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    ゆうら

    @08yurayuratti22

    主に鯉鶴・うさかど・菊トニ・尾白が好きですが
    かなり雑食
    色々書けていけたらいいな~
    どうぞよろしくです!

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    ゆうら

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    菊トニで警部×庭師(支部加筆分追加)
    お屋敷の庭師をしている都丹さんと、その屋敷の主人と知人な警部菊田さん
    …ほのぼの、じりじりな感じを目指して書いてみました
    季節のお花をテーマに続きが書けたらいいなぁ
    ※別カプで考えた世界観なので菊田さん何故か警部。ふと屋敷の庭師が都丹さんだったらどうかなと思ったら書いてました。初菊トニ書き…

    #菊トニ
    chrysanthemumTourney

    芝桜 -白-(1)

    一面に広がる白い芝桜。

    春の陽の光を受けて、ふわりと輝く花畑。

    その中心に佇む白い人。

    白髪で白い肌をした老齢の男。

    見るもの全てが白一色に包まれて、それはこの世のものではないほどに…

    「・・・綺麗だ」

    その光景に思わず、言葉が口をついて出てしまった。
    呟いた言葉は、目の前に佇む男の耳に届いたようだった。
    男の顔がこちらに向けれらる。
    しかしその視線は噛み合わない。

    白い男は、眼も白かった。

    人ならざる者のように感じてしまう。
    自分とは違う世界に、彼がいるようだった。
    そこで、はたと気づく。
    初対面の男に言う台詞ではない。
    思わず自分の口を押え、苦笑しながら彼に話しかけた。
    「ここは貴方が管理されているのですか?」
    すると白い男は小さく笑う。
    「ええ。ここの庭師をしております。貴方は…ご主人様のお客様でしょうか」
    そう言いながら、足元に置いていた白杖を拾って、こちらに歩いてきた。
    そこで気づく。

    彼は目が見えていないのだ。

    「ああ、お仕事中にすみません」
    「いえ、いいんです。丁度休憩しようと思ってましたんでね」
    彼は花を踏むことなく、こちらに近づいてきた。

    刈りあげられた白髪。
    彼の顔には長年刻まれてきた皺があり、額には大きな傷跡があった。
    しかしその表情はとても穏やかで、見ていると心が休まるようだった。

    「そんなに見ないでくださいよ、穴が開いちまう」

    彼は笑う。
    思わず胸がどきりと鳴った。

    相手には見えていないとはいえ、つい無遠慮に見てしまった。
    「も、申し訳ない」
    「ははは、こんな盲の爺を見ても、楽しくなんかないでしょうに」

    目元の笑い皺。

    それが見える距離に男がいる。
    楽しいどころか、見惚れていた事に気付いて、思わず頬を掻いた。

    男に促されて、共に東屋へと移動する。
    木製の腰掛に促され、彼の斜め横に座った。

    「申し遅れました。私はこちらの庭師をしております都丹と申します」
    「私は菊田と申します。土方様とのお約束の時間まで幾分かありまして、こちらの庭を散策させていただいておりました」
    そうですか、と彼は相槌を打つ。
    ここからあの白い芝桜が見える。

    白い花は光に滲んで、雲のように見えた。

    そこの主は、今自分の隣にいる。

    「都丹さんは、いつからこちらに?」
    「もう30年になりますかねぇ。この目になっちまってから、どうにもならなくなってたところを、土方様が拾ってくださったんです」
    「そうでしたか・・・」
    こちらが聞きにくいことを、スラスラと彼は言う。
    「盲の男に庭の世話をさせるなんて、あの人も随分だと最初は思いましたけどね。性分に合ってたみたいで、今まで務めさせて貰ってます」
    すると彼は笑う。
    「いいですよ。この目なんか気にせず聞いてください」
    「・・・植える花や草木は、都丹さんが決めてらっしゃるんですか?」
    「ええ、そうですよ」
    「そうなんですね。とても綺麗な白い芝桜だと思ったので・・・」
    それでさっきあんな言葉を呟いたのだと、思ってくれただろうか。
    随分、言い訳めいた事を言ってしまったと気づく。
    すると彼は言葉通りに受取ったようで、嬉しそうに笑った。
    「そうですか。あいつらを褒めて貰えて嬉しいですねぇ」
    「管理が大変でしょう?」
    「最初は大変でしたよ。でも触れば一つ一つ感触が違うし、匂いも違う。結構上手くいくもんですよ」
    そう言って、花畑の方を向く。
    彼の目に花々は見えていないが、その白い目に花々が映っていた。
    「このような仕事を与えて貰えて、ご主人様には感謝してもしきれませんね」
    そうやって彼は笑う。

