輝きのままにあれから、さらに1週間くらい経って突然のオヤジが帰宅して来た。丁度学校帰りに出くわした。
「おぉ、彷徨に未夢さん!元気しとったか」
「親父」
「おじさん…」
「だーかーらー、なんで連絡寄越さねえんだよいつもいつもいつも」
いい加減にキレてもいいだろうか?いつもの事だから言っても仕方ない事だけれど。
「すまんな、わしも忙しかったからの~」
「どこがだよ!今の今までほったからしにしやがって」
「なあにイライラしとるんじゃ。ほれ土産じゃ。荷物運んどいてくれ。あぁそうじゃ未夢さん。未来さん達だが、来月か再来月には一旦帰国するそうじゃ」
帰国の単語に一瞬未夢を見た。動揺、するんじゃないかと。
「…あ、はい。分かりました」
そこまで、ではないようで少し安心した。
「そうじゃこれを預かっておるから中を見ておいてくれるかのう?」
大型の茶封筒。
「明日からここに建築業者が入るんじゃ。あぁ、対応はわしがするから気にせんで良い」
「…建築、業者?」
「親父、何を今更寺に建てるんだよ」
「真相はその茶封筒じゃよ。さて、わしは少し仮眠取るとするかのう」
意味が分からない。
「開ければ?ソレ」
「あ、うん」
茶封筒の中身は2枚の書類。ひとつは何かの権利書の写しか何か、もう1つは…
「……光月家、新築、図面………?」
「お前んちが建つって、ことか?ここに」
「「……。」」
お互いに顔を見合わせていた。新しい情報に頭の処理が追い付かない。要はつまり、
「これ…もしかして転校しなくていいんじゃないか?」
「…転校が、無くなる?」
結論はこれだろう。
「お前の両親がこっちに引っ越して来るって事だろ多分だけど」
「……あ、もう1枚……手紙?ママの字だ。」
手紙の内容は予想通りに転校の可能性が100から0になった事や、引っ越しについて等、後は娘の感謝と謝罪だった。
「……何それ。結局わたしに黙ってまた話し進んでるし……でも…こんなに嬉しいの、初めてだ…彷徨…転校、無くなっちゃった」
「…あぁ、そうだな。良かったな」
そっと、抱き寄せていた。
「一緒にいられるなんて思わなかった…進級も一緒なんだよね?」
「うん」
「どうしよ、嬉しい…」
「うん」
緩やかに手が背に回っている。見上げて来た表情は、涙を溜めていたが、決して悲しい涙じゃないのは分かっている。綺麗な笑顔が、輝きがそこにあったから。
「やっと…笑ったな」
おれ自身直球に、嬉しい気持ちだった。笑みを浮かべていた。こんな自然に笑えたのは久しい事だった。