シャルルマーニュが敵の呪いで子供になった。
どういう事だと言われそうだが、これがカルデアでの出来事であることを考えればまあそういう事もあるかで済んでしまう。カルデアはそういう場所だ。
さて、シャルルマーニュは記憶も無いようで、子供になった当初は警戒心むき出しで周りを見ていたが、カルデアにいる数々の英雄の姿や立香たちの真摯な説得に納得し、どうにか心を開いてくれるようになった。
「マスター!」
シャルルマーニュは立香の手を引いて、カルデア内を探検している。あれは何だ、これはどういうものだと、いちいち聞いて回る様子はとても楽し気だ。
立香も警戒しきった様子からここまで気を許してくれたことが嬉しくてニコニコと一つ一つ答えて語る。
出会った英雄たちとも話をし、このカルデアについての事も聞いた。
誰と出会ってもシャルルマーニュは目を輝かせて話をする。時折は立香の事もきいて、カッコ良い!と声をあげた。
一通りカルデアを探索し終わった二人はマイルームへと戻ることにした。
部屋のベッドに腰をかけると、シャルルマーニュは興奮したように話始める。
「やっぱり皆カッコ良いな!」
「そうだね」
先ほど出会った英霊たちを語り始めると止まらない。
立香もうんうんと口元を緩めて相槌を打つものだからなおの事だ。
ひとしきり語りつくした後、シャルルマーニュはぴたりと口を閉じて立香を見た。
その視線に「どうかした?」と立香が尋ねると、ぐっと拳を握ってシャルルマーニュは口を開く。
「俺は、マスターの自慢できる騎士になれるか?」
周りの名だたる英雄に押され、不安になったようだ。
ポカンと口を開けて驚いていた立香だが、その様子に慌てて応える。
「もちろんだよ!すっごく頼りにしてるし、いっぱい助けてもらってる。きっとこれから先も……」
どんどん声が小さくなっていく立香の手をシャルルマーニュは握った。
「じゃあ、絶対、俺は立香を助けるから、だから」
真剣な目に頬を染めて、一度言葉を途切れさせるとぐっと腹に力を込めて。
「俺の妻」
「え!?」
聞こえてきた言葉にも驚いたが、それ以上に急にシャルルマーニュはいつもの姿へと戻った。
「あ、れ?マスター?」
何故か自分はマスターの手を掴み、マスターは赤い顔で自分を見ている。
シャルルマーニュは困惑した。
「えっと、これは……」
「なんでもないよ!呪いがとけて良かったね!」
慌てて手を振り払い、部屋を出て行く立香に、シャルルマーニュは何か自分はとんでもないミスをしでかしている気がすると、無い記憶を何とか思い出そうと頭を抱えた。