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    ゲニー

    ZL小説
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    ゲニー

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    【現パロ/詐欺師ゾロル】
    ・「クロサギ」ネタのゾロルです
    ・ドラマ開始嬉しい記念!
    ・何でも許せる人向け
    ・再録ですいません

    #ゾロル
    zolu

     『ふたりサギ』



    「お前、ロロノア・ゾロだよな」

     場違い、がピタリ来る細身の少年が話しかけてきた。
     ここは地下にある小ぢんまりしたバーのカウンター席、の、一番端。
     ゾロはひと仕事したあと、ここで飲むのが好きだった。
    「……人違いだ」
    「おれルフィ! 隣いいか?」
     耳がないのだろうか。いやあるようだから難聴かも。勘弁して欲しい、子供は苦手なんだが。
    「他にも空いてんだろ。つーか未成年がこんなとこ来ていいのか?」
    「あ、失敬だなお前! おれはリッパにオトナだ!」
     ガキのように頬を膨らませ、黒髪でラフな格好の自称“立派な大人”が勝手に隣へ座った。
     そして、悟る。
     恐らく彼は自分がここへ来ることを知っていた。なぜなら彼の言う名の通り、自分はロロノア・ゾロだからだ。
     本名を、コイツは知っていた。
     それがすべてをゾロに悟らせた。
     だが、まだ手の内を見せるつもりはない。
    「で? ソイツがおれだったら、てめェは何を言うつもりだ?」
    「おれと組もう。ゾロが次に狙ってる山」
    「何のことかわかんねェな」
    「おれはアカサギだ。お前の役に立つと思うけど……?」
     ゾロの顔を覗き込むようにルフィが上目遣いを送ってきて、ニィ、と笑った。
     幼い雰囲気が一変、人を取って喰いそうな威圧感と、吸い込まれそうに大きな瞳、その眼力。
     意思の弱い者なら簡単に惹き付けられたに違いない。
     アカサギ──結婚詐欺のことだ。
     他人の愛情と体を喰う、詐欺師。

    「ゾロはシロサギだろ?」
    「……とぼけても無駄みてェだな。おれが次に誰を喰うか、お前知ってんだな?」
    「知ってる。白ひげんとこのエースだ」
    「……ちっ」
    「ゾロの情報高かったんだよなぁ~! だから元も取りてェし、おれと組もう!!」
    「断る。分け前が減るだけだ。それにおれは誰も信用しねェ」
     しねェと言ったわりに、一番信用できないこの同業者を追い返せない。置いていけない。
    「ま、おれも信用はしねェけど。でも仲間になってくれたら信頼する」
    「矛盾してんだろ、変なガキだな。なんでおれなんだ? シロサギなら他にいくらでもいるだろうが」
    「ううん、シロサギん中でもゾロは別格。今までの仕事見りゃ解るよ、レベルが違う。だから好奇心! あとは金。それ以外ある?」
    「つーか役に立つとは思えねェんだが、てめェみたいなガキ……」
    「さっきからガキガキうるっせェぞ!? あのな、どんなに切れ者だろうがベッドの中で惚れたやつ抱けば隙ができんの。お前が欲しい情報は全部おれが吸い上げてきてやる、そんでどうだ? あ、1件1000万な」
    「お前……」
    「おれ、ノンケもその気にさせる自信あるよ?」
     ルフィがまたあの、誰をも従わせてしまいそうな眼光で射てくる。その目は自信に満ちている。
    「なるほど……。男専門のアカサギか。女騙してちまちま稼いでる奴らとは違うと? だが口先だけなら何とでも言える。それでおれが組むと思ったら大間違いだ」
    「とことん疑り深いなぁ……。まぁそう言うと思ったから、これ」
     すっ、とルフィが1枚のカードをテーブルに滑らせた。
    「?」
    「そこのホテルのルームキー。抱いてみりゃわかるんじゃね?」
     何でもないことのように、当たり前のような口調でルフィが言った。頬杖を着いて、ニコリと笑って。これがセックスの誘いかと疑いたくなるほどの……。
     そしてこれを受ければ、交渉は半分成立したようなもんだ。
     それでもゾロはカードを手に取り、
    「男を抱く趣味はなかったんだがな」
     ニヤリ笑んで、立ち上がった。