    ・・・何故だろう。たまらない気持ちになる。

    彼の心は草木や花々…そして主人である土方様に独占されているように感じた。
    だからだろうか。

    どこか浮世離れしたような雰囲気が漂っている。

    「ねぇ、都丹さん」
    「なんですか?」
    「また、ここに来てもいいですか?」
    「ご主人様が許されるなら、いつでもどうぞ」
    小さく胸が痛む。
    彼は当たり前の事を言っており、主人に対して当たり前の感情を持ち合わせているだけだ。

    感謝と敬愛。

    長年培ってきた信頼。

    俺とこの人の間には、まだ無い感情。

    ・・・そうか俺は、この人に俺を知ってほしいのか。

    「ええ、必ず許可を貰ってまた来ます」
    「そうですか・・・ここが気に入って貰えて、私は嬉しいですよ」
    これから、知ってもらえばいい。
    親子程も離れた男に向ける感情ではない事は、気づいていた。
    でも、気づいてしまった。
    彼に別れを告げて屋敷へと向かう道すがら思う。

    この年になって、うんと年上の男に一目惚れするなんてなぁ・・・。

    でもそれだけ、あの花園の光景は強烈だったのだ。
    運命を感じるほどに・・・。

    振り返って、白い花畑を眺める。

    きっとこの花畑は、貴方の心の風景なんだろうと思った。
    その風景に俺も居たいと思うのは、欲張りだろうか。


    (2)

    あれから、たった3日後に俺は白い庭に来ていた。
    白い花々は、しゃがんだ彼を包むように咲いている。
    遠目からその光景を見ていたくて、庭の手前で眺めていた。

    少し厳つい顔つきの男だ。
    どうみても華奢というわけでもない。
    しかし、白く浮かぶその姿を見ていると、花々の化身か何かのように見えた。

    とても穏やかな気持ちになる。

    ・・・覗き見のようで良くないな。
    そう思い立って、彼の方へ足を向けた。
    すると彼は少し顔を上げ、首を傾ける動作をする。
    僅かな足音を聞き取っているのだろうか。
    こちらの位置を確認すると、手にしていたスコップをバケツに入れて立ち上がる。

    「こんにちは」

    話しかけてきたのは、彼の方だった。
    「こ、こんにちは。また来てしまいました」
    声だけで俺だと分かるだろうか。
    少し不安に思うくらいなら、最初から名乗れば良かったと思った。
    「菊田様ですよね。どうぞどうぞ」
    覚えてくれていた事に、年甲斐もなく心が躍る。
    「都丹さん、分かるんですか?」
    彼はもちろん、と頷いた。
    「菊田様の声はとても良いお声ですから、すぐわかっちまいますよ」
    良い声と褒められて、胸が高鳴った。
    今日、彼は白杖を持っていなかった。
    バケツを片手に、それでも足元の花を踏まずに歩いてくる。
    「杖は・・・」
    思わず聞いてしまった。
    「ああ、大丈夫ですよ。見えはしませんが、ここは慣れていますから」
    前は念のため、持っていただけだという。
    以前と同じ東屋の腰掛に2人に座る。
    距離は人1人分。
    彼は苦笑しながら話した。
    「でもねぇ、やっぱり予測できない障害物につい躓いちまう事もあるから、怪我が絶えませんよ」
    なんてことないと笑うが、とんでもない話だ。
    「まさか、その額の傷・・・」
    ああこれ、と自分の額をさすりながら言った。
    「これは違いますよ。昔ちょっとね」
    「昔・・・」
    聞いても面白くないですよ、と笑う。
    「土方様と一緒にね、まあ色々してましたから。何となく分るでしょう?」
    「・・・なるほど」
    土方様の旧知の仲間の1人。
    こう見えて、昔はなかなかヤンチャな人だったのかもしれない。
    いや、もしかしたら、普段はもっと砕けた話方をするのかもしれない。
    きっとこの話し方も、余所行きのものだ。
    「都丹さん」
    「なんでしょう?」
    「俺の名前に”様”は付けなくていいですよ」

