金目鯛の煮付け銀時の風邪が完治してから数週間が経った。今日は万事屋へ行く約束をしている。
贔屓にしている魚屋で目についた金目鯛の切り身を二枚包んで貰い、それを手土産に万事屋に向かう。
呼び鈴を押して反応を待った。
「よう、待ってたぜ」
銀時が出迎えてくれる。家の中に入ってから魚屋の袋を渡した。
「何これ、魚屋の包み?」
「あァ。贔屓にしてる店の金目鯛だ」
「えっ、高級魚じゃん」
「高級って程でもねェがな。俺ァ煮付けが食いたくなっちまった」
そう言って口角を上げると、銀時は納得したような表情をした後少し考え込む。
「なるほどね……あー、でも生姜がねェな。高杉君が買ってきてくれたら銀さん美味しいの作っちゃうけど」
ねだるようにそう言われて火を着けようとした煙管をしまう。
「いいぜ、買ってきてやる。だが、」
銀時の腕を引きながら玄関へ向かった。
「テメェも来い」
「ちょ、引っ張んな馬鹿力! いでで腕もげる!」
「うるせェ、耳元で騒ぐんじゃねェ」
「お前のせいだろーが!」
どこか懐かしくも感じるくだらないやり取りをしながら万事屋の外階段降り、銀時と並んで歩き始めた。
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生姜を買うだけで出たはずが、銀時にあれもこれもと買い物カゴに入れられ、結局会計時に四桁の金額を支払っていた。更に帰りに甘味も買わされたが、まァいい。
そんな買い物を終え、俺は台所の見える位置に座って一服している。その台所では銀時が料理をしている。
「んー、こんなもんか。あとは煮汁吸うまで待ってれば完成だな」
そう言った後フリルの付いたエプロンを外しながら向かいの長椅子に腰掛ける銀時。
「いい匂いだな」
「おー、美味いから覚悟しとけよ」
「こないだ持ってきた酒、残ってるだろうな?」
「もちろん。あ、さっき煮魚に少し入れたけど、二人で飲む分はあるぜ。食後でいいだろ?」
「あァ」
会話が切れるがそれも心地良い。
窓の外にはもう星空が見える。夕飯時だ。
「そろそろ頃合いかな〜」
そう言いながら鍋の方へ行く銀時を眺めながら煙管をしまう。
「おー、美味そう! 高杉君、飯運ぶの手伝ってー」
返事をする代わりに立ち上がった。
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「「いただきます」」
銀時作の飯を前に手を合わせて挨拶をする。
テーブルには味噌汁やおかずがたくさん並んでいる。
「たくさん作ったな」
「そりゃ、お前とあの白米食うなら美味いおかずが必要だろ」
あの白米。
先日息子が鬼兵隊に入っていたという父親の米屋のもの。そこの良い米を購入し、俺の家と銀時の家に週一で運んでもらっている。
「ほんと、ここのは美味い米だよ」
「そうだな」
金目鯛の煮付けを口に含んだ。
美味い煮汁を吸った柔らかい魚の身の味が口の中に広がり、噛み締める。
「……うめェ」
「そいつァ良かったよ」
その後食べる白米がまた美味い。
他のおかずも、味噌汁も、全て俺好みの味付けで美味く、無言で食い続けた。
気が付いたら茶碗の白米がなくなっていて、銀時がよそってくれた。何も言っていないのに。
「おかずあるし、まだ食うだろ?」
「あァ」
「お前、さっきから無言で食ってるけどそんなに美味い?」
「あァ。毎日食いてェ」
特に意識せず、呟くように本音を言うと、銀時が驚いた顔をして俺を見ている。
「高杉君、何言っちゃってんの? そちらにも美味い飯作る部下がいるでしょ」
「あァ。だがあいつのとはまた味付けが違う。俺ァ、こっちの方が好きだ」
「あっ、そう……そりゃ、食材さえあれば俺も色々作れるけどね」
銀時にそう言われて閃いた。
「依頼すればうちで飯作ってくれたりすんのか?」
「えっ、依頼してくれんの?」
「週一かニで頼みたい」
「やるやる。飯作って金貰えるなんて最高だし。お前んとこ何人いるんだっけ?」
「今は十人もいねェ。戦の頃はもっと作ってたから余裕だろ」
「うん、そうだね」
思わぬ依頼をもらえてホクホク顔の銀時。
そんな表情を見ながらこの食事の最後の一口を噛み締めた。
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銀時の飯を噛み締めながら食う高杉が書きたくて書きました。
この後ダラダラ続いたりしたけど、なんだか話が逸れてしまう気がしたのでバッサリ切り捨ててここで終わりにしました。
全て終わった後、別々に暮らしていても高杉が銀時に依頼をしたり、銀時も高杉に頼る時があったりして、普通の暮らしをしている二人がたくさん見たいですね。あとはJOY4で同窓会を何度もしていて欲しいです。