     夜風が頬に冷たい。
     あと、さすがに歩きにくい。
    「やっぱ痛かったなー!」
     こんなヘロヘロした姿をゾロには見せられないので、ルフィは事が終わってゾロが熟睡中にホテルを出てきた。
     ちゃんとゾロが欲しそうなネタもエサ代わりに置いてきた。あれで飛び付かなきゃ詐欺師じゃねェ。
     これはゾロとおれとの勝負だ、とルフィは思っている。
     初めから手を組むつもりなんかさらさらない。
    「エースを騙そうったってそうはいかねェもんよ……」
     エースはルフィの義理の兄で、大事な人だった。
     ルフィがいつものように面白いシロサギはいないかと馴染みの商売人のところへネタを買いに行ったら、ゾロの情報を提供されエースの危機を知った。
     兄は弟の自分が守る。黙って見過ごせるわけがない。
     訳あって向こうはルフィを知らないけれど、名乗り出るつもりはないので目には目を、歯には歯を……ん? 鼻だっけ?
     ともかく。
     ルフィがアカサギと言うのは嘘だ。
     人じゃなく、シロサギやアカサギを喰う詐欺師──クロサギ。

     男と寝たのは初めてだったけれどあれくらいしないとゾロの記憶の端にも残らないだろう。忘れさせないために体を使った。
     慣れた振りすんのは正直大変だった。でも最後の方はめちゃくちゃ気持ちよくて、演技はいらなくなった。その辺はラッキーだ、自分達は体の相性がいい。
     信用を得られたとは……まだ思っていない。

    「ナカ、熱っちぃな……」
     ガードレールに腰掛け、ルフィはすりっと腹を撫でた。そして指を折って数えてみる。
     えっと、何回出された……?
     まだ鼓膜に残っている男のしゃがれた声。自分の名を呼ぶゾロは、物凄く色っぽかった。
     それと肌の匂いや、熱い翠の眼差しや、自分を掻き乱したゾロの──。
    「ぎゃー! 何思い出してんだおれはエロか!」
     ドキドキ鳴る心臓にルフィはぶるぶるっと首を振った。

     ゾロは、絶対おれが喰ってやる。



    「おれの情報売ったの、あんただろう」
     安い酒で高額の代金をせしめるぼったくりの店、店名はそのまんま、ぼったくりバー。
     ゾロがこの店を訪れたのは久々だった。
    「レイさん、珍しいお客様よ?」
    「ああ、キミか……。来ると思ってたよ」
    「久しぶりだなレイリー」
     その筋で知らない者はいない詐欺業界の重鎮、“冥王”と呼ばれる男。今は一線を退き詐欺師相手に同業者や詐欺被害者の情報を提供する商売人だが、彼に目を付けられたら終いだと言われる程の大物、詐欺師達の頂点に立つフィクサーだ。
     本名と根城を知るのはゾロを含むほんの一握り。
     年齢不詳の美女が、ドカッとカウンター席へ座ったゾロの前にラムのオンザロックを差し出して来た。
    「これはサービスよ、ロロノアちゃん。ついでに何か摘まむ?」
     でもさっきあのコが来て冷蔵庫荒らしてっちゃったの、と笑う美貌にゾロは眉をひそめ、確信を深めた。
    「ルフィ君の情報を買いに来たのかな?」
     薄暗いカウンターの奥、ゆっくりとスツールに腰掛けたレイリーの丸眼鏡がキラリ光る。他人の奥底まで、見透かそうというように。
     ゾロはその問いに軽く首を振り、
    「必要ねェ。アイツが誰だろうがおれには関係ねェ」
    「キミを脅かす存在だとしても?」
    「おれはおれの仕事をするまでだ。ただあんたの本音を知りてェ。おれに、あのガキをどうしてほしい?」
     カラ、とタンブラーの中の氷が小気味いい音を立てた。
    「ロロノア君……。ゆくゆくはキミに、あのコを託したい。ルフィ君は強いが少々危なっかしい。私は老後の楽しみが欲しいだけなのだよ。キミとルフィ君なら、私に面白いものを見せてくれそうだ。どうかね?」
    「……ハッ、何を言うかと思えば。一生あり得ねェだろ」
    「それはどうかな」
     キミはあのコのことを知りたくなるだろう、もっと、もっと──。
     続いた言葉に笑い飛ばす余裕もなかった自分にゾロはギリと奥歯を噛みしめ、酒を一気にあおると店を後にした。