    彼は一瞬言葉に詰まる。

    「・・・ご主人様のお客様にそのような・・・」
    「いいんです。それに俺はそんな大したもんでもないですし」
    少しだけ彼との距離を詰める。
    その気配に気づいたのか、彼は少しだけ後ずさった。
    「俺は土方様とは同業者じゃないんです。一介の警察官です」
    ここで自分が役職が警部だと言ってしまうと、距離を縮めるのに邪魔だろうと思い、言わなかった。
    「だから”様”なんてガラじゃないんですよ」
    「ですが・・・」
    「俺、都丹さんと友達になりたいんです」
    ちょっと迫りすぎだろうか。
    だが、少々押さないとこの人は『うん』と言ってくれないような気がする。
    やれやれ、と首を振り、少し呆れたように言う。
    「菊田様は・・・」
    「…」
    こちらの不満に気づいたようで、言い直してくれた。
    「菊田さんはお若い方でしょう?会ったばかりの爺と友達になりたい、なんて・・・」
    「年は関係ないでしょう?こんな素敵な庭を管理されている方だから、きっと良い方なんだと思ったんです」
    「・・・素敵な庭ねぇ・・・」

    おや、と思った。

    そのぞんざいな言い方は、知らない彼を見られたようで嬉しくなった。
    訝しく思っているに違いない。
    「何か企んでいるとかではないですよ。本当に貴方と仲良くなりたいだけなんです」
    言えば言うほど、彼の眉間に皺が寄る。
    はぁ、とため息をついて、頷いた。

    「よしてくださいよ、なんか口説かれてるようでむず痒い・・・」

    図星だったが、決して口にはしない。
    今は、まだ本音を言うつもりはない。
    「あまり深く考えないでください。時々、ここでこうして一緒にお話ができればそれでいいんです。どうですか?」
    「・・・まあ、それなら」
    心の中で万歳三唱だ。
    「よかった!」
    自分の声が思わず弾んでいるのを感じた。
    彼もそれに気づいて苦笑する。
    「・・・物好きですねぇ」
    頬杖をついて、こちらに向ける表情は、呆れつつも嫌がっている風では無かった。
    「都丹さん、お時間大丈夫ですか?ああ、作業中でしたよね」
    足元に置かれたバケツとスコップに目が留まる。
    「いえ、別に大丈夫ですが、何ですか?」
    「良かったら庭を案内してもらいたいんですが・・・」
    すると彼は首をかしげる。
    「案内って言っても、大した事はできませんよ。手を加えた、切った、植えたしか言えません」
    「それでいいんです。貴方と歩きたいので」

    ・・・逢引の誘いっぽいな。
    流石に引かれたか?

    「そうですか。まぁ、いいですよ」
    よし、深く考えてくれなかったようだ。
    「では早速・・・」

    いつもの女性にやる流れで、都丹さんの手を取っていた。

    しまった・・・。

    「え、えっと・・・」

    何か言い訳をしなければと思っていたが、都丹さんは気にするでもなく立ち上がる。
    行かないのか?という表情で、こちらに顔を向ける。
    そこで気付く。
    そうか、目が見えない彼だから、こういう扱いをされる事が良くあるのかもしれない。

    え、なにそれ。
    手を握っても問題ないって事?
    思わず息を大きく吸い込み、ゆっくりと吐き出した。
    十代の若者でもあるまいし、手を繋ぐくらいで何をそんなに興奮する事もあるかと思うが、年上の都丹さんの前では仕方がないような気がした。

