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    ゆうら

    @08yurayuratti22

    主に鯉鶴・うさかど・菊トニ・尾白が好きですが
    かなり雑食
    色々書けていけたらいいな~
    どうぞよろしくです!

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    ゆうら

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    博物館のひと(バレンタイン番外編です)
    学生宇くんと学芸員門さんの初めてのバレンタイン話
    甘い物といえば鶴さん…と言うことでモメてもらいました!ごめんよ門さん…

    #うさかど
    houseFrontage

    博物館のひと【バレンタイン番外編】(1)

    義理チョコ。
    友チョコ。
    本命チョコ。
    バレンタインに贈るチョコには、色々な関係性が見えてくる。

    「門倉さん…それ…有名な高級チョコですよね…」

    俺の手に握られているのは、手触りも良い包装紙に包まれたチョコ。
    ソレを見る宇佐美の目が…怖い。
    「いや…これは…」
    「浮気ですか?」
    いやいやいや…そんな度胸無いよ?!
    こんな嫉妬深い恋人がいて、そんな自殺行為出来るわけがない!
    「貰ったんですか?あげるんですか?」
    「…あ…あげるやつ…です」
    そんな目が据わった状態で言わないでくれ…
    素直に言えないじゃないか!!
    「…誰ですか?」
    あぁ、宇佐美相手じゃないのはハッキリ分かっているようだ…
    これは正直に言うしかない。

    「…鶴見」

    例によって、何の因果か学生時代からの親友である鶴見の名前を呟く。
    はぁ…と大いにため息をつかれた。
    「わかんだろ…友チョコとか言ってアイツが食いたいから、わざわざリクエストしてきたんだよ…」
    「鶴見さんを"アイツ"呼ばわりしないでください!」
    もー、こうなるって分かってたから隠してたのにぃ…
    手にしたチョコを鞄に仕舞いながら言った。
    「お前だって渡してるんだろ…」
    ちょっとモヤモヤしながら、ぽつりと呟く。
    「はい!当然ですね!」
    だろうよ。
    確認するまでもない。
    「厳選に厳選を重ねた有名店のチョコを、半年前から予約してお渡ししました」
    うっわ…これだから鶴見信者は…
    「それに、鶴見からも貰ってるんだろ?ゼミ生には渡してるって言ってたぞ」
    「ええ!頂きました!!それはそれは美しい形のチョコレートでした」
    「美しいって…」
    「もちろん飾ってます」
    「ああ、そう…」
    神棚にでも奉ってそうな勢いだな。
    鶴見の甘い物に対する熱は凄まじい物があり、美味しい店の情報に詳しいのはもちろん、自分で作ったりするのだ。
    そう…ゼミ生達に渡したチョコは、鶴見の手作りだった。
    店売りしてるのかと言いたいレベルのチョコアソートは、まるで宝石のようで…

    「…確かに良い出来だったもんな」

    ……あっ

    宇佐美の目がギラリと光る。
    「何で知ってるんですか?って聞くまでもないですね。どうせ一緒に作ったとか何とか言うんでしょ?!」
    「…はい」
    「まさか門倉さんが作ったのも入ってるんですか?」
    「…いや…入ってないよ」
    ふうん、と相づちを打ち、ジロッとその強い眼力が俺の顔に刺さるようだ。

    「貰ったんですね?」
    「な、何を?」
    「鶴見さんから、貰ったんですよね?」
    「も…もらっては、無い」
    「では、何をしてもらうんですか?」

    ちょっと…顔近くない?

    「ご…ご馳走に…なる予定、です。明日…」
    明日2/15は、バレンタインでもない普通の日だ。
    なのに鶴見に渡すチョコを、今鞄に入れるのにはワケがある。
    明日、鶴見の家に呼ばれているのだ。
    なんでもチョコを使った料理を振る舞ってくれるらしい…
    「なんで門倉さんが鶴見さんの家によばれるんですか!!」
    「だって…」
    「分かってますよ!し・ん・ゆ・う、ですもんねぇ?!!」
    分かってんじゃん…
    まぁ、当たりたいだけだよな、これ。

    何だか頭痛くなってきた…

    俺は後ろ頭を掻きながら、ノロノロと台所へ向かう。
    背中に冷たい視線を背負いつつ冷蔵庫へ向かうと、奥の方に手を突っ込んだ。
    「…ほれ」
    嫉妬深い恋人にソレを渡せば、キョトンとした顔をした。
    「これ…何ですか?」
    なんか恥ずかしくなって、モゴモゴと言ってしまう。