    「あのガキ、まんざらバカでもなさそうだが……」
     曲がりなりにもあんな大物に可愛がられてるわけだし?
     それに彼がルフィのプランニングを行っているとすれば、強敵だ。
     レイリーの過去の偉業を全て知るわけじゃないが、伝説のクロサギ“ロジャー”の右腕だったことは知っている。
     さて、どうするか……。
     ルフィの抱き心地は抜群だった。また抱きてェし、ノる振りをするのも悪くない。
     そして多分、自分は身ぐるみ剥がされてもアイツを恨むことは出来ないだろう──。
     ルフィの肌の感触や、温かさ、ナカの心地よさを克明に思い出せる。こんなことは初めてだったから。
     レイリーの目的は、ルフィの破滅なのかもしれない。
     アイツにこんな世界は似合わない。


    「よう。遅かったな!」
    「……そろそろ現れると思ってたぜ」
     ゾロの自宅マンション、そのエントランスで、ルフィが堂々とゾロの帰りを待っていた。
     誰かを抱いて熟睡してしまったのは後にも先にもアレだけだ。個人情報のいくつかを知られたことは解っていた。
     コイツの前で、人は警戒心を損なう。
     ただ、自分もそうであったことにガッカリしているだけ。
    「お前、アカサギってのは嘘だろう?」
    「何でバレた!?」
    「おれを喰いてェんだよな……クロサギ?」
     喰われるつもりなど、これっぽっちもないけれど。
    「今日はすっげー寒ぃよな~! 入れてくれよ、あったまりにきたんだ」
     やっぱり話を聞かないルフィが無邪気な笑顔を惜しげもなく振り撒き、ばふりと飛びついて来た。
     その彼をゾロはぎゅうっと抱き締め、腕の中に閉じ込める。
     顔を上げたルフィの頬は寒さのためか少し赤みをさしていて──。
    「ルフィ」
    「うん」
     どちらからともなく、唇を寄せ、深く口づけを交わした。
     冷えた互いの唇が熱を持ち始めるのに、そう時間は掛からなかった。


    「ゾロが好きだ」
    「あぁ、同じく」

     そんな言葉、ひとつも信じちゃいねェけど……?

     騙し、騙され。
     化かし合いっこ。

     詐欺の真髄は騙すことじゃない、
     いかに相手を信用させるか──。

    「ゾロは喰わねェよ、おれ。だから仲間になれ」
    「……解った。お前を信じる」

     どちらがどちらの裏をかくのか。
     二人の勝負の幕は今、上がったのだ。
     この結末の果てに何が待つのかそれはお天道様にだって解らない。

     喰うか、喰われるか。

     だけどせいぜい、楽しもうと思う。



    (いつかくっつきます←)

    一応続きがあります。
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    ゲニー

    MOURNING【現パロ/リーマンゾロ×喫茶店員ルフィ】
    ・2018年超GLCで配布した無料ペーパーのデータが出て来たのでまたどっかいかないうちに収納させて下さい(汗)
    ・書いたのは大昔なのでもうないかもしれないですツンデレ喫茶……(本当にありました)
    ・店員ルフィにゾロが落ちるまでの話
    ・女装に非ず
    ・何でも許せる人向け
     『あのコはツンデレ』



    「そりゃまたマニアックなとこに……」
     と、電話口で聞いた同僚の言葉の真意を、ゾロはだいぶん後から知ることになった。
     気に食わない金髪頭を思い出しながら、一体誰のせいで……と内心ぶつくさ、「さっさと来いよ」と念を押す。
     同僚は頷き「ああそれなら」と続け、ゾロにあるひとつの名前を挙げた。
    「絶対ェお前のタイプだから」
     そんな、確信に満ちた声音を残して。


     ゾロは今、『ボア』という喫茶店の前にいる。
     同じプロジェクトを担当しているさっきの同僚、名をサンジというのだが、彼と得意先へのプレゼン帰りだ。
     結果は大勝利。サンジは大口の契約がとれたせいかたいへん機嫌がよく、「おれちょっと行く所あるから、お前先に帰ってていいよ」とゾロに言った。が、ゾロは極度の方向音痴である自覚が残念ながらなかったので、まんまと道に迷ってサンジに泣きつく羽目になる。
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