タイトル未定1観音堂において、義兄弟を手に掛けた。その瞬間、世界はひび割れた。
なぜ
どうして
いつ
どうすれば
どこで
私は
私が
私を
私の
……
…
世界が途端に鮮やかさを失い、音は小さくなった。
膜が張った外側から、辛うじて家族の声が言葉を成していた。対応をしなくては……そう思うのに、自分が何かをすることで起こる弊害が恐ろしく、身動きが取れず、考えることが出来ず、言葉を音にすることも出来なくなった。
弟が仙督となり、宗主としての仕事は叔父上が行ってくれていることは理解していた。迷惑を掛けていることを、心苦しいとは思うことが出来た。しかし、宗主として戻るべきと、寒室から出ようとしたら、扉に掛けた手が赤く染まって見えた。ぎくりと固まり、背けるように目を閉じ、恐る恐る開ければ扉が見えていたはずが、自分以外何も無い闇の中に居た。手が震え、喉がひりついた。
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