    「…チョコ…なんじゃねぇの?」

    宇佐美は受け取った箱を凝視している。
    透明な包装紙から箱を取り出し、中を見てクスリと笑った。

    「門倉さん、これ…手作りですか?」

    不器用なトリュフチョコ。
    泥団子のようになってしまったけれど、俺なりに頑張ったそれ。
    「…うん」
    宇佐美は一粒摘まんで、口に含んだ。
    「甘いです」
    「うん」
    「ちょっと甘すぎですけど…」
    「そう?鶴見は美味しいって言ってたけど…」
    「……それなら、ちょうど良いです」
    ふふっと笑って、ぎゅっと抱き締められた。
    そのまま笑った唇に、己のそれが合わさる。
    チョコ味の舌が、俺の舌を擦りその口内に引き込まれた。
    …うん…確かに甘すぎるかも。
    唇が離され、俺に笑顔が注がれる。
    「ありがとうございます。凄く嬉しいです」
    「…うん」
    何だか照れくさい。
    「…鶴見さんに作り方を教わったんですか?」
    「あー……うん。折角だから…その…な?わかんだろ?」
    「分からないので、ちゃんと言ってください」
    ここは察して欲しいが、宇佐美はこういう事をハッキリ聞きたがるんだよな…
    「…その…付き合って初めてのバレンタインだし、俺なりに…その……気持ちを伝えた…く…て」
    ヤバい、恥ずかしい!
    「…作り方とか…よく分かんねぇから…鶴見を頼ったんだよ…」
    顔が赤くなるのが分かる。
    宇佐美はといえば、嬉しそうな笑顔を見せている。
    「もう…それを早く言ってくださいよ!はい、これ!」
    「え?」
    そう言われて渡されたのは、中くらいの箱だった。
    リボンを解き、包装紙を外して箱を開ければ、中に丸い形のガトーショコラが入っていた。
    「僕から門倉さんにです。僕もいちよう手作りですよ?」
    俺とは違い、綺麗な形をしている。
    「これの中には……あ、内緒にしときます」
    「ええ??何入れてるのぉ?」
    ちょっと食べるの怖くなったんだけど…
    「変なモノ入れてませんよ。…え?まさか期待しちゃいました?」
    「期待ってなんだよ!」
    あんまり突っ込むのも怖いので、それ以上は口を閉じておいた。
    「温めた方が美味しいですよ」
    ぱっと、手から奪われると、皿に乗せて電子レンジに突っ込まれる。
    程なくして温められたガトーショコラに、冷蔵庫から取り出したバニラアイスが添えられる。
    「はい、どうぞ」
    フォークをこちら向きに置かれれば、食べるしかない。
    温められた為に柔らかくなったガトーショコラ。
    中からドロッとした物が出てくる。
    …見た目は普通だな。
    「意外ですね。食べ慣れてる感じがする」
    そりゃ…鶴見に色んなカフェやら甘味処に連れて行かれるからな…と、危うくそう言いそうになり、唇を噛む。
    「…すごいな。店で出てくるやつみたいだ」
    そう褒めれば、宇佐美は素直に喜んだ。
    「そうですか?それは良かった!そうそう、後で鶴見さんと食べた店、教えてくださいね」
    …バレてる。
    誤魔化した意味なし。
    気を取り直して一切れフォークで刺し、中から出てきたチョコを付けて口に入れる。

    ほろ苦いチョコ。
    ただ、ほんのりとだが、馴染みの香りがする。

    「これ…日本酒?」
    「はい!当たりです!」

    主張し過ぎない程度の酒の香り。
    ふわり鼻腔を通って、なんだか気分が良くなりそう。
    「どうです?」
    「うん。美味しいよ」
    「そうですか、良かった!上手くいくかちょっと不安だったんですよね」
    食べてないのだろうか?
    そう思って一切れフォークに刺すと、宇佐美の唇に押し付けた。
    「ほれ、食べてみ…」

    …ん?なんだか宇佐美、真顔になってない?
    …あ、食べてくれた。

    「な?上手いだろ?」
    「僕が作ったんだから美味しくて当然です…じゃなくて…」
    流れるように自画自賛するのな…
    「すごく自然にやってますけど、まさかこういう事、他の人にもやってないですよね?」
    「こういう事?」
    え?別に変じゃないよな?
    これ旨いから食べてみなって…こう…
    …あ!ああ~!!
    「なんだ?『はい、アーン』みたいなこと?」
    「……まあ、そういうやつです」
    「ええ?だって美味しいやつ、他の人にもあげたいじゃん…」
    ジッと見てくる目が怖い。
    「あー、衛生的な意味でイヤって事?」
    「僕は門倉さんのなら大丈夫ですけど、まあ人によってはあるでしょうね。でも、その様子だと断られた事ないでしょ?」
    「まぁね…つっても、友達にしか、したこと無い…け…ど…」
    空気が冷え切る気配がする。
    しまった…
    かなりヤバい地雷踏んだ気がする…

    「鶴見さんにしてるんですね」

    うっわ…やべぇ。
    そこか、引っかかったのは!!

    「いや…今はしてない!してないぞ!!」
    今もシェアはするけど、自分が使った食器を使って食べさせたりはしていない。
    「今はっていう事は、前はしてたんですね?」
    「っていっても、昔な!結構前!!」
    そういう風に言えば、少しだけ宇佐美の眉間の皺が減る。
    ほんと、鶴見に対しての想いが重いな…
    「ま、取り戻せない過去の事なら仕方がないですね…」
    いや、待って。
    その表情、納得いってないよね??
    「門倉さん…」
    「な…なに?」
    手にしていたフォークを取り上げられ、素早くガトーショコラ本体に刺す。
    「はい、アーン」
    「ちょ…デカすぎない?」
    切り分けられる事無く差し出される、大きなガトーショコラの塊。
    グイグイと唇に押し付けられて、思わず呻く。
    「ちょ…っと……んむ…」
    「……」
    なんか、息荒くなってきてない?
    「む……むり…だって…ふっ…」
    どうしたどうした??
    なんで顔が赤くなってんの?!
    「門倉さん…」
    「んんっ…な…なに?」
    「勃ちました」
    「はぁ??」
    なんでそうなる?
    「門倉さん、エロ過ぎです!こんな外も明るいうちから、なんて声だすんですか!!」
    いや、お前のせいだろ!
    やっと口から放されたチョコが、皿の上に置かれる。
    眼前に迫る宇佐美の顔。

    「あーあ、こんなに汚しちゃって…」

    いや、汚されたのよ?俺。
    ペロッと頬を舐められ、そのまま包み込むように唇が重なる。

    ほんのり甘い酒の香り。
    ほろ苦いチョコの味。

    「じゃあ、残りはこのまま頂くとしましょうか」

    にこりと笑うその顔に、俺は内心ため息をつく。
    結局こうなるんだよなぁ…

    「安心してください。明日、鶴見さんが困らないよう、手加減しますので!」

    その気づかいを、少しは俺に対してしてくれ!!
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