。コイツが探していた相手はきっと自分だ。それだけは確信している。

    「なんっかイライラする……」
     と、そんな二人の脇から重低音を放ったのはローだった。なぜか死ぬほど面白くない。
     ローにとって、ゾロは手を焼く従兄弟だった。でもつい世話してしまう、でなければ同居を認めたりしないし、ゾロには甘い自覚まである。
     その世話焼きの対象が、認めたくはないが、もう一人増えてしまったような……いやいや冗談じゃない。
     手の掛かる従兄弟が早くも大事に思っているらしい、麦わら帽子の男。なぜかローの胸はざわついた。

    「そうだ! おれ〝いいこと〟考えた!!」
     ルフィが突如、ゾロの腕からパッと飛び退いてバサリとキャプテンコートを脱ぎ捨てた。ぽんぽこぽーん♪と変なBGMの次に発表した〝いいこと〟とは──。
    「ど、どうしたルフィ?」
    「何だその案は。早く言え麦わら屋」
    「トラ男、お前医者だよな?」
    「あぁそうだ。ゾロ屋に聞いたのか」
    「いや聞いてねェけど」
     ローがチラリとゾロに目配せしてくるのでコクリと頷いた。確か従兄弟としか伝えていない。
    「言ってねェな。まぁおれの名前も当てたんだ、気にすんな」
    「気にするなと言われても……どこかの国のスパイだったらどうする?」
    「こんなスパイいるか?」
    「いねェな」
    「なんか失敬な会話だけど、まぁ聞け! おれの体は不老不死だ。500年前、トラ男がオペした」
    「……ん? なんて? 頭は大丈夫か」
    「大丈夫だバカ! おれはいつでも真面目だ! だからトラ男は責任取っておれをオペして、不老を取り除いてくれ!!」
     これが〝いいこと〟だァ!! とルフィが自慢げに胸を張った。
    「…………」
    「…………」
    「二人とも聞いてた?」
    「不老不死の研究なら、確かにしてるが……」
    「マジで!?」
     ゾロとルフィがハモった。
    「責任取っての部分は解せん。身に覚えがねェ」
    「そっかごめん。そこはナシで!」
    「まずは本当に不老なのかを確かめる必要はあるが、もし事実ならおれのチームの研究対象になってもらう。それがここに置く条件だ」
    「本当かロー! ありがとうよ」
    「真っ先に喜ぶなゾロ屋」
     ローのこめかみにピキッと怒り筋が浮かぶ。
    「おれ何でもやるぞ!! あとおれゴム人間だから」
    「ゴムがなんだって?」
    「そんで腹減った」
    「おっと、メシの支度しねェとな」
     あっさり現実に戻るゾロである。買って来たものをクッキングマシンに放り込む。
     ローもPCに向かい、さっそく何やら計画を立て始めたようだった。
    「サンジがいたらな〜」とかルフィが知らない名を出して独りごちるので、なぜかゾロはムッとした。
    「まだ他に誰か探してたのか?」
     キッチンに向かってマシンのボタンをポチポチいくつか押したが、間違ってしまいクリアした。なにを動揺しているのだか。
    「いーや? おれはゾロとずーっと一緒にいたいだけだ。そんで一緒に死ぬ」
     さらっと、だけどとんでもない告白をされた気がして、少しばかり鼓動が早くなるのは言われたのがルフィだからだと、ゾロはもう認めるしかない。
    「おれはまだ死ぬ予定はねェぞ……」
    「あはは、当たり前だ!」
     冗談めかして誤魔化してみたはいいが、ゾロの心の中にルフィの〝一緒に死ぬ〟の言葉はいつまでも熱く、でも冷たく残った。


     ルフィが本当に500年前から生きているのだとしたら、ゾロはルフィと歳を重ねることが出来ない。一緒には、死ねない。
     そして見つけたのだルフィは、ゾロを。なぜ自分なのかは知らないが、いつか教えてくれるのだろうか。
     ルフィを生かしたかつてのローは、一体ルフィのことをどう思っていたんだろう……?

    「ま、そんなわけだからよろしくなートラ男!」
     バシンと背中をぶっ叩いてギロッとローに睨まれ、ルフィがペロッと舌を出した。
    「ルフィ、お前やっぱ酷ェ奴かもな……」
    「だからそう言ったじゃん。メシまだ?」
    「すぐに出来る。ボタンを間違わなければ」
    「おお〜! これ昔のよりスゲーちっちゃくなったよな〜」
    「そういやお前、500年もどうやって生きて来たんだ? ま、まさか変な仕事とかしてねェだろうなァ……」
     危なっかしそうだから心配になる。コスプレで儲かる仕事とかあんのか? まぁ可愛いし。いや待て可愛くねェ、遥かに年上だぞ……しっかりしろおれ。
    「海賊は奪うもんだ!!」
    「だいたい把握した」
     そしてちょっとホッとした。


     これからどんな共同生活が待っているのか。
     3人の関係はどう変わるのか。
     ルフィは、不老不死の体から逃れられるのか?
     すべてはこれからなのだ。
     ここからの未来は、まだ誰も知らないのだから。



     (続)




    あとがき(読まなくて大丈夫)

    続きはぼんやりと考えてあります。ルフィがゾロの部屋で寝ます!(?)
    本誌で未来島の話が始まりコスチュームとか街並みとか色々可愛いので取り入れていけたらと思ってるんですけどもちろんただの捏造未来です。結構適当です。すいません(汗)

    今後の展開は、ルフィの過去や孤独や相棒のことをゾロが徐々に知っていく過程とか、ローとの三角関係(になるかは不明だけど)とか、ちゃんと書くと長くなりそうだけどゾロルハピエンまでは書きたいなーと思っております。終わりが二つ候補あって迷う……。
    書きたいゾロルが多すぎて私も分身6人ほしいです(無理)

    ありがとうございました。
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    ゲニー

    MOURNING【現パロ/リーマンゾロ×喫茶店員ルフィ】
    ・2018年超GLCで配布した無料ペーパーのデータが出て来たのでまたどっかいかないうちに収納させて下さい(汗)
    ・書いたのは大昔なのでもうないかもしれないですツンデレ喫茶……(本当にありました)
    ・店員ルフィにゾロが落ちるまでの話
    ・女装に非ず
    ・何でも許せる人向け
     『あのコはツンデレ』



    「そりゃまたマニアックなとこに……」
     と、電話口で聞いた同僚の言葉の真意を、ゾロはだいぶん後から知ることになった。
     気に食わない金髪頭を思い出しながら、一体誰のせいで……と内心ぶつくさ、「さっさと来いよ」と念を押す。
     同僚は頷き「ああそれなら」と続け、ゾロにあるひとつの名前を挙げた。
    「絶対ェお前のタイプだから」
     そんな、確信に満ちた声音を残して。


     ゾロは今、『ボア』という喫茶店の前にいる。
     同じプロジェクトを担当しているさっきの同僚、名をサンジというのだが、彼と得意先へのプレゼン帰りだ。
     結果は大勝利。サンジは大口の契約がとれたせいかたいへん機嫌がよく、「おれちょっと行く所あるから、お前先に帰ってていいよ」とゾロに言った。が、ゾロは極度の方向音痴である自覚が残念ながらなかったので、まんまと道に迷ってサンジに泣きつく羽目になる。
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