ここにいる夕方になりかけの時間に街を歩いていた。
依頼が予定より早く終わったから少し街をぶらついてから帰ろうと思ったんだ。
すると前から若い男女のカップルがやってくる。真夏でクソ暑ぃにも関わらずいちゃいちゃべたべたしやがって……見てるだけで暑苦しくなるっての。
「そんなに触りてーもんかね、彼女の体ってもんは」
寄り道した飲み屋のカウンター席で言ってみた。
「銀さん何言ってんの、浮気かい?」
「あ? 浮気も何もンな相手いねーし」
ぶーたれながらそう言うと、大将に笑われた。
「高杉さんとはそういう仲じゃないのかい?」
「おやっさんよー、目ェ悪くなったんじゃない? 眼科行った方がいいよ」
「最近銀さんが酔い潰れたらいつも迎えに来てくれるし、他のお客さんも銀さんは高杉さんと歩いてる時幸せそうだって言ってるよ」
「……」
高杉とは普通に歩いてるだけのつもりでも、自然と雰囲気が出ちまうのかね……そう考えながら黙っていると、追加で頼んだ酒と枝豆が置かれる。
「それで? 最初に戻るけど、街でいちゃいちゃしてるカップルでも見たの?」
「そーそー。こんな真夏の日中にいちゃいちゃべたべたしやがってよー。ただでさえ暑いのにそんなのが視界に入って暑苦しいわ」
「若いカップルだったんでしょ、それ。でも、大衆の前で見せるもんじゃないよね」
「だろ? 頭悪ぃの丸出しだっての」
そう言って酒をグイッと飲む。
「でも、好きな人だったら触ってここにいるってのを感じたい気持ちはまあ……わからんでもないけどね」
大将がそんな事を言った記憶を最後に、俺の意識はぼんやりしてきた。
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ゆらゆら心地よく揺れる感じがしてゆっくりと目を開ける。
「起きたか、銀時」
「んー、たかすぎ……」
「相変わらず飲み過ぎだ馬鹿」
そう言われてああ、また迎えに来てくれたのか、と思う。そういや最近ゴミ捨て場に転がった記憶はない。高杉が迎えに来てくれるからだ。そういや昔もいつも高杉が迎えに来てくれたんだったな。側にいない月日が長くて忘れていたけど。
「銀時、俺がいない時はどうやって帰っていた? まさか毎回新八や神楽に、とか言わねェよな?」
「んなわけねーだろ。1人で帰ってたよ。家だと思ったらゴミ捨て場だった事もあったけど……」
そう言うと高杉は俺にわかるくらい盛大にため息を吐いた。
「やっぱりお前にゃ俺がいなきゃ駄目だな」
前にどこかで聞いた事ある台詞を聞いちゃったけど、あれってそう言う意味だったの?
でもまあ……さっきの大将の言葉を思い出してぎゅっと高杉にしがみついた。
「どうした、銀時?」
「んー……ここにいるんだな、って」
それを聞いた高杉は歩みを止めて俺の方に顔を向けた。ぼんやりした視界に柔らかい表情をした高杉の顔が映る。
「あァ。俺はここにいるぜ、銀時」
心地よい声でそう言われて顔に熱が集中する。
「高杉、もう歩けるから……」
自ら高杉の背中から降りて歩く。すると手を掴まれた。
「わ、何だよ……」
「フラフラしてんぞ」
ったく、これじゃ日中いちゃいちゃべたべたしてたカップルの事、言えたもんじゃねーな……そう思いながら、掴まれた手を握り返した。
「ま、今はそんなに人が歩いてないからいいか」
「何か言ったか?」
「いや、何も」
後日、飲み屋で高杉と手を繋いで歩いていた事をネタにされるのはまた別の話。
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触れてお互いがここにいるんだってのを感じて欲しい高銀でした。
うーん、表現力がイマイチだったかなあ…