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    sweets_m0gum0gu

    @sweets_m0gum0gu

    銀魂のろくでなし2人が好き。
    ここに上げているものは高銀のみです。
    2021年のお空ファンタジーとのコラボをきっかけにハマりました。

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    sweets_m0gum0gu

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    高銀
    紅桜後の二人です。
    真ん中誕生日の味これっぽっちもないけれど、この日に高銀を上げられた事に意味がある、と言い聞かせて上げました。
    内容は結構気に入っています。

    #高銀
    highSilver

    三百円の料理「あー……いてェ」

    今日の依頼はちょっと危ない臭いがしたから新八と神楽を言いくるめて一人でこなしてきたんだけど、無傷では済まなかったと言うか脚に銃弾受けて絶賛流血中。
    とりあえず帰ってから処置しようと思いながら歩き、なんとか家に着いた。

    「銀ちゃん!」
    「銀さん!」

    心配そうにかけつける二人を見て気が緩んだのか、急に視界が霞む。

    「悪ィ、布団まで連れてって」
    「それより血の臭いがするネ! どうしたアルか?!」
    「脚怪我してるじゃないですか! とりあえず病院に……」

    病院に連れて行こうとする新八を止める。

    「どうしてですか?!」
    「あんま、大事にしたくねェ」
    「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!」
    「頼む、新八。経験上これくらいなら寝てれば治るから……」

    そうでもないけどとにかく横になりたいから嘘を吐いた。すると新八は黙って布団に連れて行ってくれる。小さくありがとよ、と言った後横になった。
    しかし横になっただけじゃ痛みが引くわけもなく、引きつった顔をしたまま目を閉じる。このまま気絶してェと思ったものの、止血しながら心配そうに見つめてくる二人を見てなかなか気絶できるわけもなかった。
    すると突然神楽が部屋を出て行く。不思議に思っていると間もなく戻ってきた。

    「銀ちゃん、誰か来たアルよ」
    「え……こんな時間に誰?」
    「私も新八もあの気配知ってるネ」
    「僕も?」
    「家に入れていいのかわからないアル」
    「とりあえず、僕も一緒に出るよ」

    そう言って二人は部屋を出て行った。
    来客と少し話した後、二人のものではない足音が大きくなり、部屋の襖を開けてきた。

    「よう、銀時。ちょっとオイタが過ぎたみてェだな」

    意外な声に一瞬目を見開く。

    「高杉! 何で知って……痛っ」
    「お前がさっき行ってた件、俺らも無関係じゃなかったって事よ。それより脚見せな」
    「あ?」
    「あの弾はヤベェヤツかもしれねェ。本当は医者に診てもらった方が良いんだが……応急処置はしといてやる」

    そう言う高杉を意外な顔をして見る新八と神楽。
    でもこいつの処置が上手い事を知っている俺は、意地を張るよりも身を委ねるのが最善だと判断した。

    「悪ィ、頼む……お前ら、今のこいつは大丈夫だから、信じてやって」

    警戒してる二人を見ながらそう言ってやる。すると物分かりの良い二人は頷いてくれた。

    +++

    脚にはまだ弾が残っていた。
    それを取る為だから仕方ないのは分かってたけど、体に残った弾の除去なんざそれこそ戦してた頃ぶりだから激痛を伴う。

    「うぐっ……」

    俺が痛そうな声を上げても黙って作業を続ける高杉。それだけ集中してるって事だけど……いてェもんはいてェ。
    そして高杉に言われた通り動かないように力強く俺を固定する新八と神楽。

    「あと少しだ」

    痛くて脂汗が止まらない。
    けど、心は落ち着いている。
    こいつが今何をしていても、心を許したあの頃の感覚は消えやしねェって事か。

    「取れたぞ」

    その声が聞こえて閉じていた目を開いた。高杉の側にいかにも天人製の変な形をした銃弾が転がっている。

    「……助かった」
    「手ェ洗ってくる。まだ動くなよ」
    「ああ」
    「お前達も、もう放していいぞ。ただし揺らしたりするなよ」

    去り際に新八達にそう言う高杉。二人は頷いた後、そっと手を放してくれた。

    「……アイツ、銀ちゃんにはいいヤツなんだな」

    ぽつりと神楽が呟く。

    「いいヤツかはわかんねェけど、意味もなく刃を向けてくるヤツではないから。昔は一応、それなりに、仲間だったし」
    「じゃあ、もしまた万事屋の玄関の前に立ってたら、お茶を出してあげてもいいって事ですよね」
    「いいけど、用件くらいは聞けよな」

    そんな事、あるかわかんねェけどな……
    そう思いながら遠い目をしていると襖が開き、高杉が戻ってきた。

    +++

    患部の止血をして包帯を巻いた後、高杉は立ち上がる。

    「これでもう大丈夫だろ。厄介事にあんま首突っ込むんじゃねェぞ、一般人が」
    「へーへー、テロリスト様には心配されないようにしとくわ。ところでこれ、何か取るの? うち金ないけど」

