早朝の事件編「…んぁ?」
まだ薄暗い時間だけど、何故か目が覚めた。
よく耳を澄ますと誰かの足音が聞こえる。光忠達が朝餉の仕込みでもしているのだろうか。
「…まだいいか」
もう一眠りする前に少し伸びをした時に、それは起こった。
「い"っっっっ!!!!」
右の脹脛にとてつもない痛みが走って思わず声が出てしまった。
「あ"…や、ば…はせ…」
「お呼びでしょうか主!!」
「どうしたの?!」
掠れた声で呼んだのに秒で来た。しかもなんか光忠も来た。あまりの速さに一瞬呆然としたが直ぐに痛みに意識が飲まれた。
「た、助けて…飲み物と、塩分を…もっい"っっっ」
布団から動けず唸る主を前に長谷部は大変動揺していた。
「あ、主大丈夫ですか?!ど、どこか痛むのでしょうか…?!」
「あ、あしつ…っ…」
「足?!失礼しますよ主!!」
ばさっと布団がめくれる音が聞こえすぐ近くに長谷部の体温が…
「さ、触らないで!!」
「なっ!?」
何故かすごいショックを受けた顔の長谷部にすごく申し訳なさを感じるが弁明する元気もない。
「お待たせ、持ってきたよ。」
枕元にお盆を置いて、なるべく身体をゆらさないようにゆっくり起き上がらせてくれた。
「あ、りがと光忠...」
「な、なぜ...」
反対を見ると長谷部が俯いたまま震えている。
「え...?」
「なぜ燭台切には触れることを許すのですか主ィ!!!!」
あまりに想定外の言葉に足の痛みを一瞬忘れた
「あ、いや長谷部、ごめん違うんだよ俺」
「どうして...奴と何が違うと言うのですか...」
大の大人が大粒の涙をボロボロ零しながら手をこちらに伸ばすこの光景を異様と言わずになんというのだろうか。
「長谷部!!!」
「はい!!」
「別にお前が嫌いなわけじゃないから心配するな"っ"!!!!」
少し足が動いてしまって言い表しようのない痛みが全身を駆け巡る
「あ、主…ど、どうすれば良いんだ燭台切!!」
慌てふためく長谷部を他所に光忠は先程持ってきた塩を指に取り俺の口元に持ってくる
「大丈夫だよ長谷部くん。ほら、口を開けて」
目の前の長谷部の目がこれでもかと言うほどかっぴらいている。おい、光忠ちゃんと説明してあげてくれこれじゃ余計な誤解が…と言いたかったが、じんじん痛む足を早く何とかしたくて大人しく光忠の指に着いた塩を舐めた
「な、なな、何をしている貴様ァ!!!!」
刀はここにないがあれば今にも抜刀しそうな勢いで光忠に詰め寄る長谷部
「主は足をつったんだよ。治すには塩分を摂るのがいいんだ。だからこうして…」
「もういい、もう十分だから」
さらに塩を舐めさせようとする光忠を制止して長谷部をチラ見すると他の人に見せられないような顔をしていた。
この日以降、俺の枕元には長谷部が買ってきたカリカリ梅が常駐することになるのはまた別の話