    小さく笑う声がした。
    「どうしました?」
    「い、いえ・・・」
    「できれば次は、声をかけてから触ってくださいね。この通りなんで、驚いちまいますから」
    「あ、そうですね。すみません」
    こちらの動揺を見透かされているような気もしたが、考えないようにした。

    都丹さんの手は少し冷たく、先程弄っていた土の粒の感触がした。

    「・・・ああ!すまね…すみません。手を洗いましょう」

    口調が一瞬乱れる。
    都丹さんは慌てたように手を放そうとしたが、それを逃すまいと握り占める。
    「気にしませんよ。さ、行きましょうか」

    手は繋げた。
    では、どこまで許されるのだろう。
    ちょっと好奇心が疼く。

    彼は隣の男から恋慕の情を向けられるなんて思ってもいない。

    今はそれでいい。

    彼の左手を握り、心地のいい声を聞きながら、春の庭を2人でゆっくりと歩いていった。


    (3)

    この屋敷の庭は、とにかく広い。
    今日も都丹さんと手を繋ぎながら、庭を散歩していた。
    今日も手を繋いで歩きながら、ちらっと見える柵の向こう側が気になった。
    柵によって区切られた庭。
    植物はあるものの華やかさが足りない気がした。
    「ねえ、都丹さん。あっちは?」
    立ち止まって、握っていた手をそのままに、そちらの方へ向ける。
    「そっちは秋の庭園ですよ。今は秋に開花する花を植えたり、土壌を休ませたりしてるので、ちょっと寂しい感じでしょう?」
    そうだね、と相槌を打ちながら、その庭園を見つめる。
    「都丹さん。秋になったら是非あっちも案内してよ」
    少し笑う気配がした。
    「秋になっても来る気なんですか?」
    「もちろん。友達に会いに来るのは当たり前だからね」
    その頃には友達どころか、もっと仲が進展しているかもしれない。
    手どころか腕を組んで、秋の景色の中2人で歩いているかもしれない。

    ぎゅっと手を強く握る。

    「どうかしました?」
    「ちょっと都丹さんとの未来を思って楽しくなったんだよ」
    「俺との未来?」

    一人称が『俺』になってる。
    少し動揺している気がした。

    「…未来なんて…そんなもの…」
    「はっきりしない?そうかもね。でも俺は都丹さんと秋になっても、ここで一緒に散歩してると思うよ」
    苦笑しているが、それ以上何も言わなかった。
    俺よりも年上の彼だ。
    曖昧な未来を、子どものように信じられないのは無理はない。
    でも、俺だって子どもじゃない。

    「言ってしまえばそれは言葉として残るだろ?」
    「言葉なんて形ないもんだろ。そんなものに確証はない」
    「…少なくとも、都丹さんの心に残せるよ。今日、ここで散歩しながらした約束を…」

    ぽつり、と彼はいった。
    「…忘れちまうよ」

    俺は言った。
    「じゃあ、俺が忘れない」

    いつの間にか都丹さんの敬語が取れていた。
    嬉しく思いつつも、何故か寂しそうに見える都丹さんの事が気になった。

    何を、彼は忘れたいのだろう。

    その事に踏み込めない今の関係に、俺はもどかしく思った。


    (4)
    あれから仕事の合間を縫って、何度も彼に会いに行った。
    我ながら涙ぐましい努力をしていると思う。

    あの白い芝桜は、散り始めている。

    変わりゆく景色と違い、彼は初めて会った時と変わらず、どこか掴めない雰囲気を纏っていた。
    それでも、だいぶ親しくなれたと思う。
    他人行儀だった口調はだいぶ取れてきたし、冗談を軽く言い合えるまでにはなれた。
    もっとも、手を繋ぐ以上には発展していないのだが・・・。

    「もうすぐ夏でも来ちまいそうな陽気だねぇ」

    いつもの東屋で一休みしながら、都丹さんは首元の釦を1つ外す。
    少し斜め前に座る俺の目に、飛びこむその光景。
    一瞬、下世話な思考が頭をよぎり、持っていた水の入ったコップを煽った。
    飲み切ってしまったコップを握りつつ、悟られないよう小さく息を吐く。
    何か言おうと、肌に感じる気温のままに言葉を出した。
    「たしかに、こう暑いと海に飛び込みたくなるな」

