月の下で踊ろう 「エネルさま」
呼びかければどこからともなく稲妻が駆けてきて目の前に姿を現す。
「なんだ、今日はもう呼ばないつもりかと思ったぞ」
彼と恋仲になったその日からいつのまにか日課になっていたのは彼を呼びつけることだった。はじめこそ不敬にあたるのではと躊躇っていたけれどお前が呼ばないなら我は一生お前の前に現れてやらぬからなと脅しのような、いじけ文句のような台詞を吐かれてしまい今に至る。
「そんなことあるわけないじゃないですか」
どうせわかっているくせに。エネル様は時たまこう子供っぽいところを見せる。そんなところを可愛いと思ってしまうのだけれど、彼はそれが不服らしい。今もほら少しむっとした表情でこちらを見つめてくる。
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