    こいつが俺に見返りなんざ求めないだろうけど、一応尋ねる。すると予想通り嫌味ったらしい笑みを向けてきた。

    「テメェが俺に金なんざくれたら、空から槍が降るだろうなァ」
    「確かにあの頃は一銭もやらなかったけど、今なら三百円くらいは払えるぜ」

    俺の本音のような冗談なんぞ笑い飛ばして終わりかと思いきや、少し考える素振りをする高杉。

    「だったら、三百円で作れるモン作って寄越せ」
    「あァ? 握り飯でも送れって事? 作ったとしてもお前がいつどこにいるかなんてわかんねェよ」
    「……この辺りには一ヶ月後、また用がある」

    そう言うだけ言って高杉は玄関の方へ向かう。追えない俺だったが、言われた事だけで十分だった。

    +++

    そして一ヶ月後。
    新八と神楽には事情を話し、万事屋には俺一人にさせてもらった。

    「ったく、ご丁寧に文なんか寄越しやがって……そんなに楽しみかよ」

    数日前に届いた文を片手でひらひらさせながら来訪者を待つ。
    すると建て付けの悪い玄関がガラガラと音を立てるのが聞こえた。文を社長机に置いて玄関へ向かう。

    「三百円の飯の為にわざわざ来るなんて、可愛らしいテロリストだこと」

    そんな俺の言葉を無視し、さっさと奥へ入っていく高杉。

    「何もねェじゃねェか。約束はどうした?」
    「台所にあんの。ちょっと待ってろ」

    ったく、せっかちなヤツだな。
    そう思いながら台所や冷蔵庫に用意してあった料理を持って行く。

    白飯・味噌汁・焼き魚と焼き肉・レタスときゅうりとトマトのサラダ・茄子の漬物

    ずらりと並べた料理に長椅子の前のテーブルはいっぱいになった。

    「銀時」
    「あー、茶忘れたな」
    「銀時」
    「それとも今は水にしとく?」
    「おい、聞け」

    鋭い目が俺を見る。息を一つ吐いてからその目に応えた。

    「俺は三百円で作れるモンを用意しろと言ったが?」
    「ああ、三百円だぜ」
    「こんないい魚と肉が三百円で買えるかよ」

    そりゃ、こんな料理出されたらそう思うよね。予想通りの質問に口元がニヤつく。

    「魚は俺が釣ってきた」
    「あァ?」
    「肉は肉屋の依頼をこなしたらオマケでくれた。野菜も八百屋の前通ったらくれたヤツ。だからこれ全部で三百円もしない」

    普段ならこんな事しないけど、高杉が来てくれるって事で気持ちが舞い上がっちゃったのかね。

    ……絶対言わないけど。

    そんな俺の言った事に納得したのか、高杉は黙って箸を取り、味噌汁をすする。

    「……うめェ」

    ぼそりとそう言われ、心がほっとした。

    +++

    出した物を全て平らげ、茶を飲む高杉。

    「これでこないだの借りは返せたよな」

    俺は向かいの長椅子に座ってそう言う。
    すると高杉はチラリと俺を見た後、流れるような動作で煙管に火を着ける。

    「まだ足りねェ」
    「はァ?」
    「……って言ったら、また作ってくれんのか、アレ」

    ん?
    これはつまり、さっきのがまた食べたいって事?
    都合良く解釈すると、だけど。

    「そっちにも美味い飯作ってくれるヤツいるんじゃないの?」

    でもここは慎重に対応する。

    「まァな。が、あの頃食った飯には敵わねェよ」

    そう言ってフゥ、と煙を吐き出す高杉。
    そのまま少し沈黙。
    どうやら俺の返事を待っているようだ。

    「……依頼くれれば、やるよ。ただし三百円はなしだ」

    自分で言った事とは言えやっぱり三百円でちゃんとした料理作るのは厳しい。
    そう思ったからそこはちゃんと伝えておく。

    「材料費を依頼料に入れれば良いって事か」
    「まあ、そうなるね」
    「わかった」

    そう言うと高杉は煙管を片付け、側に置いていた編笠を被って玄関に向かう。

    「また文を送る」

    そのまま振り返る事もなく、高杉は万事屋を去って行った。
    玄関が閉まった瞬間脱力する。

    「はあ……もう、どうすんだよ、あいつ絶対また文送ってくるじゃん」

    高杉があの頃のように俺の飯を食ってくれて嬉しい気持ちもあるが、十年の間に生まれた溝のせいで変に緊張する。
    それでもまあ、文が送られたらちゃんとあいつが喜ぶような飯作っちまうんだろうな。
    なんて思いながら立ち上がり、食器の片付けをすべく台所へ向かった。


    *****

    タイトル的に三百円料理がメインの話みたいですが、実は仮タイトルは高杉が応急処置して帰る話で、それだけで終わる内容でした。でもそれだけじゃ銀時が寂しいだろうと思い、三百円料理を付け足しました。
    銀時の料理をうめェと言って食べる高杉は何回でも見たいという、私の思いの表れですね。
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