    空は抜けるように青い。
    夏の空のような高さは無い。
    しかし今日の眩しい日差しは、肌を焼くだろう。

    「海か・・・久しく行ってないなぁ」
    「都丹さんは泳ぎは得意?」
    さあ、と彼は言う。
    「昔はそれなりに。この目になってからは全く泳いでねぇから…どうかな?」
    「そっか。じゃあちょっと先だけど、夏になったら俺と海に行かない?泳ぎに不安があるなら、手を繋いで先導するからさ」
    あわよくば、これをきっかけにして、更にお近づきに・・・という気持ちもないわけではない。

    2人で旅行なんて、いいよなぁ。

    都丹さんは笑う。
    「おいおい、爺を海に誘うとか大丈夫か?いい人と行きなよ」
    その”いい人”は貴方だから、誘ってるんだよな…。
    ちょっと考えて冗談めかして言った。

    「都丹さんと一緒なのが、いいんだけどな」

    不意に笑顔が消える。
    ・・・まずい、踏み込み過ぎたか?

    「あのなぁ、冗談でも言っちゃいけねぇ事があるぞ?お前さん、屋敷の女中達が良く噂してるのを聞くぜ?」
    「噂?」
    都丹さんは、暑いのか更にシャツの釦を外す。
    思わず目が彼の胸元に向かう。
    彼は見えていないから、気付くはずもなく話を続けた。
    「菊田さんは”良い男”だってな。よくここに来るから、取りなしてくれって相談を受けた事もあるくらいだ」
    ・・・余計なことを、と思いつつ話を聴く。
    「色男のあんたが、男相手の冗談でも、逢引の誘いなんかしちゃあいけない。折角の縁も消えちまうぞ?」
    「俺は別に気にしないけどな」
    「・・・より取り見取りだからか?」
    違う、という意味で都丹さんの隣に座り直した。
    「あのね、都丹さん。俺にも考えがあって独り身なの」
    「考え?」
    「そう、俺なりに考えているのさ」

    近づいたからこそ、白い首筋が良く見えた。
    無防備になっている胸元も。
    役得ではあるが、自分がそういう対象だと思われてない事は、少し寂しい。
    そこで、ちょっとだけ仕掛けてみる事にした。
    「それに今はさ、こうして・・・」

    触るよ、と声をかけて、彼の左手を取った。
    自分の右の掌を滑らせるように合わせて、指を絡ませる。

    びくり、と動いて彼は体を離そうとしたが、そのまま優しく握りしめると、その場に留まってくれた。

    「こうやって都丹さんと、手を繋いで一緒にいるのが、今は一番嬉しいし、幸せなんだよ」

    少しだけ、彼の白い頬が染まった気がした。

    「・・・え・・・あ」

    彼は何か言おうとして、言えなくて・・・。

    「・・・ったく、何なんだよこれ」

    やっと吐き出した言葉は、困惑しているようだった。

    ・・・これは、一歩進めたのでは?

    本当はそのまま手の甲に口付けたいくらいだが、さすがに出来ない。

    「・・・離せよ」
    「それはダメかな。だって今日もこれから散歩でしょ?このまま繋いだ方がいいし」
    「あのな・・・散歩んとき、こんな繋ぎ方しないだろ」
    小さく「・・・友達は」と聞こえた気がした。

    指と指が絡むように繋がれた手。
    恋人繋ぎのようなそれ。

    彼の手は開いたままだが、俺の手はしっかりと握りしめている。
    都丹さんも握り返してくれたらいいのに・・・。

    俺は気づかないふりをして、立ち上がった。
    「ほら、行こうか」
    「おい!」
    言っても聞かないと諦めたのか、都丹さんも続いて立ち上がった。

    「・・・強引だな」

    あきれるように呟いた彼の手。

    されるがままだったその手。

    東屋を出た時には、握り返してくれていた。

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