暗い所が苦手なエルケさん「エルケさん! 大丈夫ですか!」
藤鷹翔寛は困惑していた。
今日はエルケと月末の事務的な打ち合わせがあった。昼間に関西の方で仕事があり、その仕事が押した事もありEMMCに到着するのが遅くなった。調整してもらった時間はすでに陽が落ちた後だった。
隙を一切見せない絶対零度の魔王が、事務所の打ち合わせ室の入り口を少し入った所で電気も点けずに膝を着いて口に手をあてて俯いている。足元に散らばる資料のコピー用紙に、エルケが今動けない状況なのだと頭が判断する。
部屋に入りエルケの前に回り込んだ藤鷹は痛む足を気にする事なくエルケと同じ目線になるように屈んでエルケの様子を伺った。さらりと揺れる深海の髪の合間から微かに見える表情は堅く目線が震えているようにも思える。藤鷹と共に居たスタッフが数人エルケに駆け寄りあたふたしていると、エルケがじっとりと汗をかいた手で藤鷹の腕に触れた。
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