「左馬刻さん」にまつわる話「よォ、偽善者の一郎くん。まさかこんなところで会うとはなぁ?」
「チッ、なんだよ左馬刻。それはこっちの台詞だっつうの」
「左馬刻、さん、だろうがくそダボが」
「ハッ、誰がさん付けして呼ぶかよ」
いつものやり取り。示し合わせてもいないのに気の向くままに足を動かした場所ではたとかち合ってしまうのは別に今回が初めてじゃない。コンビニ、中華屋、サウナ、そしてここ遊園地。あぁ、二年前にもこの場所でばったり会ってはどちらがつけて来ただ真似しただで喧嘩をした記憶が鮮明に蘇ってきてはくらり、と眩暈がした。
「にしても、ダセェ格好だな。伊達メガネなんてしたところで、全く隠しきれてないんだよ」
左馬刻は続け様に靴から頭のテッペンまでをじっくり見ては煽るように鼻で笑った。
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