謎の小さな生き物はマスターの一部らしい。
掌の上で聖晶石にべったりくっついて離れないマスターによく似た生き物をシャルルマーニュは面白そうに眺めていた。
ぼこぼことした突起の多い石は掴み難いだろうに妙な柔軟性を見せて器用にしがみついている。にやけた恍惚の表情も石に頬擦りする姿もなかなか本体のマスターでは見られないもので面白いと思う。
その頬を指先でつつくと小さなマスターはシャルルマーニュに目を向ける。
今まで自分がいる場所を分かっていなかったのか、驚いたように大きく肩を揺らすとますます聖晶石に強く抱き着く。
涙をためて怯えながらも取られまいと、自分の物だと主張しているようだ。
「とらねーよ」
その様子が少し滑稽で可愛らしく、ふはっと噴き出してしまった。
これがマスターの一部だと思うと尚更だ。あんなカッコ良いマスターにもこんな人間らしい部分がある。可愛いものだ。
そうしてしばらくつんつんつついて愛でていると、怯えていたはずの小さなマスターは急に威嚇を始める。
「お」
シャルルマーニュの指をばしばしと叩き払い、それでもだめならと大きな口を開けて噛みつく。残念なことに手袋にしかその歯は届かなかったけれど。
「勇ましいな!うん、やっぱりアンタは何であってもカッコ良いよ」
自分の物を守るために牙を剥く姿に感心していると、小さなマスターはシャルルマーニュを敵ではなかったと判断したらしい。
さっきまで噛みついていた部分を小さな手で撫で始める。
大好きな聖晶石を手放し眉を下げた表情は心配しているのが良くわかる。
指先で小さなマスターの頬を撫でると「おへー」と気の抜ける様な鳴き声を上げて指に絡む。
そのまま頭をなでたり腹をくすぐったりしてみると、楽しそうに手足を振り回してはしゃぐものだからついつい熱中してしまった。
「何やってんの、王様……」
アストルフォがドン引きしていたとはつゆ知らず。